同じ『好き』 [ 19/45 ]
困った。とても困った。
「………」
「………」
勢いでセブルスを引っ張ってきたまではいいけど、こうして2人きりになるとどうしていいか分からなくなる。
さっきまで落ち込んだりイライラしたりしてたのに、今はただただ胸がドキドキしてセブルスの顔すら見れない。
ああ…どうしよう。何から伝えよう。どんな言葉で伝えたらいいんだろう。
好き、だけだとまた僕のとは違うとか言われそうだし…。
「スズネ、」
「ふえぃ…!?」
「…なんだその奇声は」
ふっ、と吹き出すような声が聴こえて顔を上げると口に手を添えたセブルスが小さく笑っているのが目に入った。
それはあまり見ることのない、セブルスの表情で。不思議と、騒がしかった心が少しだけ落ち着いてくる。
うん、大丈夫そう。きちんと伝えられる気がする。
「セブルス、あのね」
「………」
「この間の告白の返事、なんだけど…」
「……ああ」
チラリと見上げたセブルスの表情が少しだけ硬くなる。
シーンと静まり返ったこの空気に、落ち着いたはずのドキドキがまた急に忙しくなってきた。
眼の奥がチカチカする。
それから、感情の波に魔力が同調して周囲に風を吹かせた。
「スズネ、大丈夫だ」
「…っセブルス」
「どんな返事でも僕は受け止めるし、どんな返事でも僕はスズネを嫌いになったりはしない」
魔力が乱れているのが分かったのか、セブルスはわたしを安心させるようにとギュッと手を握ってくれる。
ただそれだけの行為に、胸がキュンと締め付けられた。
「セブルス。…わたしはセブルスのことが大好きだよ」
「っそれは、」
「ううん。セブルスと違う好きじゃなくて、同じ…好き」
セブルスの目がだんだんと見開いていき、わたしの手と繋がれたセブルスの手が小さく震えているのが分かる。
「わたしは、セブルスのこと特別に好き。…わたしもセブルスと恋人になりたい」
「………夢、か?」
「ぷっ。夢なわけないよ!何ならほっぺ抓ってあげようか?」
こんなに衝撃を受けてるセブルスの表情も滅多に見ない。
『抓ってくれ』と真顔で答えてきたセブルスに、抓るのではなくデコピンしてあげると眉間にシワを寄せて痛いと呟いていた。
今日のセブルスは珍しく表情がコロコロ変わって面白い。
わたしがクスクスと笑っていれば、セブルスの頬が本当にちょっぴり赤くなる。
「じゃあ…僕とスズネは恋人になった、ってことでいいのか?」
「うん。こんなわたしでよければずっと一緒にいてください」
「ば…ッ!そ、れは…プロ、」
「プロ?」
「…いや、気にするな」
恋人になったら何か変えなきゃいけないのかな、とか色んな考えを巡らせていたらセブルスが右手を差し出してくる。
セブルスと手を繋ぐなんて初めてじゃないのに、その手を取る瞬間まで胸の高鳴りが止まらなかった。
「…顔、赤いな」
「ん、セブルスもだよ?」
セブルスと繋がれた手が、お互いの熱ですごく暖かい。
それと同時に胸いっぱいに心が満たされて、今までにないくらいとても幸せな気持ちになった。
やっぱりわたし、セブルスのこと大好きだなあ。
「セブルス」
「なんだ?」
「ありがとう。好きになってくれて」
誰かに想ってもらえることがこんなに嬉しいなんて初めて知った。誰かを想うことの大切さも。
セブルスは何も返事はしなかったけど、その代わりに握る手にギュッと力が込められた気がした。
そしてわたしも、今の幸せを噛み締めるようにセブルスの手を握り返したのだった。
(初恋の実り)
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