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感情と魔力 [ 9/38 ]




「こっちはこんなに振るんだね」


手の平に雪の結晶を乗せて綺麗に微笑むスズネの呟きに、セブルスの読書する手が止まった。
白い雪が舞う中に佇む彼女は、あれほどまでに周りが騒ぎ立てるに相応しい容姿の持ち主であるということを改めて認識させられる。

全く自分とは正反対で、最初は一緒にいるのが苦痛に感じて突き放すこともあったがスズネは何故か自分と仲良くなりたがった。
そんな彼女の考えていることはよく分からないが、ハロウィーンのあの日、彼女へと伝えた気持ちに嘘はない。

リリーに抱く感情とはまた違う、この暖かくむず痒くなるような感情は一体何なのだろうか。
ボスンとスズネが地面の雪に足を取られて転んだ音で思考が途切れ、このまま考えていても答えは出ないだろうとセブルスは小さく息を吐いた。


「リリーまだかなあ」
「彼女はあの性格だから友人が多い。仕方ないだろう」
「…リリー優しいし美人さんだしね。わたしだけの友達ってわけでもないけど、ちょっと寂しいかも」


日本ではずっと1人でいたのに、今友達が1人いないだけでちょっとした寂しさを感じてしまうのはきっとこっちへ来て人の暖かさに触れたからだ。

ホグワーツでも変わらず1人過ごしていれば寂しさなんて感じることもなかったけれど、仲の良い友人や家族のように接してくれるアルバスたちと出会わなければこんな幸せがあることを知ることもなかったと思う。

スズネはスリザリンカラーのマフラーを口まで上げて、にやけてしまいそうになる顔をセブルスに見られないよう隠した。


「そういえば、この間スラグホーン先生に居残りさせられた時のことなんだけど」


ベンチに座るセブルスの隣に腰かけたスズネが他愛もない話をし出す。
セブルスは彼女の話に耳をきちんと傾けながら、読書を再開させた。



しばらくそうしていたが、ふいに肩に乗っかる小さな重みに気付いたセブルスは本にしおりを挟んで首を少し横に動かす。


「すぅ……」


いつの間にか眠りこけていたスズネの顔が案外近くにあって、セブルスは驚いて身体を揺らしたがあまり騒ぐと起こしてしまうと思いなんとか留まった。

伏せられた瞼にのせられた長く細い睫毛。
微かに開いた唇と漏れる寝息。
どうしようもなく胸が高鳴って、雪が降っていて寒いはずなのに身体はカーッと熱を持っていく。


「スズネ…、」


セブルスの手がゆっくりと伸びて、スズネの睫毛に舞い降りた白の結晶を指で撫でればふるりと彼女の瞼が震えた。


「ん、セブ…?」


瞼が持ち上がり、スズネの印象的な紅い瞳が現れる。
それと同じくらい顔を赤くして固まっているセブルスに首を傾げながら、スズネは大きく伸びをした。


「セブルス、顔赤くなってる。寒いし中入ろうか」
「…っああ」


風邪でもひいたら大変だ、と心配そうにスズネはセブルスを見るが短い返事と共に顔を逸らされてしまう。
けっこうな時間こんな寒いところにいて機嫌が悪いのかもしれない。

降り積もる雪に興奮したスズネが中庭で暇潰ししようとセブルスを誘ったのがそもそもだ。
ごめんセブルス、と小さく謝ると「何がだ?」と返してくる彼はやっぱり優しい人だなとスズネは笑った。

その時だ。


「おや?パッドフット、あんなところにスニベリーを発見したよ」


城の中に入ろうとベンチから立ち上がる2人の耳に聞こえてきたのは陽気な声。

自分にとってこの世で一番嫌いな人物の声であることがすぐに分かったセブルスは、紅潮していた頬をサッと青くさせる。

そんな彼の表情の変わりようを見たスズネは、目の前のグリフィンドール生4人を警戒するように睨みつけた。
彼らは確かいつか医務室で遭遇した、自らを「悪戯仕掛人」と称していた人たちだ。

愉快そうに笑みを浮かべるジェームズとシリウスのその表情が、初対面の時には感じなかったのに今のスズネにはひどく歪んで見えた。


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