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選んだ未来 [ 40/45 ]



雪がしんしんと降り続く聖夜。
ホグワーツの校長室で不死鳥のフォークスの羽を撫でつけていたアルバス・ダンブルドアの手がピタリと止まった。


「せっかくのホワイトクリスマスであるのに…嫌な予感がするのう」


ダンブルドアの呟きに返事をするかのようにフォークスが小さく鳴く。

こういう時の自分の予感は、預言者さながらに的中することが多い。
ダンブルドアは徐に窓辺へ寄り、雪の結晶が部屋の中へ入ってくることも気にせずに窓を開け放った。

ヒュオ、と冷たく肌を刺すような冷気が身体を包み思わず身を震わせる。
真っ暗な夜空を見上げると黒い雲が細い三日月を覆い、星をも隠していく。


「不吉じゃ、実に不吉…」


ふと頭に浮かんだのは、自分が孫娘のように可愛がっているあの赤い瞳の彼女。
自分をも凌ぐほどの強大でかつ特殊な魔力を持ち合わせた彼女は今、友人(恋人)とこの聖夜を有意義に過ごしているに違いない。

―――バシン…!

そろそろベッドに入ろうか、と長い髭を梳いた時だった。


「……ッ!」


このホグワーツ内で鳴るはずのない破裂音が静寂に響き渡り、禁じられた森のあたりが一瞬だけ光るのが見えた。

姿現しのできないホグワーツへ、何者かが侵入した。
ダンブルドアは一瞬で寝間着から着替え、外していた眼鏡を掛け直して光の元へと急いだ。





***




時同じくして禁じられた森。


「……う、っ」


セブルス・スネイプは未だにぐるぐると回り脳内を覚醒させるように頭を数回振って、ゆっくりと目を開けた。

見えたのは、空から降り注ぐ白の結晶と、地面に降り積もる白に滲んでいく…赤。


「ッスズネ!…おい!!」


自分の隣に力なく横たわるスズネを見て、セブルスは声を荒げた。

顔はところどころ傷があり、すでにかさぶたになっていて、左腕は赤黒く焼け爛れている。
そして一番の出血の原因は彼女の左足だった。
左足の膝下から足首にかけて、深く切り刻まれていて傷口はなぜか黒く変色していた。


「…っ、エピスキー!」


治癒呪文を唱えても、患部はほんの少しだけ綺麗になるだけ。左足に至っては呪文を唱える前と何ら変わりない。

何故だ。何故、ただパーティーに連れて行かれただけの彼女がこんな大きな怪我を…!
スズネが廊下の奥から走ってきたとき、隣にいたルシウスは迷いなく彼女に向けて呪文を放っていた。分からない、何故彼女がこんな目に遭っている。

セブルスは考えるが、スズネの苦しそうな呻き声が聞えるとハッと目を開いた。

この寒さの中、肩や背中が見えたドレスを着ているだけの彼女はガチガチと歯を鳴らして身体を大きく震わせている。
唇はみるみる薄い紫色に変化し、肌は”生”を感じさせないほど青白い。


「スズネ、ッ!」


自分が着ていたジャケットをスズネにかけて、セブルスは彼女を抱き上げる。
そしてそこで初めて、視界に映るホグワーツ城が目に入り、ここが禁じられた森だということに気付いた。

あの状況で、スズネは無意識のうちにこの場所へと自分を連れて姿現しを…?


「…ルーモス」


杖の先を光で灯し、雪に足をとられながらも出来る限りを尽くして足を速く動かす。
…今は悠長に思考している場合ではない。
こんな深い傷、もしかしたらスズネの命に関わるかもしれないのだ。

セブルスはグッと唇を噛み締めた。

もうすぐで森を抜けるというところで、誰かが走るような足音が聞えてきた。
セブルスは足を止めてその足音のする方を見ると、そこにはこのホグワーツの校長が驚きの表情を浮かべて立っている。


「、ダンブルドア校長先生!助けてください、スズネが…ッ!」
「セブルス…、何があったのじゃ…!」


傷だらけで血だらけのスズネ。
そんな彼女を抱きかかえ、顔を歪めて自分へ懇願するセブルス。

ダンブルドアは2人を見てすぐに駆け寄った。


「スズネ…何ということじゃ!」
「傷が、血が止まらな…っ」
「…落ち着くのじゃセブルス。スズネを死なせはせんよ。しかし一刻も早く治療をする必要があるのは確かじゃ」


ダンブルドアはセブルスからスズネを受け取ると、城への道を歩き出した。


「セブルス、城についたらマクゴナガル先生を呼んできてくれるかの?」
「マクゴナガル先生?マダム・ポンフリーではなくてですか…!?」
「ポピーはすでに医務室におる。…それと、このことは他言無用。これは公にしてはならん事態じゃ」


真剣なダンブルドアの声音に、セブルスはグッと押し黙る。

詳しい話は落ち着いてから聞こう、というダンブルドアの呟きともとれる言葉にセブルスは返事をせず…ただただ拳を握りしめていた。




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