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大切に思うこと [ 22/38 ]



―…11月中旬。
スリザリン対グリフィンドールのクイディッチもスリザリンの勝利に無事終わり、2寮の対立も幾分か落ち着いてきた頃。

夕食時、スリザリンテーブルにはクイディッチの試合の内容を伝えようと身振り手振りで一生懸命に説明するスズネと、それを聞きながらウンウンと浅く頷くセブルスの姿があった。


「そこで、スリザリンのチェイサー?の…えっと、」
「ロジエール先輩、ですよ、スズネ先輩」
「あ、そうだ。その人!…ん?」


いきなり介入した第3社の声にスズネはキョロキョロと周りを見渡していたが、セブルスはその声の主を見つけて大きく溜め息を吐く。


「レギュラス」
「先輩の可愛らしい姿が見えたので駆けつけました。これ美味しいですよ。はい、あーん」
「え、あー…」
「美味しいですか?」
「おいひい」
「はあ…可愛いです、先輩」

「おい、イチャつくな。そしてスズネ、反射的に口を開けるな口に物を入れて喋るな」


セブルスは米神をヒクつかせながら言い放ち、もう一度大きな溜め息を吐いた。

スズネと初めて会ったあの日から、レギュラスは今のように彼女にベッタリだった。
どういう接点があってこの有様なのかとセブルスは疑問に思ってスズネに聞いたこともあったが、レギュラスとの出会いを聞いてもあそこまで懐かれている理由は見つからない。

まるで男版リリーのようだ。
頭を抱えたくなったセブルスの目にふと入ったのはレギュラスとスズネ(特にレギュラス)を不機嫌そうに見ているグリフィンドールの彼女。

そんなリリーとカチリと目が合えば、今度はセブルスにも鋭い視線が向けられた。


「観戦に来なかったセブルス先輩は知らないでしょう。『わっ』とか『あぶないっ!』とか言いながら真剣に試合を見るスズネ先輩の愛らしさを。そのせいで僕は全く観戦に集中できませんでした」
「見るものが違うだろう…」


何故か勝ち誇ったような顔をしているレギュラスの頭を軽く小突いてから、呑気に蜂蜜パイを頬張っているスズネを見て僅かに頬を緩ませた。

スズネはその容姿と性格で人を惹きつけやすく好かれやすい。
現にファンクラブなんてものが存在している時点でその人気は絶大なものだろう。

そのせいで彼女の一番の友人であるセブルスに理不尽な敵視が向けられることは日常茶飯事であったが、そこは今までの3年間あの悪戯仕掛人の嫌がらせに耐えてきた彼だ。
スズネとの友人関係を断ち切るほどのことでもない、とさして問題視はしていなかった。

疲れるし面倒なことに変わりはないが。


「セブルス大丈夫?具合悪い?」


そんなセブルスの苦悩を知ってか知らずか、スズネが心配そうに彼の顔を覗き込む。

おまえのせいだ、と言ってやりたいところだが自覚のないスズネには言うだけ無駄だろうとセブルスは何も言わずに彼女へ強烈なデコピンを喰らわした。


「…痛い」
「それで済ませてやってるんだから感謝してほしいくらいだ」
「えー、わたし何かした?」
「セブルス先輩は、今まで独占していたスズネ先輩に友達が増えて嫉妬してるんですよ」

「−…違う!」


余計なことを口走るレギュラスの頭に鉄拳を落とし、痛い痛いと涙目に悶える彼を見て鼻で笑う。

そんなセブルスのローブを引っ張ったのはスズネだ。


「心配しなくてもわたしにとってはセブルスとリリーが一番大切だし大好きだよ」


ニコリとスズネが頬を緩ませながらそう言えば、言われた本人はもちろんのことレギュラスまでピシリと固まった。

そして次の瞬間。


『キャー…!!!』


スリザリンテーブルから湧き上がった、女子たちの黄色い悲鳴。
他寮の生徒は何事かと目を見開いてスリザリンテーブルを野次馬のように凝視している。


「大好きだって!聞いた!?」
「聞こえた聞こえた!まじヤバい言われたい!」
「はあー…耳が幸せ」


生徒たちがいきなり騒ぎ出したことに、教員席に座っていたマクゴナガルはグッと眉間に皺を寄せたが、ダンブルドアは愉快そうに笑っていた。


「若いのう。儂も学生時代はよくモテたものじゃ」
「アルバス、あなたと違ってスズネは女の子なのですよ?悪い虫がつかないようにきちんと見ておいてあげなくてはなりません」


キッと威厳ある表情でスズネを見ていると、パチリと彼女と視線が合い、それに気付いたスズネはふにゃりと破顔させてマクゴナガルに向けて小さく手を振る。

マクゴナガルの表情が段々と締まりのないものに変化していくのを近くで見ていたダンブルドアは、声を上げて笑っていた。


「…スズネ先輩、大好きって男として好きってことですか?この人を?」
「人を指差すな、しかも親指で」


レギュラスの質問に、スズネはマクゴナガルに手を振るのをやめてこてんと首を傾げる。


「男としてって、セブルスは男でしょ?」
「あ、はい。それはそうなんですが…」
「セブルスがもし女の子だったとしてもわたしは好きだよ」


喜んでいいのか悪いのか。
セブルスはぎょっと目を見開いて咳き込み、レギュラスは「セブルス先輩、ずるいです」と拗ねている。

そんな風に、いつもより騒がしい夕食の時間が過ぎていったのだった。



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