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似たもの同士1



リドルが上半身裸で迫ってきた事件。
通称、ゴキブリ事件から3日くらい経った。

あんな熱っぽい視線で見つめられて、しかも上半身裸で、キスしそうなくらい顔を近付けてきて。

思い出したら今でも恥ずかしいくらいなのに次の日にはケロっといつも通りなリドルに、気にしてる自分が馬鹿らしく思えて無かったことにすると決めた。

それにしても、ほんとプレイボーイは困る。
心臓に悪いというか刺激が強いというか。


「はあー…」
「人の顔見るなり溜め息って失礼だな」
「…ばかリドル」
「ふうん…僕にそんな口きいていいと思ってる?」
「ごめんなさい」
「仕方ないから許してあげる」


杖向けてニッコリ笑いかけてくるリドルめっちゃ怖い。

でも、満足げに笑うリドルがどこか憎たらしくもあり、可愛らしくも思ってしまうわたしはどこかおかしいのかもしれない。


「今日のお昼ご飯、外に食べいこうか」
「面倒だな…」


一緒に過ごしてみて分かったことと言えば、リドルは果てしなくインドア派ということだ。

それしかやることがないにしても、自室で静かに本を読むのが彼は好きらしい。


リドルが最初に読んでいた本は人気作家の大ヒット小説で、わたしが数年前にミーハー精神から興味本位で買ったもの。

どんな物語だったか記憶にはないけれど、それを読み終わったリドルが『くだらない』と呟いていたのを聞く限りでは大した内容のものじゃなかったのかもしれないと思った。


「面白い?それ」
「面白いかどうかはさておき…為にならないな、マグルの読む本は。本当の暇つぶしにしかならない」
「まあ、そうだよね…」

「あっちではもうすぐ期末試験があったんだ。勉強道具でもあればまだ有意義に時間が使えたんだけどね」
「そっか、リドルって学生だったね。…なんだっけ、学校の名前」
「ホグワーツ。魔力のある子供は11歳になるとホグワーツから入学許可証が届いて、そこで7年間様々なことを学ぶ」
「へえー…」


魔法使いの学校かあ…すごい興味をそそられる。


「ま、君とは無縁の場所だね」
「そ…そんな言い方しなくてもいいじゃない」


リドルが本を閉じるのを確認して、そろそろお昼になるし出かける用意をしようとリビングを出て行こうとするとリドルに呼び止められた。


「…カヤがホグワーツにいたら、僕はもっと学校生活を楽しめるかもしれないね」
「は、えっ…」
「君を弄るのも虐めるのも愉しいし。十分僕の遊び相手になれると思うんだけど」


お気に召さない?といつも通りの憎まれ口を叩いてニヤリと笑うリドルに、わたしはあんたの玩具か!とイラッときたけど。

なんだか、気のせいかもしれないけど彼がわたしを見る瞳がいつもより柔らかく思えて…。


「……っ」
「カヤ?」
「…もう出かけるから準備してくる!リドルも早くしてね」


逃げるようにリビングを出て、ダッと自分の部屋へと飛び込んだ。


ドキドキうるさい自分の心臓を必死に押さえつけて、落ち着かせるように息を吐く。

あんな風に笑うなんて…ズルくないですか。


「…うーん、」


リドルに惹かれてるわけじゃない。
芸能人とかに同じようにされたらきっと今みたいになる。多分。

憧れみたいな…。きっと、そう。

そう思い込むことにして、わたしは思考を断ち切った。


…だけど。

「なんか…もやもやする」