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現れた少女と恋情 [ 18/45 ]


***


次の日。
わたしは悪戯仕掛人の4人に呼び出されていた。


「スズネ!このままだとあの女にスネイプとられるよ?いいのかい?」
「俺は大いに構わない」
「僕も」
「シリウスとリーマスには聞いてないから」


ジェームズの寝癖いつもよりひどいなあ。
とか思って心の中でクスリと笑えばギュッとほっぺを抓られる。

笑ってる場合か!とジェームズが声を荒げると、隣にいたピーターが小さく悲鳴を上げた。

セブルスをとられる。
そんなこと言われても、セブルスはわたしだけのセブルスではないわけだし…とられるも何もないんじゃ?


「はああ。ねえ、スズネ。君、スネイプとあの女がイチャついてるところを見て何とも思わなかったのかい?」
「…お、思ってない…こともない」
「ハッキリ!」
「っ、なんかズキッてすごく胸が痛くなった…!」
「あっそう。じゃあさ、もしシリウスが女の子とイチャついてるのを見たら?胸は痛む?」


シリウスと女の子がイチャついてたら…。
少し考えて、でも悩むまでもなくすぐに想像ができてしまった。


「痛まない、かな。シリウスはモテモテだなあって思うくらい…」
「ね?それが『特別』か『特別』じゃないかの違い、っぶへ!」


キラリとウインクをしたジェームズの端正な顔が、何かに吹っ飛ばされて目の前から消える。
どうやらシリウスの飛び蹴りがジェームズの顔面に炸裂したらしく、それからあの2人は魔法を使わず取っ組み合いを始めていた。

仲良しだなー、と思いながらさっきのジェームズの言った言葉を思い返す。『特別』か『特別』じゃないかの違い。
シリウスだけじゃなくて、レギュラスだったら?ジェームズは?リーマスは…と考えてみた。


「………」


他の人で考えてみてもやっぱり、胸が痛むことはない。
それはジェームズの言う通り、わたしにとってセブルスが『特別』ってことになる…んだよね。


「まだ、悩んでる?」
「リーマス…」
「けっこう単純なことだと思うよ。胸が痛んだってことはショックを受けた、傷付いたってことだろう?スズネは、セブルスが他の女の子とくっついてたのを見て嫌だって思ったんじゃない?」
「…思った、と思う」
「うん。それは、スズネがセブルスのことを特別に好きって思ってるからだよ」


リーマスはそう言ってポケットから1つチョコレートを取り出して、わたしの手に乗せた。


「それなら、セブルスが君を想う好きとスズネがセブルスに想う好きは同じってことになるんじゃないかい?」


悩んでたのがウソみたいに、続けられたリーマスの言葉が、スッと胸に落ちてくる。

わたしはセブルスが好き。友達としてじゃなく、異性として。
セブルスがそう言ってくれたように、わたしもセブルスと恋人になれたら…嬉しいと思う。


「リーマス、わたし…セブルス探してくる」


自覚したら、すぐにでもセブルスに今の気持ちを伝えたくなった。
セブルスはわたしにとって、特別に好きな人なんだよって。


「その必要はないみたいだよ」
「え、」

「−…スズネ!」
「ちょっと待ってよセブルスー!」
「うるさい。僕に付き纏うな!」


わたしの名前を呼ぶセブルスの声が聴こえて、ハッと振り向けばサクライさんに腕を絡ませられているセブルスがこっちへ向かっていた。

その様子に、自分の気分がどんどん落ち込んでいくのが分かる。
サクライさんは、わたしと同じようにセブルスのことが好き…なのかな。


「いいご身分だなスニベルス。女侍らせてわざわざ見せつけにくるたァな」
「もう、ダメじゃないシリウス!スニベルスなんて呼んだら。ブラック家の長男のくせに口が悪すぎ!」
「…っ、なんだとテメー!」


シリウスの怒号があまりにも迫力のあるもので、わたしはビクリと肩を跳ね上げた。

シリウス、すごく怒ってる。
自分の家のことをコンプレックスに感じてるシリウスに対して、今の言葉は言ってはならない。

そして、それを知っているジェームズとリーマスも無言のままサクライさんを鋭く見据えていた。


「あのさ、君ちょっと出しゃばり過ぎ。助けてもらった相手に対して何なんだいその態度は」
「それについては感謝してるわ。でもそれとこれとは話が別。セブルスをスニベルスなんて先に呼んだのはそっちよ!」
「だからって『君』が、シリウスを傷付けていい理由にはならないだろう」


聞いたことのないくらい底冷えするような声音で畳み掛けるジェームズとリーマス。

この状況をどう収束つけたらいいんだろう、と視線を彷徨わせているとセブルスと目が合った。
少しだけ表情を緩めてくれたセブルスに、わたしもホッと小さく息を吐く。


「…ブラキアビンド!」


その瞬間、シリウスの声と共に腕縛りの呪文が聞こえた。
それはサクライさんに向けられたものだけど、彼女にあたる寸前でバチンと何かに相殺される。


「ハッ!下らねえ純血主義を掲げる腐れスリザリンが、お前らのt最も嫌うマグルを庇うなんてどうかしてんじゃねーか!?」
「力を持たないマグルに呪いを掛けようとする貴様の方がよほど頭がイカれている」
「はあーあ。スニベリー、最近はスズネに免じてあまり構ってなかったけど…放っておけばすぐこれかい?」


ジェームズまでセブルスのことを蔑称で呼び、杖を取り出している。
横を見ればリーマスまで!?と思ったけど、リーマスの杖の先はセブルスではなくてサクライさんに向けられていると分かった。

どうしよう、このままだと絶対誰かが怪我をする。
チラリとサクライさんを見れば、呑気に『あたしのために喧嘩しないでー!』と的外れなことを言いながらセブルスのローブを握って彼に寄り添っていた。

…イライラ、むかむか。
胸の痛み以外の気持ちが沸き上ってきて、わたしまでサクライさんに杖を向けたくなってくる。

そうこうしているうちに、複数の呪文が一気に放たれてわたしは咄嗟にセブルスと彼らの間に割って入った。


「(プロテゴ!)」


心の中でそう唱え、右手の杖と左手の指先から出た防御魔法が双方からの呪文を打ち消す。
サァー、と白い粉が雪のように空中で舞い、消えていった。


「スズネ…」
「セブルス、話がある。一緒に来て」
「あ、ああ…」
「…っあ!じゃああたしも、」
「あなたは、関係ない。わたしはセブルスと2人だけで話したいことがある。ついてこないでほしい」


わたしより少し背の低いサクライさんを見下ろせば、グッと下唇を噛んでわたしを睨みつけてくる。

正直、彼女が余計なことを言わなければここまで事態が悪化することはなかった。
そう考えるとどうしても、彼女に対する言動が冷たいものになってしまう。


「行こう、セブルス。ジェームズ、シリウス、リーマス、ピーター相談に乗ってくれてありがとう。だけど、前にも言った通りセブルスをそんな風に呼ぶのはやめてね」


そして、わたしはセブルスの手を引いてその場を後にした。



(気付いた気持ち)


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