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相反




思いがけず恋柱の蜜璃と友達になった(たぶん)日から一週間が経過した。
本当に時間が進むのは早いようで、煉獄さんと合同任務にあたる期間、そして雛森さんかわたしかどちらを柱にするか見定める期間の終わりが近付く。

何にせよ柱の話は断る気しかないし、この期間も無駄なのだったのではと思うこともあるけれど、煉獄さんや千寿郎と過ごす日々は案外悪いものではなかったと思っている。

炭治郎に会いに行けていないことと、あまり文を返せていないことが唯一の不満としてあったが。






「ちょっとー!なんであんたがここに!?」
「………わたしに聞かれても。任務だから、としか言えない」


今回は柱である煉獄さんとは離れ、わたし単独の任務を言い渡された。

そしてその先で出会ったのは厄介な人。わたしを見てひどく不機嫌そうに叫ぶ、雛森さんだ。彼女も確かこの期間中は柱の誰かと合同任務にあたっていたはず。しかしこの場にはわたしと雛森さんしかいない。彼女付きの柱も煉獄さんと同じく今日は多忙のようだった。


「もしかして今日の任務、あんたと同じ?」
「ソノ通リ〜!後カラ癸ノ隊士ガ二名合流スルコトニナッテイル!揃イ次第、四人デ任務ニアタルベシ!」


わたしの肩に止まっていたヒョウがそう言い放つと、雛森さんは先程よりももっと顔を歪めて、それから小さくほくそ笑んだ。


「癸が二人、ね…。いい機会よ。あんたよりあたしの方が使えるってこと、分からせてあげるわ」


誰に”分からせる”のか。ここに柱はいないのに、と考えて感覚として身体に伝わってきた人の気配。

雛森さんが彼らの存在を知った上で言ったのかは分からないけれど、誰から見ても悪どい笑みを浮かべたまま大きな石の上にふんぞり返って座っているあたり気付いていなさそうだ。


「―――……」


闇に光るのはあの時に見た赤い瞳ではなく、左右で違う美しい色をした双眸だった。





■ ■ ■




「しかし、お館様も何をお考えなのやら…」
「ふふ。でも、気になりますよね。あの二人が合同で任務にあたったらどうなるのか」


蛇柱である伊黒のぼやきに、いつもの微笑みを崩さぬまま答えるのは蟲柱の胡蝶。
彼らの視線の先には、ちょうど癸の隊士たちと合流した柱候補の二名の姿があった。


「合同任務においての隊士の死亡率が一番高いという雛森めいさんと、その逆…合同任務においての隊士の死亡率が一番低いという竈門月子さん。見物ですね!」


弾んだ声音でそう言った胡蝶をじとりと見やった伊黒は、口元に巻いた包帯の下で小さく息を吐くと月子にだけ目を向ける。

雛森は自分たちの存在に気付いてはいない。しかしそれが普通だ。自分たちは完全に気配を消して彼女たちを監視していたはずなのだから。

しかし竈門月子はすぐにこちらの気配を察知し、そして完全に視線がかち合った。つまりは自分たちがいる場所すらも特定できていたということ。それだけですでに、雛森と竈門のどちらが上かなど鬼と交戦する場を見ずとも分かる。

伊黒はそこまで考えて、首に巻き付く白蛇を指先で撫ぜた。


「……柱の話は口実か?」
「その可能性は私も考えました。雛森さんの任務のあたり方には目に余るものがあるようですから。私との任務の間は、猫を被っていたようですけれど」


雛森と月子を同じ任務に就かせて、人を育てる能力が高いという月子に雛森を更生させる。今回の柱の話の裏には、そういった意図もあるのだろうと胡蝶は考えていた。


「まあ、柱候補の話が本当だったとしてもその候補は竈門さんだけでしょうね」
「更生対象でもあり噛ませ犬でもあるわけか。それを知らずしてあの大口叩きとは…哀れだな」
「本当のことですけど、そんな風に言っては雛森さんが可哀想ですよ。…彼女にも色々とあるようですから」


この期間の中で、雛森付きの柱だった胡蝶当然のこと彼女と共に何度か任務にあたった。いつも自信にありふれていて強気な雛森は、鬼を前にすると必ず手と足を震わせていたのを覚えている。

今まで鬼を五十斬ってきたとは思えない、その様子と怯えたような表情。そして頬に伝う冷や汗。


「………本当に、見物ですね」


こうやって、“試す”という目的で隊士たちを任務にあたらせるというやり方は正直…個人的には好きではないのだけれど。

胡蝶は小さく息を吐いて、口元にいつもの笑みを浮かべると蝶が舞うような動作で月子たちを追った。




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