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1年の終わり [ 37/38 ]



時が過ぎるのは早いもので、6月に入り、ホグワーツは期末試験を迎えた。

結果から言うと可もなく不可もない出来。
元々の魔力が強いせいもあってか、杖を使う教科に関しては割と良かった…と思う。

問題だったのは羽ペンを使う教科で、セブルスやリリー、たまにリーマスにもたくさん教えてもらったおかげでなんとか全問埋めることができた。魔法薬学は…うん、あまり覚えてない。


「…もうすぐ1年経つのかー」


気になる薬草があるというセブルスに散歩がてらついてきたわたしは、湖の水面を見つめて呟いた。

片手に本を広げながら見ていた地面の植物から目を離し、セブルスはわたしを見上げる。
深く黒い綺麗な瞳に見つめられて、不意にドキッと胸が鳴った気がした。

なんだろう…最近セブルスと一緒にいると今みたいになることが多いんだよね。顔も熱い。


「夏の休暇はどうするんだ?」
「へっ、」
「どうした。…おい、顔が赤いぞ」


熱でもあるんじゃないか、と素早く立ち上がったセブルスが手の甲でわたしの頬にそっと触れた。

ああ、まずい。なにこれ。
ドキドキし過ぎて死んじゃうかもしれない…!


「せ、セブルス…っ」
「…ッ、すまない!」


バッと手を離したセブルスの顔も真っ赤。
今は6月だしもうすぐ初夏だし、寒いからとかじゃない。きっと。

わたしはむず痒くなる感情に戸惑いながら大きく息を吐いて、地面に座り込んだ。


「アルバスがね、夏の休暇はさすがにホグワーツに残すことはできないって」
「…日本に帰るのか?」
「まさか!そんなの絶対嫌。だからわたし、夏休みの間は漏れ鍋ってところに滞在することにした。まあアルバスがそうしなさいって言ったんだけどね」


その時、アルバスといくつか約束事をした。

1つ目は、魔法を使わないこと。
もし万が一に使わなければならなくなっても必ず杖を使うこと。

2つ目は、どこかへ出かけるときは必ずアルバスに連絡をすること。
漏れ鍋のトムさんって人に頼めばフクロウ便を出してくれるらしい。

3つ目は、怪しい人についていかないこと。黒には要注意。


「要するに、大人しくしてろってことか」
「そういうことだよね。でも、リリーが家に遊びにこないかって誘ってくれたんだけどそれはもう許可もらってるんだー」


楽しみ過ぎて顔がにやける。
何度も何度も思うけど、本当にホグワーツにきて良かった。


「…僕の、」
「ん?」
「僕のところには、来ないのか」

「…え、いいの!?」


セブルスはプイッと顔を背けながらもコクリと頷くのが見える。

心の奥から湧き上がってくる暖かい感情が胸いっぱいに広がっていく。
今すぐにでも踊り出してしまわないかと思うほどに、今のわたしは有頂天になっていた。

だってまさかセブルスまで誘ってくれるなんて思ってなかったし、夏休みの間会えないのはちょっと寂しいなあとも思ってたけど仕方ないって諦めてたし。


「セブルスありがとうー!早速アルバスに許可もらいにいこう!」
「ー…ああ」


僅かに頬を緩めて、わたしが強引に繋いだ手をキュッと優しく握り返してくれたセブルス。

また来年も、ううん、来年だけじゃなくてこれからもできるだけずっと…一緒に過ごせたらいいな。



(出逢いの年)


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