6.初夜 「何をされた」 「っ、ほ、本当に何もっ!」 「嘘をつくな」 眼光を強めて名前を見つめる。それにうっ、と身を縮ませる名前。何をされた、と問われ真っ先に思い出したのは紅覇にあの目で見られたことだった。 でも、それを紅炎に言ったところで何になる。その目でみるなと注意してもらうか?私を拒絶するなと言ってもらうか?そんな無様な真似はしたく無い。ここに来たのは自国を出るため。だからそれ以上は望まない。 「こ、紅炎様には……関係ありません…!」 誤魔化すため咄嗟出た言葉。紅炎は予想外の名前の言葉に目を見開く。今までの女は皆泣きついて来たのだろう。 「関係ない…?」 「うっ、はい…これはっ私の問題です…!だから」 そこまで言って名前はあることを思い出した。宴の前に1人で悶々と考えていたことだ。 そうだ、今こうして紅炎様が私を気にかけているのも、ただ自分の正妃を放っておいて癇癪を起こし、自国に面倒なことを訴えないかと思ってのことだろう。なら私がそんな事をしないと言えば… 名前は居た堪れなくて掴まれながらも限界まで伏せていた顔を上げ、意志の強い瞳で紅炎を見た。今からいう事が本当だとわかってもらえる様に。 「あの、紅炎様っ!私は何をされても自国に訴えたりなどは、しません!…だから、そのっ、無理に構っていただかなくても……大丈夫です」 「それは、どういう事だ?」 突然名前が言い出した事に紅炎は意味がわからないと眉を顰める。 「だからっその……無理に構っていただかなくても良いと、いう事です…」 何故か威圧感の増した紅炎に、うっと引き気味になる名前。何が気に入らないんだと不思議に思う。 「そうか…」 「は、はいっ…あのだから、そのもうご自身の部屋にお戻りください…紅炎様も疲れたでしょうから…」 そう言って未だ膝にまたがっている事に気づいた名前は降りようとする。しかしその瞬間、紅炎は又もや腰をつかんで更に引き寄せた。 「っあ…紅炎様…!?」 「何を言っている」 「…え?」 恥ずかしさに腕を突っ張り離れようとする名前を抑えつけ、紅炎は無表情でそう問うた。 「ここは俺の部屋だ」 「……え?」 そう告げられた瞬間、バッと当たりを見回す。さっきは慌てていたり泣いていたりで周りをよく見ていなかったが、よく見れば新しく用意された部屋にしてはものが多すぎる。今いる書斎にだって、書きかけの書物や読みかけの本が机の上におかれて居た。 さぁっと顔を青くした名前を見て紅炎は妖しく口角を釣り上げる。 「名前、妻と夫が別の部屋というのはおかしくは無いか?」 「ぁ…ぅ…そ、それはっ」 「言いたく無い事は無理に言えとは言わないが、今日は何の日だ?」 腰をだく力がだんだん強くなり、密着度が増す。名前は混乱して居た。確かに考えると夫婦の部屋が別々というのはおかしな話だ。側近ならそれが普通だが名前は正妃。側近と違う扱いなのは当然の事だった。 __今日は何の日だ?紅炎に問われた事を頭の中で反芻する。そんなの分からない。婚儀が行われた日だから結婚記念日?それを特別扱いするのは1年たってからだろう。じゃあ宴があったから宴の日?なんだそれふざけてるの。 もしかして煌帝国では今日は何かの記念日なのだろうか…?煌帝国の事は一通り勉強をしたが、そんな事は知らない。 「あのっ、勉強不足で申し訳ありません…!煌帝国の事は…その、来たばかりで良くわからな__」 「分からないのか?……なら教えてやる」 そう言って紅炎は名前を肩に担ぎ上げ、座って居た椅子から腰を上げる。名前は突然担ぎ上げられ頭に疑問符を浮かべて硬直して居た。 「あ、あの…」 「今日は婚儀が行われた…ならその夜は、初夜…だろう?」 紅炎が告げた言葉の意味を理解し、目を限界まで見開き名前は全身の血の気が失せた。今更暴れ出す名前を押さえつけ、紅炎は容赦無く奥の部屋、寝室に歩を進めた。 「こ…うえんっ様…!抜いて下さっ……ぃん!」 あの後、簡単に捩じ伏せられた名前は呆気なく紅炎を飲み込んで居た。暴れても初めてなのだと訴えても行為は止まらなかった。 身体中を見られた羞恥と、未知の快感、破瓜による体の奥からくる激しい痛みに、無理やりされたという事実に名前の瞳は涙でぐちゃぐちゃだった。 「こんなに濡らしておいていう言葉か…?」 「いっ……ぅああ!いたっいです!」 更に律動を大きくする紅炎、それに比例して大きくなる痛みと、今まで聞いた事も無い淫らな水音に悲鳴を上げる。 「名前、お前は俺の世継ぎを産まねばならない…こんな事で根をあげて居てはこの先もたないぞ」 紅炎はそう言って名前の腰を抑える手に更に力を込めて見つけ出したイイ所を攻め出した。 痛みに軋む身体に少しだけ芽生える快感。 「ぃあっ!紅炎様っ!やめ…ぅんん!」 それでも痛みの方が大きくて、名前は悲鳴か喘ぎか分からない声をあげる。一層激しく貫かれる身体が限界を知らせる。 「やめて…っう…ください!」 涙まじりに悲痛な声を上げるが紅炎は御構い無しに攻め立てる。これ以上は耐えられない。 「もう限界か…?」 そう問う紅炎にこくこくと頷く。もうこれ以上は壊れてしまいそうだ。そんな名前を見下ろし、紅炎は更に律動を激しくする。 「ひっ、…ぅんんん!…ぁあっ!」 ギシギシときしむ寝台の様に名前の体も軋む感覚に襲われる。__何でこんな事になってるんだ。 「っう……わ、私はっ…んっ、ただ……抜け出したかった…っはあ…だけなのにっ!」 無意識にそう叫んだ名前は、まるで事切れたように気を失った。 back |