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2年目の始まり [ 1/45 ]



「スズネ!ほらもう機嫌直しなさい?あなたの好きなチョコレートよ。食べる?」
「…いらない」
「ちょっとセブ!元はと言えばセブのせいなんだから、なんとかしなさいよ!」
「っ、スズネ…あの、」
「…知らない」
「うぐ…っ」


ホグワーツ特急のコンパートメントの一室に、わたしとリリーとセブルスはいた。

リリーが必死でわたしを元気づけようとしてくれてるけど、そのままお菓子で釣られたら今わたしが我慢してる意味がない。

何か言おうとしているセブルスがフイッと視線を外して、わたしは窓の外を見た。


「はあ、もう。セブのせいよ?そもそも女の子に『太ったか?』なんて聞いたら誰だって嫌な気持ちになるわよ」
「べ、別に悪気はなかったんだ。ただ、初めて会った頃より、その…」
「〜ッそれは!リリーのお母さんのご飯が美味し過ぎたり、セブルスがお菓子ばっかりくれたりしたからでしょ!?」


リリーとセブルスの会話に割り込んで声を荒げれば、2人からはなんとも生暖かい瞳を向けられる。

…む。分かってるよ。
もらったからってそれを無遠慮にバクバク食べてたわたしもわたしだよ。そりゃ太りもするよ。
でもなんか、セブルスに太ったって思われてるのもそう見えてるのも嫌だったから。


「スズネ、大丈夫よ。太ったというよりかは、身体に丸みが出てきて…そうね。女性らしくなってきたってセブは言いたかったのよ」
「女性、らしく…?」
「リリーっ!」
「ええ。髪も伸びてきたし、胸も…」
「わあっ」


隣に座っていたリリーはニヤリと笑うと、なんとわたしの胸をギュムッと鷲掴みにしてきた。
夏休み中、リリーの家に泊まった時に何回かこういうことされたけどセブルスの前でこれはさすがに…!

急に熱が上がる顔を隠しながらセブルスをチラリと見れば、わたしと同じように顔を覆っていた。
…わ、耳まで真っ赤だセブルス。


「…リリー、仮にも男の僕の前でそういうことしないでくれ!」
「あら。羨ましい?セブ」
「っ、!?」


今度はリリーに頬ずりをされて、何が何だか分からないうちにセブルスはコンパートメントから出て行ってしまった。


「ふふ。面白いわね」
「…リリー、セブルスのことあんまりいじめちゃダメだよ」
「あの反応で気付かないあなたも、相当鈍感ね…」





それからわたし達が制服に着替え終わってしばらくして、セブルスとなぜかレギュラスも一緒にコンパートメントに戻ってきた。


「スズネ先輩!会いたかったです!」
「レギュラス!夏休み中、会いに行けなくてごめんね。アルバスが許してくれなくて…」
「それは残念でしたが、大丈夫です。エバンズ先輩のおかげで」
「リリーのおかげ?」
「ああ、先輩は気にしないでください。…はあ、写真もいいですけどやっぱり実物が断然イイ」


レギュラスがわたしを抱き締めてスリスリしてくるのが少し可愛く思えて、控えめに頭を撫でていたらベリッと身体を引きはがされる。

そうしたのはセブルスで、わたしと目が合うと気まずそうにしながらも視線をそらすことはしなかった。


「スズネ、太ったかと聞いたことは悪かった。リリーの言っていた通り、別に太ったとは思っていないし太ってるとも思っていない」
「でも、わたしのことプニプニって…」
「そ、れは…良い意味でだ」


また段々と顔が赤くなっていくセブルスに、わたしも些細なことで機嫌悪くなってしまって悪かったなあと少し反省。

今太ってなくても見境なしに食べまくってたら本当にデブになっちゃうだろうし、この機会だからお菓子を食べるのは控えてみようとは思うきっかけにはなったけどね…。


「なんですかプニプニって。え、まさかセブルス先輩…スズネ先輩のこと脱がしたんですか?」
「な、なんでそうなる…っ!!」


2人のやりとりを見ながら、リリーと呆れたように笑い合う。

その時、一際大きな汽笛が鳴り、もうすぐで列車はホグワーツへと到着するようだった。
これからまた新しい1年が始まる。



(始まりの汽笛)


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