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国境を越えて [ 1/38 ]


ホグワーツ魔法魔術学校の校長室にて。

校長であるアルバス・ダンブルドアは、腕組みをしてムスッと頬を膨らましている目の前の少女を興味深そうに見つめていた。


「ダンブルドア、後はよろしくお願いします」
「お安い御用じゃ」
「ほら、おまえも挨拶なさい」


日本の魔法学校の校長である女性にポンと背中を押されると、少女はキッと彼女を睨みつける。


「…スズネ・ユキシロ」


パリンと部屋の中の何かが割れる音が響いた。

ふむ、とダンブルドアは自慢の髭を撫ぜる。
ある程度の魔力コントロールはできているが、少女に備わる魔力が膨大で少々厄介なことになっているようだ。

まだ13歳の彼女からはその魔力が漏れている。


「…恐ろしい子。では私はこれで」


大袈裟に手で口を覆った女性は、煙突飛行で緑色の炎と共に姿を消した。

残されたのはダンブルドアと少女。
ダンブルドアはニコリと笑う。


「あの女性は校長には向いておらんのう」
「…わたしもそう思ってた」


2年間ずーっとね、と少女は小さく息を吐くと
短く切られた漆黒の髪をくしゃくしゃとかき回した。


「離れられて清々してる。きっとあいつも」


少女が先程女性が消えた暖炉をチラリと一瞥すれば、暖炉の炎が一瞬すさまじく燃え上がりすぐに鎮火する。

この少女を今日初めて見たときから懸念していることがある。

それは少女が、かつて自分が孤児院からホグワーツへ入学させ今や闇陣営の中心に身を置く紅い瞳の彼に非常によく似ていたからだ。

両親は事故で亡くしており、いない。
強力な魔力を持つためにコントロールできない頃はよく周りの人に怪我させてしまうことも。

それ故に周囲からひどく恐れられる存在となってしまった。
日本の魔法学校に入学してからも、それは変わらなかったという。

今度こそは、道を違えさせてはならない。
ダンブルドアはアイスブルーの瞳に決意を表して、まずは…と少女に自慢の紅茶をご馳走したのだった。





■■■


あーあ、めんどくさい。
スズネは大きく欠伸をしながらベッドへ寝転がった。

やっとあの場所から解放させると思いきや、連れてこられたのはまた新しい場所。
魔力があるからって魔法学校に通わなくてはいけない決まりでもあるのか、と大きく溜め息を吐いた。

元々あんな学校に7年も収容される気は更々なかったし、タイミングを見計らって退学沙汰の事件でも起こしてやろうと思って迎えるはずの3年目。

まさか転校させられるとは思ってもみなかった。
着ていたローブを床に放り投げて小さく舌打ちをする。

言葉が通じないのは不便だろうとホグワーツの校長のダンブルドアが、つけていれば翻訳魔法が自動的にかかる指輪をくれた。

実際、彼との初対面の時はダンブルドアとバカ女校長が一体何を話しているか理解できなかったのもありこれは普通にありがたい。


「はぁー…魔力なんてなくなればいいのに」


こんなもの無ければ、今頃普通の学校に普通に通って普通の人生を送っていただろうに。

また大きく溜め息を吐いたスズネは、自分の目と同じ真っ赤な石の付いた指輪を眺めてそのまま瞼を閉じた。


(新しい校長の瞳は優しかった)


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