親世代A | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
自覚する気持ち [ 2/45 ]



9月1日。1年前、わたしがホグワーツへ編入した日。
そして新入生が入学してくる日。


「リアン・エルフォード」
「…スリザリン!」


順調に組み分けがされていき、スリザリンに組み分けされた子が出る度にテーブルでは大きな拍手が鳴り響く。


「ここ空いてるよ。どうぞ」
「あっありがとうございます…!」


一番最後に組み分けされた子はスリザリンで、自分の隣へ座るよう促すと緊張してるのか顔を真っ赤にしてコクコクと勢いよく首を縦に振った。

わー、初々しくて可愛い反応!
微笑ましいその様子にニコニコと顔を緩ませていると、右隣にいるセブルスにツンと肘で突かれる。


「目立つからよせ」
「ん?なにが目立つの?」
「…はあー」
「ちょ、何の溜め息それー」


よく分からないセブルスだなあ。
わたしは首を傾げながら、目の前に現れた夕食に手を伸ばし始めた。


「あのっ、」
「ん?」
「先輩の、お名前を教えてくれませんか!」
「あ、うん!わたしはスズネ・ユキシロ」
「スズネ先輩…」
「そこの1年。初対面でスズネ先輩を名前で呼ぶなんて馴れ馴れしいにも程が、もがっ!」


突然近くにやってきたレギュラスの口をセブルスが手で塞いで、控えめな口論を始めていた。

なんかあの光景にも慣れてきたなあ。
それがなんだか可笑しくてクスクス笑いを零しながらプチトマトを頬張った。




***(セブルス視点)


「なにするんですか!見ましたか1年生たちの顔!みんなしてスズネ先輩ばっかり見て…僕は気が気じゃないですよ」
「確かにあいつがいきなり名前で呼んだことは僕も気に食わないが、スズネのことばかりなのはおまえも同じだろう」
「ふん、それはご自分もでしょうに」
「べ、別に僕は…」
「セブルス先輩。あんまりもたもたしてると、スズネ先輩とられちゃいますよ?例えば…そう、僕とか」
「…なに、!」


そもそも誰かにとられるとか、なんで、僕がそんなこと気にしなきゃならない。
別にスズネが誰のものになろうと僕には…。

じゃあ、それなら何故スズネが名前で呼ばれていただけで気に食わないなんて思ったんだ?
…分からない。ただただ胸がざわついて、モヤッとして。


「………ッ」


誰かのものになったスズネは。
僕以外の誰かに優しく微笑みかけて、いつか僕に言ったように『大好き』だと言うのだろうか。

それを想像しただけで、先程よりもっと胸のざわつきが酷くなり、怒りに似た感情さえもわき上がった。
これは、まさか…僕は。スズネのことを…?


「はあ。ま、詳しい話はまた今度しましょう。スズネ先輩を好きな者同士、ね」


レギュラスが呆れたように溜め息を吐きながら自分の席へと戻っていくのを、半ば呆然と見つめる。

好きな者同士。
やはり、僕はスズネのことが好き…なのだろうか。


「しぇぶりゅす(セブルス)?」


メロンに齧り付きながら僕を呼ぶスズネの声が聴こえ、僕の顔を覗き込んできた彼女の顔がドアップに視界に映った。


「っ、な…!」


その瞬間、ドキンと大きく高鳴った鼓動。
それはドクドクと速さを増し、苦しいくらいに僕の身体に熱を持たせる。


「これからまた楽しい1年が始まるんだねえ」
「…楽しいって決まったわけじゃないだろう」


落ち着かせようと胸に手を添えながら、スズネの言葉に反応すれば彼女はキョトンと目を開いて。

それから、花が開くように笑顔が咲いた。


「セブルスが一緒だから楽しいのは確定だよ」


ああ、もう。
落ち着かせようとしていた感情が、また騒ぎ出してしまった。

スズネの言葉ひとつひとつが嬉しく感じ、微笑みかけられれば胸が高鳴り、それを自分だけに向けてほしいと願ってしまう。

こんなの、認めざるを得ない。…僕は。



(スズネが好きだ)


[*prev] [next#]
top