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「#幼馴染」のBL小説を読む
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仲直りの一歩 [ 15/38 ]




「ごめん、ユキシロ。シリウスは覚えの悪い駄犬なんだ、気にしないで」
「おい、リーマス…!バカにすんじゃねぇ!」


リーマスがニッコリ笑って言うと、シリウスは本当に彼の言う犬のようにギャンギャン吠え出した。
そこにジェームズやピーターが加わり、彼らはスズネそっちのけで騒いでいる。

そういえばなんでこの人達、ホグズミードには行かずにこんな辺鄙な場所にいるんだろう。

ホグズミードへ行くのは強制ではなく生徒の任意ではあるが、これだけ騒がしい彼らが行かないわけないだろうとスズネは不審に思った。


「あー、えっと。とりあえずさ、」


スズネが取り残されていることにいち早く気付いたのはジェームズで、彼女へ小さく謝罪をした後、バツが悪そうな顔をしながら話し出す。


「この間の中庭でのこと。正直に言えば、反省はしてても後悔はしてないよ。僕やシリウスは特にスニ…あーっと、スネイプのことが嫌いだし。あいつも僕たちのことを大層嫌ってるしね」


セブルスはいつも1人で、ジェームズ達は4人のときもあれば2人の時もあった。
1対4、1対2は卑怯ではあるしセブルスから彼らへ仕掛けることは殆どないに等しい。

スズネの言うように、悪戯の域を超えることをしていたのも事実。

彼らは、少なからず自分たちにも悪い部分があることを自覚していた。


「今後何もしないっていうのは申し訳ないけど約束はできない。でもまあ、少なくとも君があいつといる時は何も仕掛けないように努力するよ」


あと君に杖を向けたことは謝る、とジェームズが言えばシリウスは本当に小さな声で謝罪をしてリーマスとピーターもそれに続いた。

反省はしてるけど後悔はしてない、次しない約束もできないという何とも反応に困る謝罪。

しかし、どんな形であれ素直に人に謝ることのできる彼ら。
そして魔力を抑えきれず傷付けてしまった自分を怖がることも罵ることもなく、初めて会った時と変わらず接してくれる彼らは根っからの悪い人達ではないのだと思う。

スズネは口の中に溜めていた息を深く大きく吐いて、彼らを見据えた。


「わたしも、何もされてないのに傷付けてしまって…ごめん」


シュンと肩を落とし、眉を八の字に下げて謝るスズネにホッとしたように笑う。
そんな彼らを見て、キョトンと目を開いた後に同じように控えめに微笑んだスズネ。


『………ッ』


黒のスキニータイプのパンツに、上は少し大きめの長袖セーターを緩く着こなしている彼女は外見だけ見ればやはりただの美男子だ。

しかしスズネの笑う顔は美しく、どこか幼さも感じるもので。

しばらくその笑みに魅入って固まってしまった彼らを不思議に思い目の前で手を振ったスズネにより、4人はハッと我に返る。


「ゴホン。そういえば、ユキシロはホグズミードへは行かないのかい?」
「…自称保護者からサインもらえなくて。お留守番になったんだ」
「なるほどなるほど」


ジェームズがニヤリと笑って、シリウスやリーマス、ピーターに視線を投げると彼の意図が分かった3人は「オーケー」と呟いて数回頷いた。


「実はシリウスも親からサインをもらえてなくてね。だけど彼はホグズミードへ行くことができるんだ」
「え、どうやって?」


スズネが問うと、シリウスが杖を取り出して今いる廊下の中ほどにある『隻眼の魔女』と呼ばれる石像の前へと向かっていった。

その後を付いていき、石像の前で立ち止まったシリウスはその魔女の背中にある大きなコブに杖を向ける。


「ディセンディウム」


彼が呪文を呟きながら石像をトントンと叩くと、ギギギ…と鈍い音を揺らしながら石像が動き出して仄暗い道が現れた。

唖然としているスズネに向かって、シリウスが不敵に口角を上げる。
ジェームズもまた同じように笑ってウインクして見せた。


「こっからホグズミードまで真っ直ぐさ!」


そしてジェームズを先頭に、シリウス、ピーターとその現れた道に進んでいきその場に残ったのはリーマスとスズネ。

スズネは、悩んでいた。
許可証に保護者のサインがないと行けない場所に、先生達の目を盗んで行こうとしている。

行ってみたい、でも。
スズネの中の葛藤を見抜いたリーマスは、苦笑しながらも彼女へとおずおずと手を差し出した。


「行こう?きっと楽しいよ」


好奇心に負けたスズネは、リーマスの手をおずおずと握る。

暗い道を進んでる中、彼女の頭の中に浮かんだのは4階の廊下に行ってみなさいと言っていたダンブルドアのこと。
まさか彼はこうなることを予想して、あの場所へと導いてくれたのだろうか。

本人に聞いてもきっとはぐらかされるだろうし真実を知ることはできないだろうけれど、きっとそうだろうとスズネにはどこか確信があった。


「―…アルバスめ、」

「ん?なんか言ったかい?」
「いや、何でもない」


今はただ、彼の粋な計らいに感謝するばかり。

やっと見えてきた光を眩しそうに見つめて、スズネは小さく微笑んだ。


(踏み出せば輝く)


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