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迫る恐怖と憎悪 [ 26/45 ]


***(セブルス視点)


あのハロウィーンの日から、どうもスズネの様子がおかしい。
たまに、何かに怯えるような表情をして僕に寄り添ってくる時がある。

それは僕としては嬉しいことではあるが、スズネの身体が小さく震えているのに気が付いてからは手放しで喜んでいられなくなってきた。


「スズネ、大丈夫か?」
「…うん、大丈夫!最近急に寒くなってきたから、人肌…というかセブ肌?恋しくなっちゃって」


季節は11月に突入した。
確かに寒さは増していく一方だが、本当にそれだけの理由なのだろうか。


「あ、リリー!」
「スズネ!」


僕の身体と密着していた熱が離れ、その熱の持ち主は赤い髪の彼女を見つけて駆け寄っていく。

恋人なのに、なんだかリリーに負けた気分だ。
読みかけの本に使い古した栞を挟んで、小さく息を吐いた。


「ふふ、セブとは順調みたいね」
「うん。仲良くしてる!」
「でもちょっと寂しいわ…。あなた達が付き合うことになったのは私もとても嬉しいことなのだけれど、一緒にいれる時間が前より減ったもの」


リリーより身長の高いスズネが抱き込むようにして彼女にくっついているのが目に入り、胸がモヤっとする。

女子相手に嫉妬なんて、どうかしてる。
そう思うが、スズネに抱き着かれて嬉しそうにしてるリリーが僕と目が合うと勝ち誇ったような笑みを浮かべてくるものだから、それが悔しい。


「Ms.ユキシロ!」
「ミネルバだ」
「………」
「あ、ごめんなさい。えっと…マクゴナガル先生!」


リリーの次はマクゴナガルか。
スズネが離れていったのを名残惜しそうにするリリーをフンと鼻で笑っていると、それに気付いた彼女がキッと睨みつけてくる。


「セブルス」
「なんだ」
「あなた、まだエイブリーやマルシベール達と一緒にいるの?」
「…それがどうした」


またその話か、と内心うんざりした。

リリーが闇の魔術や純血主義者に対して良く思ってないことは知っている。
だが自分のやりたいことにまで口を出される筋合いはないとも思うのが正直なところだ。


「ねえ、セブ。よく考えてって前にも言ったわ。闇の魔術はいけないものよ」
「全てではない」
「ええ、そうね。そうかもしれない。闇の魔術に興味があるくらいならいいわ、でも…」
「僕には!…僕には、目標がある。その為にはこうするしかないんだ」


闇に属する魔法は、どれも強力で魅力的だ。

僕よりも魔力が強く、僕よりも杖使いに秀でたスズネを守るには…これからも彼女の傍にいるためには。
今よりもっと力をつけなければならない。

その為なら僕は闇の魔術を大いに利用するし、必要となれば死喰い人にだって…。


「聞いて聞いて!というかこれ見て!」


僕とリリーの重い空気を破る、スズネの嬉しそうな声。

その声にハッと気を取り直したのはリリーも同じなようで、ぎこちなくもその顔に笑みを浮かべてスズネに振り返っていた。


「アルバスが、ダンブルドア校長先生がわたしの正式な保護者になってくれたんだ。ホグズミードの許可証もアルバスが書いてくれて、今度からはわたしも一緒に行けるんだよ!」


ジャーン!と確かにダンブルドア校長の直筆のサインのある許可証を見せてくる。
頬を上気させて本当に嬉しそうに微笑むスズネに、荒んでいた心が癒された。

ダンブルドアが彼女の保護者になったということは、クリスマス休暇に僕の家に来てもらうには校長の許可をもらわなくてはいけないのか?

ふむ、とそんなことを考えながらスズネと一緒に喜ぶリリーに肩を竦めていると、少し遠くに忌々しい丸眼鏡がキラリと光ったのが見えた。

ポッターと、その隣にはブラックもいる。


「…………」


視線だけで射殺せるのではないかというほどの鋭い視線と、歪められた口元が何とも滑稽に思えた。

群れなければ優位に立てない、弱い奴らだ。

スズネはきっと知らないだろうが、僕と彼女が付き合い始めてから今まで大したことなかった奴らの悪戯が、度を超えるようになってきた。
いつもは僕を見掛ければ所構わず呪文を放ってくるが、今は近くにスズネとリリーがいるから手が出せないでいるのだろう。

僕もやられるばかりではないし、奴らには最近作った呪文のいい実験台として反撃してやってるが、ひとり相手ならまだしもふたりを同時に相手にするのはさすがに不利だ。

それ故に最近は常に生傷が絶えないが、スズネにそれがバレるのは何としても避けたい一心で傷跡を消しきれなかったところは何とか服で隠していた。


「セブルスー?」
「…っ、どうした?」
「今度のホグズミード、楽しみだね!」
「…ああ、そうだな」


顔を覗き込んできたスズネの笑顔が眩しくて、僕は目を細めて彼女の頭を控えめに撫でた。
それをするといつも、ぼん!と頬を赤くするスズネが可愛くて仕方がない。


「あら、だらしのない顔しちゃって」


放っておいてくれ。
リリーの呟きに心の中で返事をして、再度ポッター達のいた方へ視線を向けてみるとそこにはもうあいつらの姿はなかった。

近頃、奴ら4人はコソコソと隠れて何かしていることを僕は知っている。
その秘密を暴き、あわよくば退学にでも追い込んでやれれば最高の仕返しになるというもの。

首を洗って待っておけ、と僕は鼻を鳴らした。



(幸せな2人に忍び寄るもの)



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