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似たもの同士2



照りつける太陽を眩しそうに見つめながら隣を歩くリドルと一緒に来たのは、家の近くのファミレスだ。


「リドル何にする?」
「胃がもたれそうものばかりだ…」
「リゾットとかもあるよ?」


けっこうオススメだよ、とメニュー表をトントンと指させば『じゃあそれと、コーヒー』と小さく呟く。

ブラックでねと付け足したリドル。


確かホグワーツ学校って11歳から7年生まであるんだったよね…ってことはリドルが仮に今7年生だとしてもわたしよりは年下になるのか。

妙に大人びてて落ち着きもあるし、同い年くらいかもっと上かと思ってたけど外国人は大人っぽく見えるのもあるし年齢不詳な人が多いよね。


「カヤは?」
「わたしは、そうだな…」


パスタにでもしようかなと言おうとした時。


「おまえ…!カヤ!!」
「…あ、なたは…」


ヒステリックな叫び声を上げてわたしを呼ぶのは、わたしの親戚と呼ばれる人だ。

お店の中にも関わらず大きな声を出した彼女に、周りのお客たちも何だ何だとこちらを見てくる。

最悪だ。不運にも程がある。

リドルをチラリと見れば驚くほど鋭い視線で、大声を出した彼女をジッと見据えていた。


「あたしの視界に入るなとあの時あれだけ言っただろう!?」
「あなたが今日この時間にここへ来るなんて、知りませんでした」
「ふん、人殺しが一丁前に口答えかい?」
「………っ」


グッと堪えるように手を握り締める。

ー…人殺し。
両親が死んだあの時から、何度となくこの人と他の親戚たちからも浴びせられた言葉だ。

今更言われたところでなんてこと、ない。


「あぁ…おまえは本当に親不孝モンだ。両親を死に追いやりながらそれに罪の意識すら感じずに、のうのうと男と遊び歩いて!」
「……っ」
「この阿婆擦れ!気味の悪い悪魔め!おまえが死、ッあぐ…っ!」


どうやらそもそもの機嫌が悪かったらしい彼女に、酷い罵声を吐き捨てられてもうこの場から一目散に逃げ出したくなった時だった。

おまえが死ねばよかったんだ。
きっとそう言われてたであろうその言葉が最後まで紡がれることはなかった。

餌を強請る金魚のように目を見開いて口をパクパクさせている彼女から視線を逸らして、振り返る。


「…リドル、?」


リドルは双眼を真紅に染めて、わたしには目もくれずその射殺さんばかりの鋭い眼光で叔母さんを見据えていた。

きっとリドルが魔法で叔母さんを喋れなくさせた。

そう確信したけど、彼の手には杖が握られた様子もなくテーブルの上でその両手は手持ち無沙汰に組まれている。

杖なしでも魔法が使えるんだ。


「カヤ、」
「…帰ろう、リドル」
「殺してあげようか?」


誰を、なんて聞くまでもなく分かる。
わたしじゃなくて叔母さんのことを言ってる。

そして…リドルの目は、本気だった。

言ってることはとても物騒で、その言葉を聞いた周りのお客さんたちもギョッとしてリドルを見てる。

わたしはブンブンと首を横に振った。
リドルのその気持ちだけで十分だ。


「大丈夫だよ、リドル。帰ろう」
「………」


リドルは腑に落ちてないらしく、眉間にギュッと皺を寄せたけど大きな溜め息をついて立ち上がる。

ほんと、申し訳ないなリドルには。
わたしのせいで落ち着いて外でご飯も食べれない。


「ごめんね、リドル」


ファミレスを出てすぐに隣の彼を見上げて謝罪をすれば、はあ?と不機嫌に声を上げた。


「…胸糞悪い」
「ごめん、本当に。わたしが外に食べに行こうって言わなければ…」
「さっさと帰るよ」


イライラしたように髪を掻き上げるリドルの言葉にビクリと肩を揺らして、わたしはまた小さく謝罪を漏らす。



最悪な空気のままわたし達は帰宅して、リドルは何も話すことなくリビングのソファにドカッと座り込んだ。

どうしよう…なんて声掛けてればいいんだろう。
いや、何も話し出さない方がいいのかもしれない。

わたしは無言のまま、リドルと少しだけ距離を保ってソファに腰掛けた。