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2人の道



緩く伸びた黒い長髪と、それとは不釣り合いな橙の瞳。
日本人だというカヤという彼女は、髪が黒なのを抜けばアジア系よりかは『こちら』系の顔立ちをしている。

単純に、彼女を美しいと思った。

ダンブルドアの視線がカヤに釘付けなことに気付いたリドルが瞳を赤くさせて睨めば、ダンブルドアは苦笑して彼女から目を外して目の前の紅茶へと口をつける。


「校長、ダンブルドア教授、今からする話は信じられないような話ですが事実です。信じるか信じないかはあなた達にお任せします」


そう切り出したリドルの話に耳を真剣に耳を傾け出したディペットとダンブルドアをチラチラと見ながら、カヤも出された紅茶をちびちびと飲んでいた。



***


「つまり、彼女は別の世界から来たということかね?」


リドルの話は普通に考えれば信じがたいものではあったが、リドルの『記憶を見てくれてもいいし、真実薬を飲んでもいい』という言葉が後押しをして彼らはその話を信じる他なかった。


「それでまだ学生の身である君と、身寄りもない彼女とはどう生活をするつもりだい?」


ディペットが髭を撫でながら聞けば、リドルは考え込む。

母が残した金はまだ山ほどあるし、カヤに不自由させることはないだろう。
だが自分はあと2年間はホグワーツに通わなければならない。
せっかくカヤと一緒にいられるというのにそれから2年もの間離れることになる。
そしてその間、カヤを1人にすることにもなる。

そこまで考えて、リドルは『ありえない』と首を小さく横に振った。


「あの…」


今まで黙っていたカヤがおずおずと口を開く。
余計なことは言うなと釘を刺していたリドルだが、何も言わずカヤを見ていた。


「わたし、自分の全財産を現金にして持ってきたんです。これってこちらの通貨に換金することってできますか?」
「ふむ、可能だよ」
「良かった!それなら家1つ買うくらいのお金はありますし、わたしは1人でも大丈夫です」


はあ?と声を出したのはリドルだ。
不機嫌そうに顔を顰めて、カヤの頭を軽く小突く。


「ホグワーツは全寮制なんだよ。つまり僕が卒業するまでの2年間はほぼ一緒にはいられない。君はそれでもいいってわけだ?」
「ええ!?寮とは知らなかった…。でも、それ以外にどうしたら…」


そんな2人の様子に、ディペットとダンブルドアは顔を見合わせてクスリと笑いを零した。
ゴホン、とわざとらしく大きな咳払いをしたダンブルドア。


「ミス。君がよければだが、トムが卒業するまでホグワーツに居候するのはいかがかね?」
「「…え?」」


次はリドルとカヤが顔を見合わせる番だった。


「ミス。君はマグルかい?」
「あ、えっと…そうです」
「ふむ。しかし、君の中には微量だが魔力があるのを感じるのだ」


ディペットの言葉に、カヤとリドルは思い当たる節がある。
リドルの魔力が込められたルビーのピアス。
それを通してカヤの中に少しずつ彼の魔力が馴染んでいったのだろう。

カヤが左耳へ手を伸ばしてピアスを外せば、そこにあるはずの赤い石はなくなっており、金属の部品だけが残っていた。


「日本人の君が、無意識に翻訳魔法を使って我々と今こうして会話できているのが何よりの証拠だよ」


ダンブルドアが微笑みながらそう伝えると、カヤは「確かに…」と小さく呟く。

英語が喋れるわけもない彼女が今、外国人である彼らと会話できていることはダンブルドアの言う通りそういうことなのだろう。
リドルとの会話できていることに違和感が無さすぎて忘れてた、とカヤは苦笑する。


「入学するには魔力が少なすぎる上に、年齢的にもトムと同じかそれより1つ下くらいだろう。さすがに5年生から魔法をイチから学ぶのは非常に厳しい」


という理由で、リドルが卒業するまでの2年間はホグワーツで『客人』として『居候』してもらう形であれば保護できるとのことだった。

年齢のことなど色々突っ込みだいところはあったが、カヤがリドルを見れば「これで毎日でも一緒に寝れるな」と満足げに微笑んでいる。


「…あの、ご迷惑おかけしますがお世話になりたいと思います!」


リドルの様子に呆れたように、でも嬉しそうに笑ったカヤの返事にディペットとダンブルドアは同時に頷いた。



(幸せな未来に向かって)