恋心と謎多き青年 [ 6/45 ]
***
「スラグクラブ?」
「…ああ」
「スラグって、あのスラグホーンのスラグ?」
「ああ。おい、教授に向かって指差すな」
魔法薬学の授業中、いつも通りセブルスをペアを組んでテキパキと調合していく彼の手さばきを眺めていると彼には珍しく私語を話し出した。
刻み終わった根生姜をセブルスに渡してから、わたしは机に頬杖をつく。
「そのクラブがどうしたの?」
「スラグホーン教授お気に入りの成績優秀者だけが参加できるものでな。今度パーティーが開かれるんだ」
「へえー。わたしとは無縁のクラブだね」
「そうでもない。スズネは魔法薬学こそてんでダメだが、呪文や変身などには長けているだろう?スズネを誘えないかとうるさく言われているんだ…」
要するに、セブルスはそのパーティーにわたしを誘ってるってことだよね。
…正直言えば、行きたくない。
なんでって、成績優秀者の集まりで尚且つあんまり好きじゃないスラグホーンのクラブっていうのがちょっと。
「…リリーも、くるぞ」
「えっ、!」
「レギュラスも」
「ええっ」
「それに、僕も。パーティーになんかいつも参加していなかったが、スズネがくるなら…行ってもいい」
「………っ」
まただ。セブルスからこうやって嬉しくなるような言葉を掛けられると、胸が苦しくなってドキドキする。
無意識に伸びた手が、胸のあたりの服を掴んだ。
「…じゃあ、いく」
「っ、ああ。伝えておく」
ホッとしたように頬を緩めたセブルスに、心臓が煩くなる。
その後、魔法薬の調合に戻ったわけだけどすごく珍しいことにセブルスが失敗していた。
もしかして材料の刻みが粗かったのかも、と謝れば違うらしい。
「はあ…油断した。浮かれてしまった」
「浮かれた?何に?」
「…っなんでもない」
そのあと、なぜかリリーにからかわれて顔を赤くしたセブルスがいてこれもよく分からなかった。
***
なんだか最近分からないことだらけだなあ、と思いながらわたしは1人図書室に来ていた。
ずっと調べようと思ってて調べられてなかったこと。
夢の中の男女2人、レフェロという言葉。
そして…いきなり目の前に現れたトム・リドル。
あの紅い瞳の彼は、スリザリンのどの学年を探しても見つけることはできなかった。
きっとこのホグワーツには在学していないんだと思う。
となるとやっぱりあの人はもう生きていなくて、わたしはあの時ゴーストに出会っただけなのかもしれない。
「よいしょ、っと」
とりあえず、レフェロから調べてみよう。
適当に見繕って持ってきた本をテーブルの上に置いて、ペラペラと捲った。
何冊か読み漁り、わたしが持ってきた最後の図書である『古に伝わりし呪文集』という本にそれは載っていた。
「Refelo…」
『レフェロ』継承呪文。開発者、用途共に不明。
かなり古い呪文であることは確かだが、現状使える魔法使いはいない。実在する呪文かどうかも定かではない。
「継承呪文…?」
継承って要するに受け継ぐこと、だよね。
何かを受け継ぐ呪文、受け継がせる呪文ってことなのかな。
「それに、実在するか分からない呪文…って」
実在するか分からないのにレフェロが継承呪文だと分かったのはなぜだろう。
まあ、本に載ってることが全て正しいとは言い切れないから結局のところ何も分からず仕舞い…かなこれは。
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