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クリスマスの終わり(セブルス視点) [ 31/38 ]



12月25日のクリスマス。
この日、両親は仕事が入ったとのことで不在だと家に帰って早々に聞かされて苛立った。

両親は仲が悪く子供である僕に対してもそこまで干渉はしてこないタイプだ。
それでいて休暇は帰ってこいと言う癖に、いざ帰ってみると家族3人揃って過ごしたことなんて片手で数えられるほど。一緒に過ごす気がないのなら帰ってこいなんて言うな。

両親への愚痴を言い出したら尽きないが、そういう訳で僕はクリスマスの日の夕方にホグワーツへと帰ってきた。


ホグワーツ特急を降りて、城へ入ると真っ先に探したのはスズネの姿。
僕からのプレゼントは気に入ってくれただろうかという心配と、スズネからのプレゼントが昨日今朝と届いていなかったことに少しのショックを抱えながら城の中を宛もなく徘徊する。


「―…セブルス!?」
「ぐっ…!」


3日ぶりのスズネの声が聴こえたかと思った瞬間に、身体へと伝わる衝撃で床に倒れこんでしまった。
…痛い。思い切り鼻をぶつけて折れてないか不安だ。


「セブルス帰ってきてたんだね」


ニコニコと嬉しそうに笑いながら自分の腰に抱き着いているのは、頭にサンタ帽を被ったスズネだった。
彼女に床に押し倒せれているようなこの状況と、意外と近かったお互いの顔にドキリと心臓が大きく音を立てる。

今日のスズネは、いつもよりなんだか女性らしく見えて仕方なかった。
こんな少しの間しか離れていなかったというのに…もしかしたら僕もリリーの言っていたのと同じように『スズネ不足』だったのだろうか。


「もうすぐでクリスマスディナーだって。まさかクリスマスをセブルスも一緒に過ごせるなんて思ってなかったー…すごくうれしい」


ずれたサンタ帽をクイッと片手で直しながら、照れたように笑うスズネ。

彼女のそういう表情を見るたびに、ドキドキと鼓動が速くなるのが分かった。
今日の僕はどこか変だ。…いや、スズネが変なのか?


「…あのさ、」
「なっ、なんだ」
「リリーからもらったリップグロス、つけてみてるんだけど…おかしくない?」
「―……っ」


それか!と僕の思考はまるで針に糸が通ったかのようにスッとする。
普段化粧っけのないスズネの唇はほんのり赤く色づき、光の当たる部分がキラキラと輝いていた。

元々容姿端麗で中性的であったはずの彼女は、今はどこからどうみても美しい女性。
瞳の色と同じ色をした唇に、嫌でも目がいってしまうのは見逃してほしいところだ。


「…似合っている」


大きく吐いた息と共に出た言葉に、スズネは僅かに目を見開いた後に、また綺麗に微笑んだ。

…誘惑されている気がしてならない。
彼女を直視できなくて顔を逸らしていれば、グイッと腕を引かれた。


「大広間に行く前に、わたしの部屋にこない?」
「……は、?」
「セブルスは早く帰ってくるって言ってたから、プレゼント直接渡せるかなと思って送らずに部屋に置いてあるんだ」

「―…っ紛らわしい」
「いてっ。え、なんでデコピン?」


額を撫でながらも僕の手を引いて歩き出すスズネに連れて行かれるがまま。

素直に嬉しいクリスマスプレゼントをもらい、僕からのプレゼントもすごく嬉かったと興奮したように言ってくれたためホッと息を吐く。

それから大広間に向かい、いつの間に仲良くなったのかルーピンやブラックと親しげに挨拶をかわしながら僕と2人でスリザリンテーブルに着席したスズネは始終ニコニコと笑いながら食事をとっていた。


「セブルス、メリークリスマス!」
「…メリークリスマス。スズネ」


きっと、今までで1番のクリスマスだった。



(大きくなっていく彼女の存在)


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