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恋人と少女の消失 [ 20/45 ]



***(セブルス視点)


スズネと恋人関係になった次の日。

そうなる前から大体は共に行動していることが多かった為、何か特別変わったことがあるかと言えばあまり無い。
変わったことを上げるのであれば、スズネと共にいる時間は柄にもなく浮き足立ってしまうことくらいか。

スズネが僕の恋人になったこと、僕はスズネの恋人になれたことを改めて思うと気恥ずかしいような嬉しいような言い表すのが難しい気持ちになる。
仕方ないだろう。このように誰かに想いを寄せるのも、恋人ができるのも生まれて初めてのことなのだから。

朝食中の今、目の前でデザートであるイチゴを笑顔で頬張るスズネが可愛いとか思ったり思わなかったりしながらそんなことを考えていた。


「はい、セブルス。あーん」
「…ぶっ!ごほっ、けほっ」


ボーッとスズネを見ながらカボチャジュースを飲んでいると、目の前にいるスズネからの言葉に衝撃を受けて思わずむせた。

口から吐き出さずには済んだがドロドロの液体が変なところに入ってしまい、しばらく咳き込みが止まらなかった。


「セブルス、大丈夫?」
「だっ、大丈夫も何もあるか!なんだいきなり…っ」
「いやだって恋人同士はこういうことするんだってリリーが…」
「(リリー…ッ!)」


グリフィンドール席にいる赤髪の彼女がニヤリと笑ったのが見える。

何を教えてるんだリリーは!
仮にその行為(あーん)をするにしてももっと時と場合と場所を考えるのが重要だろう。

エイブリーもマルシベールもリリーと同じような顔をしているし、レギュラスや周りの者達はみんな顔を顰めている。


「最近ユキシロ先輩めちゃくちゃ美人になったよねー」
「いや最初から美人だったでしょ」
「ほら今より髪短かったから男に見えてたけど、最近は髪も伸びてきたしさ!」
「確かに。ジャパニーズであそこまで綺麗な人あんまいないよね」
「てかよりにもよって恋人があの、スネイプ?先輩だっけ」
「釣り合わないよねー。ユキシロ先輩も趣味悪いなあ」


小声でも聞こえてしまったその会話に、ピタリと食事の手が止まる。

…分かっている、自分でも。
容姿端麗で性格も良く誰にでも好かれる人気者のスズネに、自分が相応しくないことくらい。

スズネには、もっと彼女に見合う男が他にいくらでもいるのかもしれない。
それならそれでもいい。
いつかスズネが僕から離れていく日までは、今の幸せな時間に浸れていたいと思った。





***(ヒロイン視点)



「みんなさ、なんでセブルスの良さが分からないんだろうね」
「バウ…!」


ポピーのお手伝いで、禁じられた森近くに生えている薬草を採りにハグリッドと一緒に来ている。
そのはずなのに、さっきまで一緒にいたハグリッドはいつの間にかいなくなっててその代わりに彼の飼い犬が1匹、隣に寝そべっていた。

毒触手草に触らないように気を付けながらカゴに薬草を摘んでいきながら、わたしはムッと頬を膨らませる。思い出したのはつい今朝の事。

セブルスと恋人同士になったことをまず最初に報告したのはリリー、その次にレギュラスだ。
セブルスはどうか知らないけど、わたしはこの2人にしか話してないのに次の日になってみれば何故かたくさんの人が知っていた。

それで今日は朝食の前にギュウギュウに押しかけられて(特に女の子)、なんでセブルスなんだとかもっとカッコイイ人紹介しますよとかそんなんばっかり言ってくる。


「セブルスはそういうの表に出すのが苦手なだけで、本当はすごく優しいし頭いいしカッコイイし。良いとこだらけなのにな…」


欠点がないかと言われたらそうではないけど、でもわたしは他の誰でもなくセブルスだから好きになったんだ。
なのに皆してセブルスのこと悪く言うもんだから、そんなの聞いたらわたしも気分が悪くなるに決まってる。

はあ、と大きく溜め息をついてしゃがみ込むと頭の中にセブルスの顔が浮かんだ。



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