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クリスマスの終わり [ 30/38 ]



たくさん届いていたクリスマスプレゼントの半分以上が、知らない人からのものだったようだ。
時折、ぎゃあ!とシリウスから上がる悲鳴を聞きながら安全圏であるプレゼントを見下ろした。


「アルバス、ミネルバ…リリー、セブルス、レギュラス」


自惚れではないけれど、プレゼントくるかなあと淡く期待していた人達からは可愛らしい包装の贈り物が届いている。

差出人が『悪戯仕掛人』と書かれた怪しげな箱もあり、チラッとシリウスとリーマスを見やれば思い切り目を逸らされた。
…これ開けるの最後にしよう。

プレゼントと一緒に添えられていた手紙を読もうと手に取ったところで、リーマスに肩を叩かれた。


「スズネ、これ」
「ん?わ、素敵な鏡だね」
「そうじゃない、ここ!よく見て」
「…んん?」


彼が指差すのは、鏡の縁のちょうど小さなガラス玉が埋め込まれている所。
わたしがよく目を凝らしてそこを覗き込んでみると、ガラス玉の奥に更に小さい黒い何かが小刻みに動いているのが見えた。


「これ、なに?」
「カメラだ。多分」
「…か、カメラ?」
「うん。こんなに小さいのは見たことないけど、このレンズみたいなのがカメラに付いているのを見たことがある」


これの贈り主は何のために鏡にカメラなんか仕掛けたんだろう?
わたしがジーッとカメラであろうものを見つめていたら、ヒョイッと目の前から鏡が消えた。


「相当おまえにお熱な奴の仕業だろ、こんなストーカー紛いなことすんのは」
「ストーカー?」
「はあ…いいか?これをこのままこの部屋に置いといてみろ。おまえの部屋での様子は全部これを通して監視されることになるんだぞ」
「…それはヤバい」
「ああ、ヤバいんだ。自覚しろ」


大きな溜め息を吐いたシリウスは摘まみあげた鏡のレンズがついた部分に杖先をつけて、『レダクト』と唱える。

そういえばけっこう前にリリーに、わたしの写真が出回ってる的なことを言われたことを思い出した。
今回のこういったプレゼントも、そのファンクラブのせいなのだろうか。
好意を向けられることは決して嫌なことではないけれど…これは、どうかと思う。さすがに。

顔を引き攣らせながら、今度こそ!と手紙に手を掛けたところで一際大きなシリウスの悲鳴に邪魔された。


「―…スズネは人気な反面、おまえのこと気に食わない奴もけっこういるみてえだな」


米神をヒクつかせながらそう言うシリウスの髪は、おじいちゃんみたいに真っ白に染まっていた。




***


『メリークリスマス、スズネ!

ホグワーツでのクリスマスを楽しんでいるかしら?
私は、家族と久しぶりに過ごすのも楽しいのだけれど…やっぱりスズネとも一緒にクリスマスを楽しみたかった気持ちがすごく強いわ。来年はホグワーツに残ってもいいかどうか両親に相談してみるつもりよ!

あ!クリスマスプレゼントだけど、自分の知ってる人からの物以外開けたらダメよ。むしろそれは捨てたって構わないわ。
もし良心が痛むなら私が戻ったら、すべて燃やしてあげるわね。

じゃあ、スズネ良いクリスマスを! リリー』


『スズネ先輩、メリークリスマス。

先輩が寒さと寂しさに身を震わせているかと思うと、今すぐにでもホグワーツへ戻りたくて仕方がありません。
しかし僕の兄が凡愚な以上、僕がしっかりしなければブラック家の面目が立たないとのことでお家関係のことは滞りなくこなさなければならないのです…。

ああ、スズネ先輩の可愛らしいお顔を見て早く癒されたい。
ホグワーツに僕が残ることはできないでしょうから、来年は先輩を僕の家へお呼びできるか相談してみようと思います。

では、スズネ先輩また会える日を心待ちにしています。 レギュラス』


まずこの2枚を読んでみて思ったのは、本当にこの2人は言うことが似てて面白いってこと。
リーマスとシリウスのいなくなった自室には、わたしの小さな笑いが響いていた。

リリーがくれたのは鮮やかな赤色のリップグロス。
男に見えると言われるくらいの容姿のわたしに果たして似合うのか不安だけど、せっかくリリーがくれたのだし今度彼女に会う時につけていってみよう。

レギュラスからは黒レースに小さな白い真珠が揺れるチョーカーだった。
わー、なんだかすごく高そうだけどすごくかっこよくて素敵。

早速、割と重みのあるそれを首につけてから次にセブルスからのプレゼントへと手を伸ばした。

『メリークリスマス。勉強が捗るように。S.S』とだけ書いてあるカードに目を通して中身を見てみる。
羽が七色に輝いている羽ペン(なんか良い匂いがする)と、小さな箱に入った薔薇の花と茨を象った小振りのイヤーカフだ。


「わあ、かわいい…」


薔薇だけ赤く染色され、茨は銀で出来ていた。
箱から取り出して手に乗せるとその小ささを改めて実感する。

これで勉強が捗るようにってどういうことなんだろうなあ。
羽ペンは分かるけど何の変哲もないイヤーカフにしか見えない。

付けてみよう、と右耳を晒してイヤーカフをカチリと耳にはめ込んだ。


「ん、なるほど…!」


イヤーカフをつけた耳からはゆったりとしたオルゴール音が静かに聴こえてきた。
知らない曲だけれど、その曲調と音色にうっとりと癒される。

これ羽ペンのアロマと組み合わさったら最強の安眠促進になるかもしれない。
ごめんセブルス、わたしだと勉強よりも居眠りが捗ってしまいそう。

もらったものをテーブルの上に並べて見ていたら、嬉しいやら何やらで感極まって少しだけ涙が出た。



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