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変わること [ 6/7 ]



風邪も治り、ジェームズたちの悪戯が少し減ってきたように感じてきたある日のこと。


「セ、ブ、ル、スー!」
「―っ、……!?」


柱の陰に隠れて何やらコソコソしているセブルスの姿を発見して、驚かしてみようと後ろから名前を呼んでガバッと抱き着いた。

わたしが思っていたよりもセブルスは相当驚いたみたいで、犯人がわたしだと分かったらそれはもうすごい剣幕で怒られてしまった。


「二度とするな。それで僕の心臓が止まって死んだりしてもいいならやればいいが!」
「ご、ごめんってセブルス〜…。悪気はなくてほんの出来心だったんだよ?」
「君のくだらない出来心が生まれる度にこんなことされても迷惑だ」
「……セブ、どうしたの?」


どうやらわたしはセブルスの機嫌がすこぶる悪い時にやらかしてしまったらしい。

…いつもはこんなに怒ったりしないのに。
ごめんね、ともう一度謝るとセブルスはハッとした表情をした後に大きく息を吐いてローブを掴むわたし手に触れた。


「…すまなかった。必要以上に辛く当たった」
「いや、わたしも悪かったから大丈夫だけど…何かあった?」
「………いや、何も」


セブルスは隠し事が好きだなあ。
そんな表情で、間を開けて何もないなんて言われても何かあるって言っているようなもの。

セブルスが言わないってことは聞かれたくないことなんだろうけど―――。


「なーにが何も、だ。かっこつけやがって。最近俺たちのことコソコソと嗅ぎまわってんのお前だろ、スニベルス」


久しぶりに近くで聞いた、シリウスの声。
相も変わらずセブルスを蔑称で呼んでいることに腹が立ったけど、それと同じくらい彼の言葉が気なった。

セブルスがコソコソしてたのって、シリウス達を探ってたから?一体何のために…。


「嗅ぎまわっても何の手掛かりも掴めない無能のスニベルスくん。…優しい俺がヒントでも出してやろうか?」
「―――ブラック。それ以上セブルスのことそんな呼び方したら怒るよ」


いつの日か、自分の家の名前が嫌いだと呼ばれたくないと言っていたシリウス。
自分がやられて嫌なことは人にしてはいけない。その歳にもなってそんな簡単なことが分からないわけじゃないでしょ。

珍しくジェームズと一緒にいないシリウスを思いきり睨む。
きっと以前までのわたしだったらまた感情に伴って魔力が暴走してたりしただろうけど、今はほとんど制御ができていた。


「……っ、ざけんな」
「ん?なんて、」

「………おいスニベルス。知ってるか?暴れ柳の下に叫びの屋敷に繋がる道があるって。もしかしたらそこにお前が知りたいことが隠されてるかもしれねえな」


セブルスにそう言い放ったシリウスはバッと踵を返してその場から立ち去っていった。

シリウス、わたしには何も話しかけてくれなかったな…。悪戯はされたくないけど、話しかけてもああいう風に無視されて会話もできなくなるのは単純に悲しいし寂しい。

彼らと距離をとってなるべく関わらないようにすると決めてそうしたのは紛れもなく自分だ。だけど、これ以上この溝が深くなったら…もう戻れないんじゃないかってそう不安になってくる。


「……セブルス?」
「…あいつの言ってたことは忘れろ」
「ねえ、セブルスは何でシリウスたちを嗅ぎまわったりなんて…?」
「別に、ただ弱みを握ってやろうと思ってただけだ」


セブルスはわたしに返事をしながらも、何かを考えているようだった。


「…………」


ジェームズやシリウスを見るときのセブルスの目と表情を見て、そして気付いた。
わたしが思っていたよりもずっと、嫌いなんて言葉だけじゃきっと表せないくらいにセブルスはジェームズやシリウスのことが嫌いで憎んでいる。

セブルスが彼らにされてきたことは、わたしの知らないことも多くある。
悪戯なんて簡単な言葉で言い表せるようなものじゃないことだって、きっとされた。
だから、セブルスがジェームズ達をそう思うのは必然だし間違っていないとわたしも思う。

―――でも、時々怖くなる。
それが激化していったら、取り返しのつかないようなことが起きてしまいそうで。


「…戻るぞ、スズネ」


セブルスはわたしの姿をその黒い瞳に捉えると、さっきまで強張っていた顔を少し柔らかくさせる。

そんなセブルスの手をギュッと握ってみても、わたしの懸念と胸騒ぎが消えてくれることはなかった。



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