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ホグズミード(セブルス視点) [ 17/38 ]




保護者からのサインをもらえてなかったスズネがホグズミードへ行けなくなり、僕とリリーの2人で行くことになってしまった。

スズネと出会う前までの自分ならば、リリーと2人で出掛けることに少なからず嬉しさやら募らせて彼女との時間を楽しむことができたのだろう。
しかしどうにもこうにも、頭の中の半分以上を占めるのはスズネのことだった。

3人でいけないのならと自分もホグワーツに残りたがったが、リリーだけで出掛けさせるのも躊躇われた為に結果スズネは1人で留守番状態だ。

先程まで一緒に行動していたリリーは友人を見つけたらしく、「スズネへのお土産買ってくるわね!」とその友人たちと人混みに紛れて行ってしまった。


「はあ…」


だから、僕と2人では楽しめないって言ったんだ。

リリーの自分に正直で自由奔放なところは魅力的な部分でもある。
だが元々行くつもりのなかったホグズミードへ引っ張ってこられた挙句、こんな所に置き去りにされたことを考えれば原因である彼女へ悪態のひとつも吐きたくなる。

適当に本屋へ寄って、早くホグワーツへ帰ろう。

そうすればきっとリリーは気分を良くしないだろうが、そんな不機嫌になった彼女のことはスズネに任せれば問題ない。

少し身体でも温めてから行動を起こそうと、チラリと目に入った三本の箒の店へと入った。




***



「何でいるんだお前は…」
「…えへ」


思わず頭を抱えてしまいそうになるのを抑えて、目の前の彼女を見る。

三本の箒の店に入り、店内の隅の方へ座ろうと席を探していれば見慣れた黒髪とチラリと見えた赤の瞳に気付きすぐに駆け寄ればここにいるはずのないスズネがいた。

何故かグリフィンドールカラーのマフラーを巻いている彼女は、曖昧に微笑んでから「来ちゃった」と小さく呟いていた。


「…よくマクゴナガルを出し抜けたな」
「んー、まあね。すごいでしょ」
「ああ。…で、本当は?」


グッと押し黙ったスズネに、彼女が教師の監視の目を掻い潜り生徒に紛れてここへ来たのではないと確信する。

セブルスには敵わないなあ、と息を吐いたスズネは観念したように息を吐いて両肘をテーブルにつけて頬杖をついた。


「ホグワーツからホグズミードに直接繋がってる抜け道があって、そこから…」
「…1人でか?」
「その抜け道を教えてくれた人達と一緒に。今は別行動してるけど」


ということは、帰りも彼女はそいつらと一緒に抜け道からホグワーツへ戻るのだろう。
それにしてもホグワーツは謎の多い場所だと思ってはいたが、まさか外部へ繋がる道が隠されていたとは想像していなかった。

それを知っている人物というのは、少なくともホグワーツ歴の長い上級生もしくは教師の誰かくらいだろう。
…いや、スズネはゴーストとも仲が良いしもしかしたらピーブズあたりかもしれない。

どちらにしても、スズネがここにいることは非常にまずい。
教師に見つかりでもしたらそれこそ罰則ものだ。


「スズネ、」
「セブルス、リリーは?一緒じゃないの?」
「…彼女は別の友人と買い物に行っている」
「ええー…まあ、リリーはお友達多いから仕方ないのかな」


いつかの時と同じような言葉を吐いたスズネは少し残念そうにしている。

どう声をかけようか迷っていると彼女はふと何かに視線を奪われたようで、ある方向をジッと見つめていた。


「ねえ、セブルス」
「どうしかしたのか?」
「…あれ、」


スズネが熱烈な視線を注いでいたのは、他の客が皆手にしているジョッキだった。

黄色の液体の上に乗る白い泡が特徴的で、この三本の箒の名物でもあるものだ。


「セブルス、」
「ダメだ」
「…お願い」
「ダメだ」
「お金はきちんと返すから」
「そういう問題か?見つかる前に早く帰、」

「―…お願い、セブ」
「………ッ」


一体、どこの誰ならばこの『お願い』を断れたというのだろうか。
分かっててやっているとするならば相当タチが悪いぞ、こいつ。

気が付けば、鼻の下に白い泡をつけて「甘いんだねこれ!」と言いながら楽しそうに笑うスズネが目の前にいて僕は大きな溜め息を吐いた。


「これ飲んだら、他のお店行きたい」
「君はバカなのか?」
「大丈夫だよ。変装すれば!」
「変装って…そんなものたかが知れてるだろう」


もはや呆れて溜め息も出てこない。

きっとシワが寄っているだろう眉間を揉み解していると、スズネは外していたマフラーを首に巻き直して顔を隠しながらトイレへと席を立った。

10分くらい経っただろうか。
トイレにしてはだいぶ長いとは思ったが、女子ならばこんなものかとさして気にすることもなく待っていれば誰かが目の前に座った。


「…誰だ」
「お、その反応だとわたしがスズネだって気付いてない感じ?」
「は…あ?」


金色に輝くブロンドの長髪、そして瞳は深い青色。
スズネとは似ても似つかない容姿の彼女だったが、声は確かに聞きなれたスズネのもので間違いない。

よく見れば、髪形と瞳の色が違うだけで顔立ちはスズネのままだ。
きちんと、よく、見れば、の話だが。


「これならわたしだってバレないよ。マフラーで顔の半分は隠して歩くし。ね?セブルス」


僕は本日何回目になるか分からない溜め息を吐いたが、楽しみだと目を輝かせて笑うスズネに自分の顔が緩んでいくのが分かった。

仕方ないな、と小さく呟いて着ていたコートを脱ぎスズネへと放り投げる。


「行くぞ、スズネ」
「うん!ありがとう、セブルス」


この笑顔が見れるのなら、校則を破ることくらい安いものだと思わずにはいられなかった。



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