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待ち人と忠告 [ 4/7 ]



バカは風邪をひかないと言うけど、わたしはバカなのに風邪をひきました。


「う、ううっ…ごほっ!待って、セブルスー…」
「…っ、待てない。僕はこれから授業がある」
「ひとりじゃ寂しい……」
「スズネ、やめてくれ…。僕だって君から離れたくて離れるわけじゃ、」


生まれて初めてひいた風邪。
ここまで体調が悪くなったのも初めてで、なんだかすごく不安になってセブルスに傍にいてほしくて恥ずかしげもなくダダこねていた。


「はいはい、2人とも。イチャイチャするのはけっこうですがここは医務室です!これ以上スズネの熱が上がらないためにも、あなたは早く授業に行きなさい。遅刻しますよ!」


見かねたポピーがわたし達を叱咤して、セブルスはゴホンと照れ隠しで咳払いをした後にベッドに寝そべるわたしの頭をぎこちなく撫でて『授業が終わったらまた来る。大人しくしておけ』と今度こそ医務室から出て行ってしまう。


「スズネ、わがまま言って困らせてはいけませんよ。そのくらいの風邪なら3日もあれば治りますからね!」
「はあい…ごめんなさい」


なんとかテストって難しい試験が控えてるって休暇中に言ってたから、今期が始まってから今まで以上に勤勉なセブルスの邪魔はしたくないと思ってはいる。

さっきセブルスを引き留めたのは体調が悪くって少し気持ち的に弱っていたという理由もあるけど、もっと構ってほしいとか2人の時間がほしいとか…そういう気持ちもあった。

”恋人らしいことをできるのは今の内”。
シトラさんが休暇中に言っていた言葉が頭の中で反芻する。


「嫌だ、なあ……」


呟いて、ウトウトと思考がまどろみに呑まれて。わたしはそのまま眠気に誘われて意識を沈ませた。




□□□(リーマス視点)



もうすぐで満月が近い。
そのせいで日に日に悪くなっていく体調に身体が耐え切れなくなって、少しだけでも休もうと医務室を訪れた。

マダム・ポンフリーは不在のようで、だけど戻るのを待っている余裕もなく空いているベッドを探して横になる。


「はあ…っ、」


深く息を吐いて呼吸を落ち着かせて、吐きそうなほどの気持ち悪さに目をギュッと瞑った。
なんとか気を紛らわそうと何か別の事に意識を向けようと頑張ったら、最近の悩みごとが真っ先に思い浮かんでしまう。

ひとつは、ジェームズ達のこと。
彼らには僕が人狼であることはとうに打ち明けてはいた。去年くらいから、僕が満月の日に独りで苦しまないようにと彼らはアニメーガスを習得するために本格的に動いている。

それが最近は活発になり、夜中に寮を抜け出して外で練習したり禁書の棚から本を盗み見たりと今年から監督生になった僕が到底見過ごしていいことじゃない。…のは分かってはいるのだけど。


「……、っ…」



最初は本当に危険だからやめてくれと何度も止めた。だけどそれを今となってしなくなったのは、僕が彼らに甘えてしまっているからだ。
……嬉しかった。人狼の僕なんかの為に、そこまでして尽くしてくれる彼らの気持ちが。

そして僕は色んな感情に苛まれる。僕はどれだけ弱いんだろう、そんな彼らに僕は何をしてあげられるんだろうと。

そして、もうひとつの悩み。それは…。


「う、う…っ」


思考が巡る前に、隣のベッドから聴こえた声で意識がそちらに向く。
ダメと分かっていても気付いたら隣のベッドを覆うカーテンを開けていた。


「――…スズネ」


隣に寝ていたのは、僕のもうひとつの悩みの種であるスズネ。
魘されているようで額には冷や汗が滲み、彼女には珍しく眉間に深い皺が刻まれていた。

けっこう久しぶりに、こんな近くでスズネを見た。髪は肩下まで伸びていて、顔の輪郭も女性らしく少し丸みを帯びたように見える。


「う、う…っ…」


魘され続けるスズネの額にそっと手を乗せた。

…あの日、エバンスが泣きながらグリフィンドール寮に帰ってきて、その涙の訳にスズネが絡んでいることが分かってから。
エバンスに想いを寄せているジェームズはもちろん、スズネのことを他のスリザリンの人達は違うと気に入っていたシリウスもみんな、彼女を敬遠して陰口を言って嫌がらせをするようにもなった。

スリザリンに闇堕ちした、だなんて。そんな言い方は無いだろうけど、スズネが今までと打って変わっていることは確かだと思う。
あんなに仲の良かったエバンスとは近付くことも話すこともなくなり、スリザリンの中でも純血主義で名高い貴族家系の人達と一緒にいるところをよく見かける。


「…ねえ、スズネ」


君は本当に、変わってしまったのかい?

2年前、あの泉で。人狼であることをジェームズ達に打ち明けられずに悩んでいた僕に、元気と勇気をくれたのは紛れもなく君だったんだ。
マグル生まれの魔女であるエバンスとだって、その他の誰とだって、分け隔てなく自然に接していたはずだろう。


「っ、はあ…リリー、ごめ…ね…っ」
「――……ッ!」


ポロリ、と。
小さな謝罪と共に閉じられた瞳から涙が零れた。


「……スズネ、僕は…」


君が闇に染まってないって信じてる。君がどんな考えで、どんな気持ちでいるかなんて僕には分からないけれど…それでも。
エバンスも、僕も。そしてきっとジェームズやシリウス達も、心のどこかでスズネは変わってないと信じたいって思ってるはずなんだ。

そして君とまた前みたいに笑い合えるようになったその時は、僕の秘密も聞いてほしい。


「僕たち、待ってるから…」



□□□



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