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愛を伝える日(レギュラス視点) [ 33/38 ]




「スズネ先輩、イースター休暇の時に僕の家のパーティーに招待したいのですがいかがでしょう?」


色とりどりのマカロンを食べながらそう尋ねると、さっき紅茶で火傷した舌がまだ痛いのか舌足らずで「ぱーてぃー?」と呟いて首を傾げたスズネ先輩。

可愛すぎませんか?
思わず悶えそうになるのをなんとか堪えてスズネ先輩から視線を外せば隣のセブルス先輩と目が合う。

いつものことだがその眉間には深い皺が刻まれていて、スズネと一緒のこの時間くらい皺を引っ込められないものかと呆れた。


「パーティーかあ…」
「…ブラック家のパーティーといえば他の名家も集まる厳粛なものだろう。行っても楽しめないと思うが、」
「父と母が是非ともスズネ先輩に会ってみたいそうなんです」


クリスマス休暇中。
実家の自室で本を読み耽るというつまらない時間を過ごしていた時に、僕宛に飛んできたフクロウ便。

それは珍し過ぎることに、兄であるシリウス・ブラックからで。
不審に思いながらもその封筒を開けた中には…。

なんとサンタ帽をかぶって唇をほんのり赤色に染めた、普段のスズネ先輩より格段に女性らしく変化した彼女が幸せそうに微笑みながら食事を頬張る写真が入っていた。

言わずもがな、悶えた。
クリーチャーが「ぼっちゃま…」とか呟いて僕を見ているのなんて気にせず。

まあ、そんなスズネ先輩を生で見ることのできた兄さんには当然のこと殺意は芽生えたけれど写真をくれたことには非常に感謝してる。


「(くそブラックが)はあ…それとパーティーの何が関係してるんだ」
「僕が毎日のようにスズネ先輩の写真を眺めているのが両親に見つかってしまいまして…。両親もスズネ先輩の美しさと可愛さにやられてしまったのか、会いたいからパーティーに誘ってこいとの命を受けました」


スズネ先輩の写真は今も僕のカバンに大事にしまってありますよ、と言えばセブルス先輩はフンと鼻で笑ってきた。

そうだった。この人、クリスマス休暇中にホグワーツに戻って兄さんと同じくあのスズネ先輩を生で見た1人だったのを忘れてた。

だからそんな余裕な表情を…。
くっ、なんて羨ましいんですか…!

悔しいので、近いうちにくるバレンタインの日にでもスズネ先輩にはもっと可愛らしい格好をしてもらう計画でも立てようかな。


「パーティ―とか、わたし今まで1回も行ったことないけど大丈夫?」
「問題ないですよ。僕がしっかりエスコートしますから」


そう言うと、スズネ先輩は小さく微笑んで「レギュラスが一緒なら心強いねー」と十分冷めたであろう紅茶にフーと息をかけていた。

…本当に、スズネ先輩はズルい。

そもそもなぜ僕がこれほどまでにスズネ先輩が好きかと言われれば、明確な理由が出てこないのが正直なところ。

一瞬のことだった。
鋭く、どことなく寂しさを感じさせるような赤い瞳。
ふと柔らかく暖かさを感じさせるような赤い瞳。

ほぼ一目惚れに近い感情で、僕の心はスズネ先輩に囚われてしまった。

それからスズネ先輩とよく話すようになり、一緒に過ごしていくうちに好きの気持ちがどんどん深くなるばかりで。
その『好き』がどんな『好き』なのかは僕にはまだ分からないけれど…とにかく僕にとってスズネ先輩は大切で大好きな人なことに変わりはない。


「アルバスが許可くれたら行ってみようかな。パーティー」
「本当ですか?両親にも伝えておきます!」
「のわっ!ッおい、レギュラス!いきなり立ち上がるから僕の服に紅茶がかかっただろう…っ」


うるさい人だなあ…いちいち大きな声出して。
そのくらいの勢いであの悪戯仕掛人とやらにも立ち向かえばいいのに。

セブルス先輩は自分の服にスコージファイをしてから、大きな溜め息をひとつ吐いた。


「スズネ、もうすぐバレンタインだが…対策はしているのか?」
「対策?」


セブルス先輩の言う対策とは、スズネ先輩の周りに集る彼女の取り巻きのことだろう。
本人はあまり意識していないようだけど、彼女のファンは男女問わずけっこうな過激派らしい。

バレンタインなんてこようものなら、朝から揉みくちゃにされるスズネ先輩が容易に想像できる。

確かに、セブルス先輩の言うように対策は考えなきゃならない。
愛しのスズネ先輩をお守りしなければ。


「僕に良い考えがあります」


どうせ碌でもないことだろう、と言うようなセブルス先輩の訝しげな視線を無視して僕はクスリと笑ってスズネ先輩へマカロンをあーんする。

頭の上にハテナを飛ばしながらも口を開けるスズネ先輩は、相も変わらず可愛らしかった。



(とにかく大好きです、スズネ先輩)


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