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痛いきっかけ [ 15/45 ]



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部屋を出たところでバッタリ会ったピーブズからの悪戯を回避して、拗ねるピーブズの背中に乗って城の中を徘徊する。

こうしてゴーストと遊ぶの、なんだか久しぶり。
『おまえだからこんなこと許すんだぞ!?』とかブツブツいいながらも大人しく背中に乗せてくれているピーブズに口角が上がる。

すれ違う人達にクソ爆弾を投げつけているところを除けば、ただのやんちゃで済むのになあ。
ピーブズに対して怒り狂う生徒たちに背中から『ごめんよー!』と謝罪して、通り過ぎる間にスコージファイをかけておく。

そうこうしている内にいつの間にかホグワーツからの抜け道である隻眼の魔女の像がある廊下へとやって来ていた。

去年はここからジェームズ達とホグズミードに行ったんだったなー。
つい去年のことなのに少し懐かしいなんて思いながらその前を通り過ぎようとした時だった。

ボフンッ!!


「な、なに…っ?」
「ぎゃあ!血みどろ男爵…!?」
「ちょっ、ピーブズ!痛ッ!」


何かの破裂音と共に辺りが白い煙に覆われて、ピーブズの悲鳴が聞こえたのと同時に支えのなくなったわたしの身体が地面へ転がる。

お尻打った…めっちゃ痛い…。
しばらく立ち上がれずにひたすらお尻を摩っていれば、白い煙はどんどん晴れていった。


「ん?スズネじゃねえか!」
「その声は…シリウス?」


煙が完全に晴れきると目の前にはシリウスがいて、わたしの手をグイッと引っ張って立たせてくれる。

まだお尻がジンジンするー…でも、頭から落ちなくて良かった。


「ゴーストの上になんか乗ってるからだぞ」
「貴重な体験だよ?」
「そりゃそうだ。ゴーストに触れられる奴なんざどこ探してもいないだろ」


白い歯を見せてハハ!と笑うシリウス。その様子にホッと息を吐く。

普通の人にはできないことができてしまう、そんなわたしの『特別』を周りの人達は恐れ…嫌った。
なのにシリウスはセブルス達と同じように、そういう反応を一切見せずに仲良くしてくれる。

それがとても嬉しかった。


「他の3人は一緒じゃないの?今日はホグズミードの日だし、またここから抜け出して行くのかと思ってたけど…」
「その予定だったんだけどな。ピーブズが今日はやけに大暴れしてるらしくて、それを治めてくれって色んな奴から頼まれたんだよ」


悪戯仕掛人にな、とフフンと自慢げに鼻を鳴らすシリウスに苦笑する。

暴れまわるピーブズを探すのに、悪戯仕掛人の4人は手分けして捜索してたってことか。
悪戯仕掛人である彼らに悪戯で暴れるピーブズの鎮圧を要請するほどピーブズは酷かったみたい。

楽観視してないでもっとちゃんと悪戯止めさせればよかった。


「ごめん、わたしずっとピーブズといたのに止められなくて」
「あ?まあ、いいんじゃねーの。ああいうのがいた方が俺たちとしても面白いからな!」


さっきシリウスが使ったのは『イヤイヤ玉』(ピーター命名)というらしく、それを使うとその人が一番苦手とするものに煙が変身するというものらしい。

複数人には効果はないらしく、さっきはピーブズが対象となって目の前に現れた血みどろ男爵(煙)に怯えて逃げていったというわけだ。

まるで『ボガート(まね妖怪)』を詰め込んだかのようなその悪戯道具に興味がわいてどんな魔法がかかってるのか聞いてみれば、企業秘密だと教えくれなかった。


「さて、と。ピーブズも追い払ったことだし、ジェームズ達と合流すっかなー」
「あ!そうだ。今日ってもうこれから暇?特にジェームズ!」
「…なんで特にジェームズなんだよ」


さっきの愉快そうな顔から打って変わって一気に不機嫌そうに顔を顰めたシリウス。
え、今の言葉の何がそんなに気に障ったんだろう…?

思わず横に首を傾げると、シリウスはハッとした表情をしてからブンブンと顔を振っていた。


「ジェームズに聞きたいことがあってさ」
「俺じゃダメなのかよ」
「んー、シリウスでもダメってことは無いんだけど…」
「内容は?」
「−…シリウスってさ、今好きな人とかいる?」
「、っはあ!?」


背の高いシリウスを見上げて手始めに問えば、大きな声を上げてそれから顔をだんだんと赤くさせていく。

およ、すぐに否定しないってことはシリウスにもジェームズにとってのリリーみたいな存在がいるってことなのかな!
友達のそういう話はあまりする機会がなかったしちょっとだけ内心でテンションが上がっていると、シリウスは大きく息を吐いた。


「別に、いねえよ。好きな奴なんか…」
「えー?でも今の反応だといないって感じじゃなさそうだったけど…」
「俺、モテるからな。勝手に女から寄ってくるし。自分からケツ追っかけるほど女には困ってないんだよ」


うわ、どっかの誰かさんと似たようなナルシスト発言。
というかそれって女の子なら誰でもいいってこと、なのかな?

リドルの時も思ったけど、それがたとえ特別の『好き』じゃなかったとしても、そもそもが『好き』だと思ってないような人と恋人になるという気持ちがよく分からない。


「…まあ、強いて言うなら俺自身をちゃんと見てくれる奴がいいとは思う」
「俺自身?シリウスはシリウスじゃないの?」
「っばーか。おまえは詳しいこと何も知らねーからそう言えんだって」


呆れたように微笑んだシリウスは、どこか寂しげで少し悲しそうに見えてわたしは胸がキュッとちょっとだけ苦しくなった気がした。

シリウスが、自分の名字を嫌悪してるのと何か関係が?
もし何か悩んでいることや苦しんでることがあるなら力になりたい。だって大切な友達なんだから。


「シリウス、何か困ったことがあったらわたしに出来る限りで力になるよ。だから、シリウスはシリウスらしく元気ハツラツでいてほしいなあ」
「は、なんだよ元気ハツラツって」
「シリウスはあの4人の中でもパワフルで活発なイメージがあるからさ。寮によってのその人の性格とかそんなの考えたことないけど、なんかシリウスにはグリフィンドールが一番似合ってる気がするね」


そう言ってニコリと笑いかければ目を見開いて固まるシリウス。
今日のシリウス、表情がコロコロ変わって面白い。

ってここで油売ってる場合じゃなかった!
シリウスに聞いてもあまり意味なかったし、やっぱりジェームズに聞いてみるしかない。


「シリウス、さっき聞いたことジェームズにも聞きたいんだよね」
「…は、え…ああ」
「だから今日はホグズミード諦めて、わたしに付き合ってほしい」
「は!?付き合ってほしいって…!!」
「…変なシリウス」



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