親世代@ | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
悪戯仕掛人 [ 6/38 ]



雪城鈴音という人間は何も変わったところはないはずなのに、周りの環境が変わるとこうも扱いが変わるなんて。

医務室でマダム・ポンフリーの手伝いをしながらスズネはぼんやりと考えていた。

初めは避けられていると感じていたが、最近は声をかけてくれる人も増えたし何よりセブルスとリリーの存在がホグワーツでの生活をより良いものにさせてくれている。
彼女にとって初めての友達である彼らは元々幼馴染のようで、時間が合うときは3人で過ごすことも。

本当に、最初こそ不本意で面倒だったけど…日本から離れてホグワーツへ来れて良かったと改めて自分を受け入れてくれたアルバスに感謝している。


「マダム、なんでこんなに薬貯めこんでるの?」
「もうすぐハロウィンですからね。羽目を外し過ぎた生徒たちが毎年医務室に駆け込んでくるせいですよ」


まったく!とマダムがプリプリ怒り出すと、スズネは「うわ、鬼の形相だ。こわ」と呟いてカラカラ笑い、そんな彼女にマダムが文句の1つや2つ口にした時だ。


「あはは!シリウス、君ともあろう人が油断したね」
「うるせえ!元はと言えばお前が手を滑らせたのが原因だろジェームズ!」
「ご、ごめんシリウス。僕が大人しく実験台になれば…っ」
「それもおかしな話でしょ。ピーターを身代りにしようとした彼の自業自得だよ」
「チッ、リーマスまでんなこと言いやがってよ…」


騒々しく医務室に入ってきた4人の男子生徒。
静かに入ってきなさいとマダムが一喝すれば、不満げに歪められた顔が2つほど。

ネクタイの色からしてグリフィンドール生だということが分かると、スズネは無意識のうちに身体を強張らせた。

スリザリンとグリフィンドールは昔から仲が悪いらしく、スリザリン生はグリフィンドール生を気に入らないし逆も然りというホグワーツならではの風潮に彼女も強制的に巻き込まれているからに他ならない。

事実、セブルスと行動を共にしている時に誰がやったかは知らないが何度か悪戯をされかけたことがあった。
その犯人が何故グリフィンドール生だと言えるのかは、セブルスがグリフィンドールのバカどもの仕業だろうと彼女の疑問にそう答えたからだ。

あの4人が帰るまで待つよりは、自分が先に医務室から立ち去った方が早そう。
そう考えたスズネはなるべく平然を装いながら彼らの前へ出た。


「マダム、わたしもう行くよ。また何か手伝うことがあればいつでも呼んで」
「ええ、ありがとうスズネ!助かりました」

「スズネ!?スズネ・ユキシロじゃないか…!」


やっぱり見逃してはくれなかったか、と心の中で舌打ちをする。
名前を呼ばれた反射と、話しかけられてしまった以上は無視することはできないと彼女の日本人精神のせいでピタリと足を止めてしまった。

スズネを呼んだのは、クルクル癖毛で眼鏡をかけた青年。
よくリリーにつきまとっている所を何回か見たことがある。


「へえ、近くでみると本当に綺麗な顔してる」
「けっ。そのくらいの顔面、探せばいくらでもいるだろ」


眼鏡の奥のブルーの瞳に見つめられてたじろいでいれば、機嫌の悪そうな低い声がその言葉を一蹴した。
そんな声の主は肩まで伸びた黒い髪、そして高身長で端正な顔立ちをした青年。


「あー気にしないで。女の子の君が自分より人気があるからって僻んでるんだよシリウスは」
「そんなんじゃねえ…!」


まるで犬が吠えるように声を荒げて否定する彼は、案の定それより大きなマダムのお叱りを受けて盛大な舌打ちをかましていた。

何のために引き留められたんだろう。
きっと図書館でいつものように本の虫になってるであろうセブルスと早いところ合流したいのに。


「ユキシロってよくスニベルスと一緒にいるよね。僕たちとしては君があいつから離れてくれるとやりやすいんだけどなぁ、色々と」
「ジェームズ、」


ニヤリと悪そうに笑う彼の名前を咎めるように呼んだのは、顔に所々傷跡のある鷲色の髪をした青年だった。

スニベルスって誰?
いつも一緒に行動してるのはセブルスかリリーくらいだ。
この人はそのどちらかをスニベルスというあだ名で呼んでいるということなのかな。

頭を捻り出したスズネなんてお構いなしに、眼鏡の青年はまた口を開く。


「僕はグリフィンドール3年のジェームズ・ポッター!こっちはシリウス・ブラックで、そっちがリーマス・ルーピン。あっちはピーター・ペティグリュー」


僕たち4人は悪戯仕掛人さ!と自信満々に胸を張るジェームズ。

そんな彼にどう反応するのが正解なのか考えた末、スズネはおずおずと小さな拍手をパチパチと鳴らした。

そんな彼女の反応が以外だったのか彼らは目を見開く。
仮にもスリザリン生であるスズネが、グリフィンドール生である自分たちを邪険にもしなければバカにすることもない様子に驚いたのだ。

その時、もうすぐで授業開始の合図であるチャイムが鳴る。


「あ、行かないと。…悪戯って嫌いじゃないけど程々にした方がいいよ」


そう言って薄く微笑んだスズネは医務室を足早に去って行った。


「はー…目の保養だなあ。リリーの次にね」
「…おまえはほんとそればっかりだな」


彼女のいなくなった医務室で、ジェームズは少しだけ頬を紅潮させて呟けばシリウスが呆れたように息を吐いた。


「シリウスは彼女のこと綺麗だと思わないのかい?」
「…別に。男と思って見れば何とも思わねえ」


女性である彼女に対して失礼な発言をしたシリウスに、質問を投げかけたリーマスは「彼女の前では言わないようにね」とだけ釘をさす。


「それにスリザリン生だし何よりスニベルスなんかと仲良いってのが気に入らねえ」


低く唸るように言う彼を見て、ジェームズとリーマスは顔を見合わせてヤレヤレと肩を竦めたのだった。


(彼女はまだ知らない)


[*prev] [next#]
top