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想い合い



リドルとわたしが再会を果たしたその日の夜。


「…トム」


わたしを後ろから抱き締めているリドルはピクリと身体を揺らしたのが分かる。


「っていうんだね、名前」
「…ああ。僕の名前はトム・マールヴォロ・リドル」
「ずいぶん省略したんだね」


わたしと出会った時の彼は『リドル』としか名乗らなかった。
小さく笑いを零していると、お腹に回されたリドルの手に少しだけ力が入る。

ちなみに今いる場所はディペットさん達が与えてくれたわたしの部屋だ。
これがとても豪華で素敵な部屋で少し気が引けてる。


「憎い、父と…同じ名前なんだ。だからトムという名は好きじゃない」


リドルがわたしの肩に額をくっつけてボソボソと呟くように言った。


「旦那さんと同じ名前を子供にもつけるって…本当に好きだったんだろうね、メローピーさん」
「…っ!どうしてカヤが母さんの名前を知っている?」


ぐいっと身体を引かれてリドルと向き合うようになる。

あ、そういえば言ってなかった。
わたしがどうやってリドルの世界に導かれたのか。


「リドルがいなくなってしまってすぐにね、わたしは仕事を辞めて必要最低限の荷物を纏めてイギリスに飛んだんだ」


話しながらリドルの手に自分の手を重ねると、きゅっと控えめに握り返してくれる。
その暖かさが、なんだか擽ったいな…なんて思いながらわたしは続きを話した。



***


イギリスに到着してすぐにわたしは聞き込みを始めた。

ホグワーツとか魔法とか、携帯の翻訳アプリを使いながら色んな人に聞いて歩いたけど『頭大丈夫?』的なことを言われて変な目で見られて終わるのが殆どだった。


「はあ、当たり前だろう。マグルは魔法が本当に存在することなんて知らないんだから」
「今思えばわたしも何してたんだろうって思うよ」


それから、リドルがホグワーツや魔法界のことを話してくれた時に『キングス・クロス駅』ってところからホグワーツに行ける電車が出てるって言ってたことを思い出して…。

それでキングス・クロス駅に向かった。
駅に着いた所で外が真っ暗なことに気付いて、その日は近くのビジネスホテルに泊まったんだ。


「その行動力は素晴らしいとは思うけど、女ひとりで夜遅くに出歩くのは危険だろう…」
「うん、でももうしないよ。だってもうどこか行く時はリドルが一緒に来てくれるでしょう?」
「…君には敵わないな」


それで次の日、また駅に行って色々見てまわったりしたんだけどホグワーツ行きの電車なんて全然見つけられなくて。

とりあえず一休みしようと思って、駅の柱に背中をつけようとしたら何故か柱が消えてそのまま後ろに倒れちゃってね。

そしたら、同じ駅のホームのはずなのにさっきまで周りに沢山いた人が一瞬で消えていて…わたししかその場にいなかった。


「その柱の場所って、9と3/4番線だった?」
「9と3/4番線…そんな路線あるの?」
「いや、そうか。何でもない、続けてくれ」


誰もいなくなった静かなホームは怖いとも思ったけど、わたしの胸は不思議と高鳴っていた。