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夢と友達 [ 29/38 ]



大広間へ行くととても大きなクリスマスツリーが豪華に飾られていて、思わずほうと息を呑んでしまった。
魔法のかかっている天井からは白い結晶がはらはらと降り注ぎ、それは手に触れる前に光になって消える。

しばらく魅入っていると、教員席に座るアルバスとバチリと目が合った。
彼はニコリと笑い、わたしに向かって手招きをしてきた為、疑問に想いながらも人の少ない大広間を小走りで駆けた。


「メリークリスマス、スズネ」
「えっと、メリークリスマス!アルバス」


ゴブレット片手に話しかけてくるアルバスはほんのり頬が染まっており、きっとゴブレットの中身はアルコールなんだろうなと苦笑する。
隣に座るミネルバが呆れ顔で「呑みすぎてはいけませんよ!」と彼を気遣っていた。


「プレゼントはもう開けたかの?」
「ううん、まだ。…わたしからのプレゼントなんだけどさ、まさかイヴの日にプレゼントを贈らなきゃいけないなんて知らなくて。今日準備する予定だったから、アルバスとかに届くのも明日になるかも」
「それについては特に決まりがあるわけではない。スズネからのプレゼントとは、実に楽しみじゃのう!」


ふぉふぉ、と声を上げて笑うアルバスはやっぱりアルコールのおかげでいつもより上機嫌だ。
呑みすぎちゃダメだよ、とミネルバと口を揃えて注意してわたしは教員席から離れた。


「―…ユキシロ!」


どこで食事をとろうかと視線を彷徨わせていると、名前を呼ばれて振り向けば、グリフィンドール席にいるルーピンが控えめにわたしに手を振っている。

わたしはホッと息を吐いた。
何せこんなに豪華なクリスマスの食事を1人でつついてもつまらないし、寂しいから。

彼の隣に座るシリウスの仏頂面には気付かないフリをして、わたしは彼らの近くに駆け寄った。


「メリークリスマス。ユキシロ、プレゼントはもう開けたかい?」


アルバスと同じこと聞いてる。
わたしは小さく笑いを零しながら、首を横に振って先程と同じように返事をした。


「僕にもプレゼントを?」
「うん。あと…シリウス、にも」
「…っ、い!?」


大きな七面鳥をガツガツ頬張っていたシリウスは素っ頓狂な声を上げると、口を手で覆ってテーブルに突っ伏してしまう。

何事かと思わず食事をする手を止めてシリウスを見ていたら、ゆっくりと上げられた顔は赤く、目尻には涙が浮かんでいて、キッとわたしを睨んでいた。

え、まさかわたしが泣かせてしまったかもしれない男の子2人目?
涙目なことも睨まれてる理由も分からずに焦っているのと逆に、ルーピンは可笑しそうに笑いを零す。


「お、おま…なんで名前で…!」
「いやだって名字で呼ぶなって怒られたから」
「そ、れはそうだけどよ…。はあ、いきなりでびびったじゃねえか」


そのせいで舌噛んだ、と恨めしそうにわたしを見るシリウスがおかしくてルーピンと同じように笑ってしまった。

うん、やっぱりこうやって話してみればそこまで嫌な奴じゃない。
わたしは嬉しくなって頬が緩むのを抑えられずにいた。


「女には見えないんじゃなかったのかい?」
「…べ、別にそんなんじゃねえっ」
「そんなに顔赤くしてる君に言われてもなあ」
「ぐ…、くそ!」


何やら2人でコソコソ話しているのを横目で見ながら食事を続け。
いつもの倍くらい朝から食べてしまったわたしの胃は食事が終わる頃には完全に悲鳴を上げていた。


「はう、もう夜まで何も食べたくない…」
「大して食ってなかったじゃねえか」
「…あなたの胃と一緒にしないでほしい」
「あのチキンうまかったな。何個か持ち出してくりゃ良かったぜ」


あれだけ食べてまだ食べ足りないのか。
その言葉だけでも胃もたれが酷くなりそうな気がして、わたしはお腹を摩りながら大広間を出た。


「ユキシロ、この後は予定あるのかい?」
「届いてたプレゼントの開封式、かなあ」


あんなにたくさん、骨が折れそう。
でもあの中にはリリーとかセブルスからの手紙とかも埋もれてるかもしれないし、ちゃんと目を凝らしてチェックしていかないとだ。

よし!と気合を入れれば満腹なお腹に力が入って少し吐き気がした。


「もしよかったら手伝おうか?」
「…え、いいの?」
「うん。君は人気者だからきっと大量に届いてるんだろう?もしかしたら危険な物も紛れてたりするかもしれないし」
「あー…なるほど。それは助かる」


知らない人からの贈り物は確かに警戒するし、変なの入ってて変なことになったら嫌だしね。
ありがとう、とルーピンを見上げて言えば彼は赤くなっている頬を緩めて微笑んだ。


「…おい、俺の存在忘れてねえか?」
「忘れてはいないよ。君はどうする?」
「あー、まあ…ユキシロが構わねえってんなら行ってやってもいいけど…」
「ほんと天邪鬼だね君は。シリウスも一緒にいいかい?ユキシロ」

「―…スズネ。スズネでいいよ。リーマス、シリウス」


僅かに目を見開いて驚いている様子の2人に、やっぱり名前呼びはちょっと馴れ馴れしかったかな…と後悔し始めたが表情が柔らかくなったのが分かり、その不安は払拭された。


「…スズネってスリザリンぽくねえよな」
「褒めてる?貶してる?」
「十分褒めてるだろ。大体スリザリンに碌な奴いないからな」
「それってスリザリン生であるスズネのこと間接的に貶してることにもなるよね」
「ちがっ。勘違いするなよ、スズネ!リーマス、余計なこと言うな!」


これは、友達が増えたって思ってもいい…よね?
ポッと暖かくなる胸に手を添えて、わたしは2人の会話を聞きながらクスクスと笑っていた。



(広がっていく友達の輪)


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