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大切な人の為に [ 44/45 ]



***(リリー視点)


クリスマス休暇中、スズネがいるはずのセブルスの家に行っても留守が続いて…結局休暇が明けるまで2人に会うことはできず。
その理由も聞きたかったしスズネと久しぶりに話したかったのもあって声をかけても、気まずそうな顔をして用事があると言ってすぐに離れて行ってしまった。

セブルスとは今まで通り仲良くしていたから、きっと避けられてるからには私が自分も知らない間に何かしたのかもしれないと思ったのに。
面と向かって言いづらいかと思って手紙を送っても、何もないから心配しないでなんて…。

それで納得できるわけないと、図書室で珍しく本を読み耽るスズネを見つけて思わず感情を爆発させてしまった。


「…リリー、泣かないで」


久しぶりに聞いたスズネの声がひどく優しくて弱々しくて、涙は流れてくる一方。

スズネに嫌われたくない。寮が違っても、私にとっては一番の友達なのよ…。
どうして足に包帯を巻いているの?そんな怪我をするようなことがあったの?何があったの?

聞きたいことは山程あった。


「…っ何があったのよ。どうして私を避けるの?」


私が問いかけると、私の背中を撫でていたスズネの手がピタリと止まる。
その反応で、何かがあった、ということは間違いないのだと分かった。


「わたしってさ、魔力が特殊でおまけに強いでしょ?それでちょっと…あー、それを利用しようとする悪い奴らに捕まっちゃったりとか色々あってさ。…内緒だよ?」


人差し指を口元に添えて困ったように笑うスズネ。
何よそれ…じゃあその怪我はそいつらに?

誰にも言っちゃダメだよ、とスズネは続けて、それからキュッと眉間に眉を寄せて私の手を握る。
真剣な深く赤い双眸に貫かれて、一瞬、息をするのを忘れていた。


「それと…リリー、わたしには関わらないで」
「……え、」


曖昧に微笑んだスズネがわたしから手を離して、クルリと背を向ける。


「っ嫌よ!そんなの…ッ!」
「…ごめん」
「スズネ!!」


ヒュ、と強く冷たい風が私とスズネの間を吹き抜けた。
まるで引き留めるなと言うように、彼女へ伸ばした手に纏わりつく冷気に力無く手が下がっていく。

…私を避ける理由も、私に関わるなと言う理由も。
スズネは何も言ってくれなかった。


「……、!」


スズネの後ろ姿を見つめていると、エイブリーやマルシベールを含めたスリザリン生と合流して城の中へと戻っていくのが見える。

そっか、そうよね…スズネはスリザリンだもの。
もしかしたら、セブルスと同じように闇の魔術に興味を持ったのかもしれない。
もしかしたら、周りの影響で純血主義の思想でも持ったのかもしれない。

それだったらマグル生まれの私を避けるようになった理由も…。


「スズネの、ばか…」


顔を覆って、泣いて、蹲る。

どれくらいそうしていたのかしら。
自分の髪と同じくらい赤く腫れた目をそのままに、寮に戻れば私を見たポッターが騒いだ。


「リリー!?どうしたんだいその目…!」
「…何でもないわ」
「誰に泣かされた?」
「……っ、」


私の手を掴む力が予想以上に強くて痛み、文句の1つでも言ってやろうかとポッターを見上げれば。


「な、によ…」


彼は見たこともないような表情で私を真っ直ぐに見つめていて、ドキリと胸が音を立てた。


「ねえ。僕の愛しのリリーが誰かに泣かされたみたいなんだけど…知ってる人いない?」


顔はニッコリと笑みを描いているのに、声は驚くほど底冷えしていて。
談話室でガヤガヤと騒いでいた声がピタリと止み、静寂。

ポッターと仲の良いブラックがいち早くこちらに寄ってきて、ポッターに事情を聞いている。


「リリー、確か図書室でユキシロさんと…」
「っ何でもないったら…!余計なこと言わな、」
「スズネと?…ふーん、分かった。ありがとう」
「ちょ、っとポッター…」


ニコニコと不気味な笑顔を携えて、ポッターは私の目元をひと撫ですると男子寮へと歩いていく。


「スズネに何かしたら許さないから…!」


歩く足をピタリと止めたポッターだけど、何か言うわけでもなくそのまま寮へと姿を消した。
そのあとをいつものメンバーが追いかけていったのを見届けて、私は大きく息を吐いて暖炉の前のソファへ座り込む。

…もう、色々とぐちゃぐちゃ。



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