大切な人の為に [ 43/45 ]
***(レギュラス視点)
クリスマス休暇中から…いや、正確にはマルフォイ邸でのクリスマスパーティーを終えた頃から両親の様子がおかしい。
執拗にスズネ先輩のことについて聞いてきたり、できるだけ親しくしろと念を押された。
理由を聞いても、「お前はまだ知らなくていい」とそればかり。
両親に言われるまでもなく、僕はスズネ先輩にぞっこんではあるけれど…一体何が目的でスズネ先輩に近付けと?
「―…分からない」
「ん?何か言ったかい?」
「…いや。バーティまたこぼしてる」
「おっと、失礼失礼」
ブレッドの欠片をポロポロ零すバーティに呆れた溜め息を吐いて、いつもならスズネ先輩が座っているであろう場所を見つめた。
様子がおかしいといえばスズネ先輩とセブルス先輩もだ。
休暇に入る前に頼んでいたクッキーが送られてくることはなかったし、休暇が明けてから初めて会ったスズネ先輩は左手足に包帯を巻いて明らかに大きな怪我をしていた。
それについても聞き出したいと思うのに、学年が違うというだけでこんなにも捕まらないものかと予想以上に先輩たちと会うことができず、未だ会話をすることすらままなっていない。
―…でもそれは僕だけじゃないと知ったのは、1月も中旬に入った頃だった。
***
「っ、いつもそればかりじゃない!私なにかした!?したなら謝るから、何で避けるのか理由を教えてよ…ッ!」
シンと静まり返った図書室全体に、聞き覚えのある声が響いた。
何事かとザワザワと周りが煩くなると、司書であるマダム・ピンスがソノーラスで黙らせ、その騒ぎの元凶である彼女達を図書室から追い出している。
見えたのは、赤色の髪の人と赤色の瞳の人。
びっくりした。だってエバンズ先輩がまさかこんな所で大きな声を出すなんて思ってもみなかったから。
チラリと見たエバンズ先輩は泣いていて、それに負けないくらい泣きそうな顔をしているスズネ先輩。
「………っ」
どうしてか分からないけれど、スズネ先輩が何かに思い悩んでいるのは確かだ。
僕が落ち込んでいた時はスズネ先輩が助けて元気づけてくれた。
今度は僕が、彼女を。
ガタリと勢いよく立ち上がって、テーブルの上に広げていた勉強道具を片付けて図書室を飛び出した。
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