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愛を伝える日 [ 34/38 ]




バレンタインの日。
わたしは何故か、セブルスの友達のエイブリーとして休日を過ごしていた。


「ちょっとスネイプ!ユキシロさん知らない?」
「知らない」
「おいスネイプ、ユキシロは?」
「さあな」
「スネイプ先輩!ユキシロ先輩どこですか?」
「…喧しい」


セブルスが作っためちゃくちゃ不味いポリジュース薬を飲んでまでしてエイブリーくんの姿になったわたしは、色んな人から質問攻めにあっているセブルスを見て小さく溜め息を吐く。

ハロウィンを思い返せば確かに、たくさんの人に揉みくちゃにされてそれに長時間足止めを食らったせいで危うくセブルスと絶交するところだったこともあった。

みんな好意で寄ってきてくれるのは分かるしとても嬉しいとは思うんだけど、ちょっと…うん。
あんなにグイグイ来るとは思わなかったし。

そんなわたしの為を思ってレギュラスが考えた案が『バレンタイン1日をエイブリーとなって過ごす』というもので。
当のエイブリーくんは『たまたま』今日体調が悪くなってしまったらしく、自室に引きこもっているらしい。(セブルスが『体調悪くさせるのも簡単じゃないな』って呟いてたのは敢えて聞こえないフリをした)

ここまでする必要あったかな…。
というかわたしが自室に籠れば良んじゃ?とレギュラスに問えば『それじゃ面白くないじゃないですか』と愉しそうに笑っていた。

そして何よりも嫌なのはポリジュース薬の不味さでわたしの舌はやられ、さっき女の子が渡してきたエイブリーくん用のバレンタインチョコを1つくすねたがあまり効果はなく美味しいものを美味しく食べれないというこの状態だ。

はあ、とまた溜め息が出た時。
いつもより高くなった位置から見える視界に、チラリと赤い髪が見えた。


「あ、リリー!」
「…はっ、?」


リリーを呼ぶ声が自分の声じゃないことに気付いて、わたしはハッと咄嗟に口を抑えた。


「何のつもり?純血主義のあんたが私に話しかけてきて、あまつさえ名前で呼んぶなんて」


こんなリリーの冷たい声、聞いたことない。
わたしはスズネなんだよって言って今すぐ抱き着きたかったけれど、そう言っても信じてくれなかったときが怖くて言い出せないでいた。


「…あ、えっと。間違えた」
「?…意味が分からないわ。あ!ちょっとセブ!」


わたしから興味を失くしたようにフイッと顔を背けると、近くにいたセブに足早に近付いていく。


「ねえ、スズネは?今日まだ朝から1回も見てないのよ」
「…分からない。僕も今日は一度も会ってないからな」
「…そう。どうしたのかしら…またハロウィンの時みたいにどこかで捕まってるんじゃないかしら」


本当に心配そうにリリーが眉を下げていて、わたしは嬉しくなる。
さっきの冷たいリリーはエイブリーに対してだからそうしただけで、わたしのことは友達だと思ってくれてるんだ。

思わず顔が緩んでニコニコ笑っていると、トントンと肩を叩かれた。


「作戦は成功みたいですね。今日は平和な1日になりそうですよ、スズネ先輩」
「レギュラス。今までどこにいたの?」
「…まあ、僕もまだ1年生とはいえブラック家の者ですから。兄がグリフィンドールで好き勝手やってる今、ブラック家の跡継ぎは僕になるのは必然。となれば、それ目当てで寄ってくる奴らがいるんですよ。そのせいでちょっと…」


レギュラスは手に持っていた小ぶりの鞄をユラユラ揺らして、至極不機嫌そうにそれを睨んでいる。

要するにレギュラスは女の子たちにモテモテってことか。
あの小さい鞄にはきっと拡張呪文がかかっていて、中にはびっしりとメッセージカードや贈り物が入ってるんだろう。


「レギュラスのこと、ちゃんと本当に好きな人も中にはいると思うけどなぁ」
「あり得ませんよ」
「だってレギュラスは確かに美人さんっていうのもあるけど、優しいし頭いいし。なんだろう…こう、一緒にいると癒されるし!」


