もしも
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「人類は常に恍惚で、貪欲で、愚かである」
「今度は誰のですか」
「さぁ、分からないなら調べてみるといい」
「意地悪ですね」


2人で使うには少々大きすぎる部屋の真ん中、ソファーの上に私と槙島聖護は座っていた。


聖護さんに膝枕をし、いちゃいちゃ、は私たちにはあまり当てはまらないけど、まったりしていた。


そんな中聖護さんが急に言い出した言葉が、冒頭のあれだ。


「君は本を読まなさすぎるんだよ」
「私の興味は本より絵などの目を潤すものにありますから」
「そうだったね。でも、たまには気分転換も必要だろう?」
「そうでしょうか。私は生憎、気分転換をし無くても色相は濁らないので、貴方と同じで」


そう言って聖護さんのさらさらした髪を撫でる。聖護さんの髪は白くて綺麗だ。いつまでも触っていたいと思う。


「君に撫でられると気持ちが良い」
「ふふっ、それは良かった。そんな事より、さっきのあれはどうゆう意味です?」
「人は、自分の幸せを乞うている。今、自分がどれだけ幸せか考える事を放棄し、更に上を欲する」
「当たり前でしょう。常に高みへ、それが人間です」
「だが愚かだとは思わないか?今の幸せに気づけず、周りにどれだけ愛されているのかすら気づけないのは」
「それでいいでしょう、気づき、それに満足し、足を止める。そうしたらもしかしたら行けるかもしれなかった高みへの可能性がなくなってしまう。それならば、足掻き、もがき、不幸になろうが、結果的には幸せなのではないでしょうか。それに、その方が生きている価値がある」
「生きている価値、とは一体誰が決めるんだい」
「自分、でしょうか。とは言っても考えて決めるのでは無い。直感で今、自分は生きていると思えたなら十分でしょう。今シビュラで決められたルートをただ歩いてるだけの人達は生きている、というより、頭では生きていると考えても本能では生かされていると思うのでしょう」
「面白い考え方だね」


聖護さんはそう言って体を起こした。少し、物足りなさを覚える。隣に座って、今度は私の髪を撫でてきた。


気持ちがいい。


「撫でられるのも悪くないですね」
「それは光栄だな」


そんな機から見ればつまらないであろう会話も、聖護さんとならつまらないなんて思うことは無い。


「(聖護さん、私は、いつまで貴方のそばに居られるかとても不安です)」


そう言えたら私はどれだけ救われるだろう。今こうして何気無く行っている会話も、貴方が居なくなれば出来なくなる。あるいは、貴方の興味が私に無くなったら。私は地下であのへんてこりんなサイボーグさんの狩の対象になるのだろう。


「君が今な気を考えているのかは分からないけど、そんな顔をするならあまり良く無いことかな」
「すみません。変な顔でしたか?」
「変な顔ではないよ。とても不安そうで、そそられる」
「…そそられますか。不安そうな顔が」
「君は表情がよく変わる」


聖護さんはくすくす笑っているが私にはよくわからない。昔から表情が無いと言われてきた。だからどう反応したらいいのか…。


「君を手放すようなバカな事はしないよ」
「なっ」


ふわり、と聖護さんの香りがしたと思ったら、唇を奪われていた。


ゆっくりと、ついばむようなキス。


どうやら聖護さんは私の考えなどお見通しのようだ。さっきの言葉は私の顔を変えるためのものだったみたい。


「…ん、は、聖護さんには、敵いませんね」
「そうかな。僕はいつも君に振り回されているよ」
「ふふっ、そうでしょうか」


ゆっくりと押されて、ソファーに組み敷かれる。聖護さんの欲情した目が、私を見下ろす。


「君は、とても魅力的だ」


ゆっくりと目を閉じれば、降って来る無数のキス。それだけで全身が粟立つ。


どうやら私は、今はまだ聖護さんに捨てられる危険は無いようだ。















(それがいつまでも続くなんて保証は)
(どこにも無い)






…槙島さん大好きです。


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