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思想に縛られる者 [ 29/45 ]



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「すごーい!」
「セブルス先輩、スズネ先輩のこと絶対落とさないでくださいね」
「分かっている…!」


夜、ホグワーツを抜け出したわたし達は箒に乗って空を飛んでいた。
わたしが言った”いけないこと”とはこのこと。

息苦しい、と言うレギュラスの少しもの息抜きになればいいと思って思いついたものだった。
セブルスは最後の最後まで校則を破ることに反対してたけど、わたしとレギュラスだけで行かせられないと渋々ついてきてくれた。

それと、きっとこのこと、アルバスは気付いてる。
だって今日の夕ご飯を食べ終えた後に『バレたらミネルバのお説教コースじゃぞ』ってウインクしながら言われたもん。
アルバスが知らないことなんてこの世にあるのかな、なんて思いながらセブルスの腰に回した手に力を入れた。

天文塔の近くをゆっくり飛び回り、その場にふわふわと浮かぶ。


「あはは、さむ過ぎる!」
「なに笑ってるんだ…」
「ああもう、セブルス先輩じゃ不安ですよ僕。スズネ先輩、僕の箒に乗り移って、」
「むり!それは怖い!」


むう、と拗ねたように頬を膨らませたレギュラスがかわいい。

小さく笑いを零して空を見上げた。
冬は星空がとても綺麗に見えると聞くけど、本当だ。こんなに綺麗な空は見たことない。

澄みきった冷たい空気をすうっと吸って、セブルスのあったかい背中に頬をくっつけながらレギュラスの方に顔を向けた。


「大丈夫だよ、レギュラス」
「………っ」
「息苦しくなったらさ、こうやって息抜きしよう。辛くなったら吐き出そう。我慢して、溜め込んで、爆発しちゃう前に!相手はわたしでもセブルスでも、他の誰かでもいいからさ」
「…スズネ、先輩」
「レギュラスは1人で少し頑張り過ぎかなって。わたしにできることなんかないかもしれないけど、いつでも力になるから。ね、セブルス!」
「まあ…そうだな」


そんな返事をするセブルスを『あ、照れてるー!』とからかえば、グラリと箒が大きく揺れて危うく落ちそうになった。
はあーびっくりした!心臓飛び出るかと思った。

そのスリリングさに興奮して思わず笑ってしまっていると、レギュラスがスンスンと鼻を啜ってるのが聴こえる。


「レギュラス…泣いてるのか?」
「…泣いてません」
「いやどう見ても泣いて、」
「しつこい男は嫌われますよ」


レギュラスにそう言われるとセブルスはグッと押し黙り、そのまま天文塔の中へと着地した。

そろそろ戻らないと、と思ったところで気付いたことがある。
ホグワーツを抜け出すのは簡単だったからいいけど、一番難しい、それぞれ寮まで戻ることまできちんと考えていなかった。

えーどうしよう!普通に廊下歩いてたら絶対にフィルチ先生に見つかるし、そうなったら罰則は免れない。
わたしが提案したことだしわたし1人に責任が来ればいいけど、でもきっとみんな悪いってなっちゃう気がする。


「「あ…」」
「…あ?」

「やあ、こんばんは。3人ともこんな夜遅くまで天文学の勉強かの?」


わーわーと頭を悩ませている間に、ここに姿を現したのはアルバス。
レギュラスとセブルスをチラリと見れば、顔色を悪くして『終わりだ…』『終わりですね…』と小さく呟いている。

いくらアルバスがこのことを知ってたにしても、こればっかりは見逃してくれないだろう。
だけどアルバスなら、事情を話せばわたしだけが悪いと分かってくれるかもしれない。


「アルバス、あの…!」


話し出したわたしをピッと手で制すると、アルバスはパン!と手を叩き、レギュラスとセブルスが持っていた箒を消してしまった。


「何やら天文塔で話し声が聞こえてのう。天文塔に入ろうとしたんじゃが鍵かかかっとった。いやはやわしが偶然夜の散歩をしていて良かった。閉じ込められた君たちを見つけられたのだから」


そう言って、パチンとアルバスお得意のウインクをひとつ。

アルバス、最高。大好き。
だけど、わたしが抜け道からホグズミードへ行った時もそうだけど、仮にも校長先生なのにそんなに甘くていいのかと少しだけ心配にもなるなあ。わたしとしてはすごく有り難いんだけどね。

隣の2人も大きく息を吐いてとても安心している。


「さて、わしが君たちを寮まで送ろう。スズネにはこれを渡しておくから、自室に戻るのじゃ」
「あ、はーい!」
「今回は特別じゃぞ。これがバレたらわしも一緒にミネルバのお説教コースになってしまうからのう」


わたしに小さく囁いたアルバスに、ぷっと吹き出した。
それからアルバスにもらったサインをローブのポケットにしまって、天文塔を降りていく。


「スズネ先輩…!」
「ん?」


自室へと戻るためセブルスとレギュラスに『また明日ね。おやすみ』と挨拶をしてその場を離れようとすると、引き留められる。


「今日はありがとうございます…本当に」
「お礼なんて、」
「…あんなこと言われたのは初めてだったから。とても嬉しかったんです」


微笑むレギュラスは月明かりに照らされて、とても綺麗。
なんだか照れくさくなってきたわたしは、それを笑って誤魔化した。


「明日、頑張ろうね。セブルスと一緒に応援に行くから!」


そう言い終えて、わたしはセブルスに歩み寄り、冷えている彼の頬にチュッとキスをする。
なんだか今日はセブルスと2人の時間がなかった気がするし、校則破らせちゃったし、これで埋め合わせになればいいな。

そして、今度こそわたしは自分の部屋へと足を進めたのだった。



(打倒グリフィンドール!)




*おまけ*



「どう思います?ああやって目の前で見せつけるようにイチャつくのって」
「ほほ、若いのう」
「若いとかの話じゃないですよ。はあー…」
「………」
「セブルス先輩、いつまで頬押さえて呆けているつもりですか」
「………」
「今度僕もスズネ先輩にお願いしてチューしてもらおうかなあ」
「…っダメだ!」
「これセブルス、あまり大きな声を出すでない。絵画が起きてしまう」
「「…………」」
「(わしの愛孫はモテモテじゃのう)」




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