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思想に縛られる者 [ 28/45 ]



***


セブルスに連れていかれた場所は、天文塔。
”僕は下で待っている”というセブルスと別れて、長い長い階段を上り、頂上に着く頃には息も絶え絶え。

こんなところにレギュラスが?と疑問に思ったけど、空に近い頂上の隅っこに体育座りで小さくなる深緑のローブが見えた。


「レギュラス?」
「…っ、!」


小さな緑がピクリと揺れたのが分かる。
コツコツとあまり音を立てないように歩み寄り、揺れた身体にそっと触れた。


「…何かあった?」
「……あいつらが、兄さんが…」


ボソボソと小さな声で話し出したレギュラスに口を挟むことなく耳を傾ける。

明日に試合を控えたスリザリンとグリフィンドールが、去年と同様にピリピリしていたのは分かる。
そして今日、最後の練習だと気合を入れる2つのチームは競技場で激突したのだという。


「チームのみんなが口を揃えてグリフィンドールに言うんです。”こっちにはブラック家がいる、負けるはずがない”とか”期待の星”だとか…」


顔を上げたレギュラスの表情は、怒りとも悲しみともとれる複雑な感情が現れていた。


「意味が分からない、ブラック家だから負けないとか。試合が始まる前から勝手にそんな過度な期待をかけられて、もしグリフィンドールに負けでもしたら?知らないんだ、僕がどんなに惨めな気持ちになるか…っ」


膝の上でグッと強く握られた拳に、自分の手を重ねると、レギュラスは下唇を噛んで泣きそうな顔になる。


「…僕は何も言わなかったんです。そうしたら、今度はグリフィンドールの奴らが”親の七光り”だの”コネ”だの好き勝手言ってきて」


我慢できなくて逃げてきちゃいました。
そう言って力なく笑うレギュラスが、痛々しい。

これを見てください、とレギュラスがローブからくしゃくしゃの手紙を取り出す。


「兄さんは、自分のしたいことをしたいようにすると言ってグリフィンドールに入りました。そのせいで、と考えると憎くて仕方ないです。でも、それと同じくらい…自分の道を自分らしく生きれる兄さんが羨ましい」


その手紙を開いて中を見れば、『愚兄に劣らぬように』『ブラック家の名に恥じぬように』などの言葉が至る所に見受けられた。

手紙を上から下まですべて読み尽くしてみても、レギュラスがレギュラスとしてレギュラスらしくいられる希望を見出すことはできない。

くだらない。本当にくだらない。図書室でのマルシベールの話もそうだ。
純血も非純血も、スリザリンもグリフィンドールも、家柄が良いも悪いも。なんでこんなにくだらないものに囚われているのだろう。

でも、それをくだらないと思うのだってわたしの考えなだけで人に押し付けるようなものじゃない。


「それでも僕は純血主義だし、自分の意志でスリザリンを選びました。だから僕は、兄さんのように父や母を裏切ることはしない。…でもたまに、自分で選んだ生き方なのに、こんな風に息苦しくなってしまうんです」


情けないですね、と嘲笑するレギュラスの両手を握る。


「…レギュラス、」
「はい」
「今日の夜、いけないことしようか」
「…は、い?」

「どういうことだスズネ!」


待ちきれず、いつの間にか頂上まで登ってきていたセブルスに気付いてたわたしは『もちろんセブルスも一緒だよ!』とニッコリ笑った。


「な、に言ってるんですかスズネ先輩!3人でなんて、そんな…」
「おまえも顔赤くさせてなに想像してるんだレギュラス。そんなことありえん」
「もちろんです、僕はするならスズネ先輩とがいいです」
「させるわけあるか…!」


なんだか意味不明なことで言い合ってる2人に、ケラケラ笑っていると2人から睨まれる。

レギュラス、ちょっとずついつも通りに戻ってきたかな。
セブルスと軽口を叩き合う様子にホッと息を吐いて、今夜のことを頭の中で考えた。




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