痛いきっかけ [ 16/45 ]
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「ジェームズってリリーのこと好きだよね?」
「ああ、もちろん!今さら何だい?僕のリリーへの想いはもう口では言い表せない領域に達しそうな勢いだよ!!」
「…じゃ、じゃあシリウスやリーマスやピーターのことは?好き?」
「もちろん友として好きさ!スズネのことも。あ、これはリリーに対する好きとは違うからね?」
「そう、そこ!あの3人やわたしに対する好きと、リリーに対する好きの違いってなに?」
湖の大イカと戯れる他の3人をビッと指差してから自分を指差してジェームズに迫ると、は?と驚かれた。
さっき目がハートだったくせに今は目が点のように小さいジェームズに吹き出すと『笑い事じゃないよ…』となぜか呆れてみせた。
「友達に対する好きと、愛しい人に対する好きは違うでしょ?」
「それが、よく分からなくて。『好き』には色々あるっていうのが…」
「はああ。ねえ、スズネ。君、スニ…スネイプに告白されたんだろう?違うかい?」
「え!?なんで知って…っ」
「僕はてっきり、君もスネイプが好きなんだと思ってたから付き合ったんだと思ったけど…その様子じゃ違うみたいだね」
分からないことを分からないままにして、せっかく想いを伝えてくれたセブルスに適当な返事をすることだけはしたくない。
わたしはセブルスのことが好き。さっきジェームズが言ってたように愛おしいって思うことも何度かある。
でも、その好きがセブルスが向けてくれるものと同じなのか分からないから…。
「ああもう!さっきから分からない分からないってうるさいな!」
「…っ、ごめん。うん、やっぱり自分で考えてみるよ…」
「おいジェームズ!何でスズネに怒鳴ってんだよ!」
「うるさいシリウスは黙ってて」
ピシャリとジェームズが鋭く言えば、シリウスは言葉を詰まらせる。
分からないことは分かる人に聞けばいいと単純に考えてた。
でも、自分で本当にきちんと考えることもなくすぐに人を頼るのは確かにジェームズも気分を悪くして当然だと思う。
もう一度、ごめんと謝罪をすればジェームズから大きな大きな溜め息がひとつ。
「あのさ、本当に本当にほんっっとうに不本意なんだよ。あのスニベルスなんかの恋が上手くいくように手助けするようで」
「それは、だめ」
「ああ、はいはいスネイプね。…でも、スズネ。君は僕にとって友達だ。だからこれはあいつの為でも何でもなく、君のための助言だと思って聞いて」
人差し指をピッと立てるジェームズの丸眼鏡がキラリと光る。
ありがとう、とぎこちなく感謝をしてジェームズの次の言葉を待っているとピーターが焦ったようにわたし達の間に割って入ってきた。
「なにピーター。僕は今からスズネに愛の何たるかを語ろうと、」
「あ、あれ見て!す、スネイプが…っ」
「…セブルス?」
ピーターの騒がしさに、さっきまで黙って本を読んでいたリーマスも本を閉じてこちらに歩いてくる。
ピーターから出たセブルスの名前に疑問を持ちながら、彼が指差す方に視線を移すと。
「あれは…」
「…なんであいつがスネイプと?」
「ふむ。バッドともグッドとも言えないタイミングだね」
リーマスとシリウスは驚き、ジェームズは顎に指を添えて唸る。
わたしは、ただただ呆然と視線の先のセブルスと…セブルスに抱き着く女の子を見つめていた。
ドクドクと身体全体が心臓にでもなったかのように大きく鼓動している。
セブルスにとってあの子も、『特別』なの…?
ズキン!と大きく痛む胸をグッと押さえて、それ以上その光景を見ていたくないと思いギュッと思い切り目を閉じた。
(胸の痛みの意味)
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