周りの女の子が放っておかない要素、レギュラスにはたくさんあると思うなー。
面と向かって伝えたことに少しだけ恥ずかしさを覚えて、ちょっと控えめに微笑んでいればレギュラスは頬をほんのり赤く染める。


「…スズネ先輩、」
「ん?」
「そういうことは、きちんと先輩の姿の時に言ってきてください」
「…え、うん。分かった」

「愛情表現、できなくなってしまう」
「ん、なんか言った?」
「いえ。それよりそろそろセブルス先輩を助けて上げてください」


そう言ったレギュラスの視線の先には、まだたくさんの人からわたしのことを聞かれまくって疲労困憊しているセブルスがいた。

セブルスの元へ駆け寄って、彼を囲む人たちに向かってあまり刺激しなようにとできるだけ表情を柔らかくさせる。


「ごめん、ちょっとこいつに用があるんだ。ユキシロのことは俺もセ、っスネイプも今日は見かけてない。他を探してみた方が見つかる確率上がるんじゃないかな?」


危ない、セブルスって言いそうになった。
エイブリーくんはセブルスを苗字で呼んでるから、彼を知ってる人なら不審に思っちゃうかもしれないし。

ふう、と小さく息を吐くと周りがやけに静かなことに気が付いた。
思わずキョトンと目を開いて見渡せば、みんな(特に女の子たち)が口をポカンと開けたまま顔を赤くしていた。


「え、ちょっと…熱ある?」
「ひゃあっ!?」
「わっ…!」


一番近くにいた女の子の丸出しなおでこに手を触れさせた瞬間、悲鳴を上げられてズササと距離をとられてしまう。

あれ、エイブリーくんって女の子に嫌われてたりする…のかな。
女の子同士の感覚で触ってしまったけど、これでエイブリーくんの評判下がったりして。


「…ねえ、エイブリー先輩ってこんなかっこよかったっけ?」
「やばいよね、今の微笑み。ユキシロ先輩の方がやっぱりかっこいいけど、でも…かっこいい」

「エイブリーがあんなに優しく笑ってるの初めて見たわ…」
「ねー!あたし狙っちゃおうかなぁ」


え、なにどういうことなんだろうこれは。
わたしやセブルスそっちのけでキャアキャアとハートと飛ばしながらトークを始める女の子たちに戸惑って、セブルスに助けを求めた。


「セブルスー…」
「…姿が変わってもこれか。ある意味での才能だなもはや」
「それだけスズネ先輩が魅力的だということですよ」
「わたしじゃなくてエイブリーくんが、だと思うんだけど…」

「―…どういうことなのか、説明してくれるかしら?」
「「「……げ」」」


それから、わたし達の会話が聞こえてしまったリリーへネタばらしをする他なくなったわけだけど。
「エイブリーもラッキーね。復帰してきたらいきなりモテモテになってるんだから」と意外なことにリリーは怒らず、面白そうに笑ってた。


「あ、セブルス!」
「なんだ」
「あとで部屋に来て?」
「っ、な…ぜ」
「バレンタインのやつ!セブルス用に甘さ控えめのチョコマフィン作ったんだ」


ニコリ、と笑えばセブルスはさっきの女の子たちのように耳まで赤く染めてそっぽを向いてしまった。
それから元の姿に戻り、リリーとレギュラスも誘って、わたしの部屋で小さなバレンタインパーティーをすることにした。

なんだか少しセブルスが落ち込んでたように見えたけど、次にはレギュラスといつものように言い合いしてるし大丈夫そうかな。


「セブルス先輩だけ誘われるわけないじゃないですか」
「っ、喧しい!別にそう思っていたわけじゃ、」
「あらセブ、スズネと2人きりが良かったのね。それなら言ってくれれば良かったのに」
「何言ってるんですか貴女は。スズネ先輩とセブルス先輩を2人きりにだなんて僕が認めませんよ」

「…もういいから黙ってくれ!」



(みんなが楽しいとわたしも楽しい)

――――――――――――――――――――――――
セブルスともっとイチャイチャさせるつもりだったのに…。



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