闇への誘い [ 36/38 ]
パーティーと手紙のことをアルバスに話したら珍しく顔を真剣にさせて『ダメじゃ』とそれだけ言われた。(ちなみに手紙はフォークスに燃やさせてた)
そして、わたしがノクターン横丁に入って、マルフォイさんの前で杖無しで魔法を使ってしまったこともバレてしまった。
『よいか、スズネ。君の魔力は特別じゃ。特別強く、特殊。それが誰かによって悪用されぬとも限らん。魔法を使う時は杖を使い、ホグワーツの外では一切魔法を使ってはならん。よいな?』
ゆっくりと諭すようにそうお灸を据えられて、わたしはただ頷くしかできなかった。
…やっぱり、わたしは普通じゃないんだ。そう思わされて、落ち込んでしまう。
わたしは、こんな『特別』なんて要らなかった。
それからわたしはレギュラスの誘いを断り、イースター休暇はホグワーツで主にセブルスやリリーと一緒に過ごした。
***
「はあー…」
大きな溜め息をついてセブルスからもらった羽ペンを走らせる。
イヤーカフからは小さくメロディーが流れてきて、心を穏やかにさせてくれた。
セブルス曰く『もうすぐ』期末試験らしい。
試験まであと2ヵ月近くもあるのにもうすぐだなんて言って勉強に勤しむ彼はさすがだ。
一緒に勉強といっても邪魔しちゃ悪いな、なんて思ってわたしは1人で湖の畔で教科書と羊皮紙を広げている。
「えっと…マンゲツソウ、は…教科書載ってない!」
あれ、これもしかして参考書とかあった方がよかった?
素直に図書館行けばよかったかもしれない…。
地面に広げた教科書をパタリと閉じて、そのまま仰向けに寝そべった。
風が気持ちいいし、太陽があったかい。
ちょっとだけ休憩しちゃおう。
どれくらいそうしていたんだろう。
いつの間にかそのまま居眠りしてしまったみたいで、目が覚めた時には少し日が傾いていた。
「ん、なんだろうこれ」
手に触れたのは、1冊の古い本。
こんな本借りた覚えない。
「トム・M・リドル…?」
その本の後ろには持ち主らしき人の名前が書かれている。
何かの時に紛れて持ってきちゃったのかもしれないし、大切なものだったら大変だ。
わたしはその本をカバンに仕舞って、立ち上がる。
その瞬間、グラリと視界が揺れて眩暈が襲ってきた。
「う、なに…っ」
少しの間、蹲ってそれが治まるまでジッとしていた。
熟睡して起きてすぐに立ち上がったのかいけなかったのだろうか。気持ち悪い。
しばらくすると体調が落ち着いて普通に歩けるようになった。
よく分かんないけど、また同じことがあるようなら医務室に行ってポピーに診てもらおう…。
「スズネ!」
城の中に戻ったところにちょうどリリーがいて、ぎゅむっと抱き着かれた。
あーもう、アルバスに怒られたこととか自分が普通じゃないこととかさっきいきなり体調悪くなったこととか気持ちが整理できないことがいっぱいある。
だけど、リリーから感じる体温がすごくあったかくてすごく安心して。
わたしは独りじゃないんだって思わせてくれる。
「リリー…」
「どうかしたの?」
「今日、一緒に寝てくれたり…する?」
「……っ!!もちろんよ!」
嬉しそうに笑うリリーにつられてわたしも笑う。
その時すでに、トム・M・リドルの本のことなどすっかり忘れてしまっていた。
(『特別』に惹かれる者)
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