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ホグズミード [ 16/38 ]




ホグワーツから直接繋がっていたのはホグズミード村にあるハニーデュークス店だった。

校長であるダンブルドアがこれを知らないわけがない、とスズネはこっそり苦笑する。


「シリウスとユキシロは見つかったらまずいから、とりあえずこれを被っておいて」
「ぶふっ…」


ジェームズが少し大きめの鞄から取り出したのはとても良い生地で作られたマントで、スズネは自分の頭に降ってきたそれを見る。

手に持ってみると、なんとそのマントに覆われている部分が透明になった。


「なにこれすごい」


こんな代物が存在するなんて。
スズネは改めて魔法の凄さを感じ、食い入るように透明になっている自分の手を見つめていた。


「僕の秘密道具のひとつ、透明マントさ」


フフンと自慢げに笑ったジェームズに苦笑するシリウスがスズネから透明マントを取り上げて、自分と彼女の身体をすっぽり隠す。


「…近くない?」
「ち、近寄らなきゃ全身隠せねぇだろ…」


シリウスとスズネの身体はゼロ距離。

スズネは確かにと呟いて、誰かとくっついていた方が暖が取れて良いななんて思いながら両手を擦り合わせていた。

一方のシリウスはといえば、(自慢ではないが)学校内ではとにかく女子からモテまくる自分とこれだけ密着しているのにも関わらず顔を赤くするどころか照れもしない彼女に何とも言い難い感情を抱く。

キャーキャー騒がれても鬱陶しいだけだが、こうも反応が薄いと暗に自分のことには全く興味がないと言われているような気がしてシリウスは誰にも分からない程度に小さな舌打ちをした。


「おい、足元ちゃんと見て歩けよ?」
「平気」


前を歩く他の3人の後を転ばないように追いかけて階段を降りていくと、ハニーデュークス店の中はホグワーツ生で溢れ返っていた。

棚には色とりどりで多種多様なお菓子がいっぱい並べてあり、中にはかなりヘンテコで危険そうなものもある。
スズネがマクゴナガルと初めてダイアゴン横丁へ行った時に買った百味ビーンズも大量に置いてあった。

初めて口にしたのが腐ったタマゴ味だったことを思い出してスズネは、うえっと顔を顰める。


「やべ、ジェームズ達もう外出てるな。急ぐか」


シリウスの声に急かされて、百味ビーンズの置かれている棚から目を離したスズネは小さく頷いて人でごった返している店内をやっとの思いで抜け出してジェームズ達と合流した。

外は雪がシンシンと静かに降っていて、気温もだいぶ低い。
まさか外出するなんて思っていなかったスズネの格好はセーター1枚で、こんな冬に外を出歩くには勇気がいるほどの薄着だった。

はあ、と呼吸をすれば白くなった息が宙へ消える。
寒すぎてこれ以上外にいたら凍ってしまう!とスズネは身体を温めようと、一生懸命自分の身体や足を摩っていた。


「ユキシロ!ほら、これ貸してあげるから」


そんなスズネの様子に気付いたのはリーマスで、身体を小刻みに震わせて、髪が短いせいで冷たい空気に晒されている彼女の両耳は真っ赤だ。
リーマスは慌てて、自分の耳当てとマフラーをスズネへと差し出した。

今のままでこの寒さに耐えられるわけがない、とスズネは素直にそれらを受け取ってそれでも温まらない身体をギュッと抱き締めた。


「あ、ありがとう…っ」


本日2回目のスズネの微笑みに、リーマスはグッと心臓を鷲掴みにされたような感覚がして徐々に熱が集まっていく頬に困惑する。

こんなに綺麗に笑う彼女を「女には見えない。男だと思える」と言ったシリウスの目はよっぽど節穴のようだ。
そこまで思ってリーマスは自分をニヤニヤと見るジェームズの視線に気が付き、居心地悪そうに頬をかいた。


「ユキシロ、ここからは別行動だ。耳当てとマフラーがあってもその格好で外を歩くのはお勧めできないから、どこかの店に入って大人しくしてた方がいいね」


透明マントは君に貸しておくから、とジェームズが眼鏡に乗った雪をローブで拭いながら言えば何となく別行動になることを予想していたスズネは何も言わずに頷く。

それにこの寒さだ、彼の言うように外にはいたくない。
スズネはリーマスから借りたマフラーを鼻の位置まで上げた。


「今から2時間後にこの場所に集合しよう。それでまたあの抜け道からホグワーツへ戻る」
「分かった。…ブラックは透明マントなくて大丈夫なの?」
「まあ大丈夫だろ。こんだけ人が多けりゃ多少変装すれば教師にバレることはまずないと思うしな」


ニヤリと口角を上げたシリウスが肩にかかった髪をひとつに纏めて、どこからか取り出したニット帽に髪を隠す。

顔立ちの良い人はどんな格好をしても似合うものだなあ、とスズネは感心したようにシリウスを見いていた。


「これ、やるよ」
「なにこれ?」
「ミラージュキャンディ。ジェームズ発案の試作品だ」
「ミラージュキャンディ?」
「それは確か、金髪碧眼だったな」


シリウスがポケットから取り出したのは七色に輝く小さな飴玉で、それをスズネの手にポイと乗せる。

その様子を見ていたジェームズがニヤリと笑った。


「ユキシロ、それ試作品だから使うか使わないかは任せるけど使ったら報告よろしくね」
「失敗しても自己責任で頼むぜ」
「もし見つかったら、僕たちに無理やり連れてこられたって言っちゃっていいから」
「え、そしたら僕たちが怒られちゃうんじゃ…っ」


そしてジェームズ、シリウス、リーマス、ピーターの4人はそれぞれ言い放って喧騒の中へと消えていく。

スズネは手の平に転がる飴玉をジーンズのポケットにしまった。
ホグズミードへ来れたのはいいけど…彼らに乗せられて勢いでついていきてしまったけど、あと2時間もどうしたらいいんだろうか。


「さむっ」


ヒュオと風が吹くと、容赦ない冷気が身体を突き刺してくる。
とりあえずどこかのお店に入って身体を温めるのが最優先だ。

ハニーデュークスは人が多すぎて落ち着いていられないし、と周りを見渡せば近くにあったのは『三本の箒』という店。
どんな店かは分からないが、人の出入りはそこまで多くなさそうだった。


「行ってみよう」


あわよくばセブルスやリリーを見つけられたらいい。
きっと彼らは自分がここにいることを咎めはしても、先生に告げ口をするなんてことはしないだろうし。

雪に足を取られながら、スズネはその店へと歩を進めたのだった。



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