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休暇スタート(ヒロイン視点) [ 25/38 ]



クリスマス休暇がやってくる。
悲しいことにセブルスとリリーは一度家に帰るということで、わたしはホグワーツ居残り組だ。(日本になんて絶対帰りたくない)


「ああ、スズネ!私ほんとは貴女の傍にいたくて堪らないのよ?でも…やっぱり家族との時間も大切にしなきゃいけないし。…もう!セブも残るんだったら私もこんなに心配にならずに済むのに!」
「むぐっ…!」


ホグワーツ特急に乗る前のリリーとセブルスに会いに来ると、リリーは勢いよく捲し立ててわたしを思い切り抱き締めてきた。

可憐な女性であるリリーのどこにこんな力があるのかと思うほどに、彼女の腕はギュウギュウとわたしの身体を締め付ける。
セブルス、見てないで止めて。死んじゃう。


「…僕も一度は顔を出せと言われている。まあ、なるべく早く戻ってくるつもりではいるが」


解放されたわたしの背中をセブルスがぎこちなく撫でてくれていると、ホグワーツ特急の汽笛が鳴った。

そういえばホグワーツの列車って初めて見たけど、真っ赤でカッコイイんだ。
ほお、と列車を眺めているとリリーが名残惜しそうにわたしにもう一度ギュッと抱き着いて、にこりと笑う。


「必ず手紙を送るから、ちゃんと返事ちょうだいね。何かあったらすぐに報告するのよ?」
「…うん、分かった」


お母さんと呼ばれる人を見たこともないしもちろん話したこともないけれど、きっと今のリリーみたいに優しくてこうして包み込んでくれるような暖かい存在なのかもしれない。

わたしも微笑んで抱き着き返すと、リリーは顔を赤くして列車へと乗り込んでいった。


「………」
「…なんだその手は」
「セブルスもするかなって思って」
「…っするわけないだろう」


まだ列車に乗らないセブルスに両手を差し出してみたら、ハグはしてこなかったけれど頭にポンと手を乗っけられる。

その心地良さに思わず目を細めていると、セブルスの手が一瞬で離れていった。


「あ、セブルス先輩なにしてるんですか?もう列車出ますよ」
「…っレギュラス!いきなり何をするんだ!」


どうやらレギュラスがセブルスに思い切り体当たりをしたらしい。
セブルスは地面に尻餅をついていて、ペロリと舌を出しているレギュラスに怒鳴った。


「レギュラスも帰るんだね」
「はい、両親がそのようにと。本当なら邪魔者がいなくなるこの休暇中、スズネ先輩を独占できる絶好のチャンスを逃したくはなかったのですが…こればかりは僕のワガママが通りませんでした」


わー、リリーと同じようなこと言ってる。
わたしが苦笑すると、いつの間にか立ち上がったセブルスが隣で大きな溜め息を吐いていた。

何でわたしをここまで慕ってくれているのかはよく分からないけれど、スリザリンではセブルスの次くらいに親しいと言ってもおかしくないレギュラスからの好意は純粋に嬉しかったりする。


「じゃあ2人ともまた休暇明けにね」


そしてセブルスとレギュラスもホグワーツ特急に乗り込んだのを確認して、わたしは背を向けた。




***



休暇1日目の朝。
朝ご飯を食べに大広間へ行くと、スリザリンテーブルには誰1人として姿はなく他のテーブルも生徒が数人まばらにいるだけだった。

うーん、さすがにあの長くて大きなテーブルで1人食事をするのも気が引ける。というか普通に寂しい。
大広間の入り口で云々唸っていると、ポンと後ろから肩を叩かれた。


「や。ユキシロ」
「…ル、ルーピン」


わたしが初めて泣かせてしまったかもしれない人、リーマス・ルーピンがそこに立っていた。

どうしよう、彼は普通みたいだけど…この間のこと気にしてないのかな。
どう接したらいいかと悩んでいると、ルーピンは「あー…」と間延びした声を出して頬をかいていた。


「この間のことは、気にしないで。…ちょうど目にゴミが入って、あまりの痛さに涙が出てさ。ほら、僕も男だし女の子にそんなかっこ悪いところ見られたくないから…」


それで逃げ出しちゃったんだよね、と苦笑しているルーピンに感じる違和感が拭えない。
腑に落ちてはいないけど、彼が誤魔化そうとしてるなら誤魔化されてあげようと思った。


「ルーピンも居残り組なんだ」
「うん。去年は帰ったから今年はいいかなってね」

「おまえら、入り口に突っ立ってると邪魔だぞ」


急に背後から聞こえた低い声にビックリして小さく肩を跳ねさせれば、寝起きで機嫌が悪いのかものすごく不機嫌そうなシリウス・ブラックがいた。

あの4人の中で、わたしが一番苦手とする人物だ。
そもそもこの横柄な態度とキツイ口調、そして人を見下すような視線がどうにも好きになれない。

ホグズミードの件の時はそこまで思わなかったけれど、彼らが誰かと何か言い合ってたりするのは何回か見たことがあるがブラックの捻くれ度合はけっこうなものだ。


「…よお」
「どうも」
「スリザリンではおまえだけなんだな、居残り」
「そうみたい。ブラックも残ってるなんて思わなかった」


弟であるレギュラスが家に帰るのなら、兄である彼も必然的に帰るものだと思っていた。

わたしの言葉にあからさまに顔を顰めたブラックは、盛大な舌打ちをかまして鬱陶しそうに髪をかきあげる。
どこかで小さく悲鳴が聞こえた気がした。


「ブラックって呼ぶなよ」
「どうして?」
「レギュラスと被るだろ」
「わたしはレギュラスを名前で呼んでるから、ブラックと区別は付けられると思うけど」
「…ッ名字が嫌いなんだよ!」


バウ!とまるで大型犬が威嚇するかのように吠えられて、わたしはルーピンの背中にサッと隠れる。

どういう理由か知らないけど、名字で呼ばれるのが相当嫌らしい。
まあいくら好きではない人でも人が嫌がることはしてはいけない、よね。

心の中で名前で次からは呼ぼうと決めたのと同時に、ルーピンが小さく息を吐いた。


「とりあえず、席に座ろう。ユキシロもこっちで食事したら?」
「あ、えっとー…」
「シリウスも構わないよね?」
「…別に、好きにすればいい」


プイッと顔を逸らしてグリフィンドールテーブルへ向かった彼に肩を竦めたルーピンと目が合う。


「ごめんよ。シリウスの家ってすごい大きな名家だから、彼も色々複雑らしいんだ」
「…そっか。いや、わたしも悪かったから」


思ったより小さくなってしまった声でそう言い、それからルーピンに促されてグリフィンドールのテーブルへと着席した。

セブルスに嫌がらせとかして色々ちょっかいかけてる人達だけど、根は悪くない人達ってことはもう分かってる。
このクリスマス休暇中、1人で過ごすのも味気ないし彼らとはできるだけ良い関係でいたいとは思うから。

とりあえずは後できちんと謝ろう、と目の前で大きなチキンに齧りついている彼を一瞥してわたしも食事に手を伸ばした。


(歩み寄る方法は)


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