親世代@ | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
魅了された弟 [ 19/38 ]




ホグズミード行事は、何も問題なく終わった。
スズネも誰かに見つかることなくホグワーツへ戻ることができたし、悪戯仕掛人の4人も然りだ。

しかし、セブルスだけは違った。


「よ、スネイプ。おまえも隅に置けないな!」
「やめときなよエイブリー。スネイプも健全な男子だし、浮ついた話のひとつもあっておかしくないだろう?」

「―…はあ」


同じスリザリン生でありセブルスと交友のある数少ない人物であるマルシベールとエイブリーに面白おかしく茶化されて、彼は至極不機嫌そうに顔を歪めている。

朝っぱらからよくもそんな下らない話で盛り上がれるものだ。
セブルスは自分を見ながらコソコソと話している、彼ら以外の人達を見てイライラを募らせていた。

それもこれも全部あいつのせいだ、とグリフィンドール席で呑気にリリーと朝食をとっているスズネを半ば八つ当たりのように睨みつける。

『スリザリンの根暗がホグズミードで金髪碧眼の美少女とデートをしていた』

噂と言えるほどの話題性はないが、少なくともセブルス・スネイプという人間を知る者からすれば十分話のネタになるものだ。


「でも意外だね。私はてっきりスネイプはユキシロにお熱だと思っていたんだけど」
「あー、いっつも一緒にいるよな。でもスネイプはあれだろ?グリフィンドールの…」
「穢れた血でしょう。許されないことだよ」
「まあな。それなら、純血かどうかは知らねえがスリザリンに入ったユキシロの方が断然いい。顔も美人だしな」


セブルスは無表情だった。
スリザリンが掲げる純血主義の思想やマグル排斥の概念にはさして興味がない上に、このような類の話はホグワーツに入学してから今まで嫌というほど聞かされてきたのだ。

賛同も否定もしない、それが一番楽だった。

本人そっちのけで話に花を咲かせ始めた2人を無視して、セブルスは席を立とうとするがそんな彼を引き留めたのは、先程とは打って変わって真剣な表情をしたマルシベールだ。


「スネイプ、君はいずれこちら側にくるべき人間だろう?マルフォイ先輩がパーティーに招待すると息巻いていたよ」
「…そうか」
「君のことは私たちも一目置いている。…共にいるなとは私は言わないけど、グリフィンドールましてや穢れた血に感化されないようにだけは注意してくれ」


彼の言うこちら側というのは、闇の陣営のことだ。
ルシウス・マルフォイがまだホグワーツに在学中だった時、自分の闇の魔術に対する知識や実力を彼に買われて卒業後は死喰い人(デスイーター)にならないかと誘われている。

まだホグワーツに入ってから3年しか経っていないが、今からあと2年も経てば進路の話も明確に決めなければいけなくなってくるだろう。


「ああ、それと。ユキシロのことだけど、君がご希望ならこちら側に誘ってみてもいいんじゃない?」
「…なに?」
「彼女、魔法薬学はダメでも呪文学はずば抜けてるだろう?実戦で役立つのは薬作りよりも相手を確実に仕留められる力だよ。父上はそう仰っていた]
「………」


セブルスが無言のまま考え込めば、満足げに口角を上げたマルシベールは再びエイブリ―との雑談を再開させた。

自分は闇の魔術に秀でている部分があり、呪詛や呪文を創り出す才がある自覚がある。
それを将来に生かさない理由もないと考えてもいた。

自分はそれでいい、だがスズネはどうなのだろうか。




「あ、セブルス!」


セブルスが大広間を出ると、扉の近くの廊下にあるベンチに腰かけていたスズネが駆け寄ってくる。

寒さで鼻と耳を赤くした彼女は、ニコリと微笑んでいつものように自分の隣を歩き出した。


「そういえば、リリー怒ってたよ。金髪の美少女の話聞いてない!って」
「…またその話か」
「なんかごめん。でもセブルスとのホグズミード、すっごく楽しかったなあ」


来年はリリーと3人で行けるよきっと。
そう言ってマフラーに顔を埋めながらはにかむスズネ。

―…やはり、彼女に闇は似合わない。

セブルスは血色の良くなった頬を僅かに緩ませたのだった。



[*prev] [next#]
top