親世代B | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
信じるもの [ 3/7 ]



ホグワーツに来てからの3年目は、大量の水をかぶるところから始まった。伸びた髪の先からポタポタと水滴が落ちて床に波紋を作っていくのを眺めながら、小さな溜め息を吐く。


「…………」


んもー…ほんとあの2人に目の敵にされると厄介この上ない!!
顔を上げてこの”悪戯”の犯人である2人をジトリと見やる。

いつも何か悪戯を仕掛けてはニヤニヤと愉しそうに笑っていたはずの彼らは、何とも言い難い表情を浮かべてわたしを見ていた。
ジェームズはムスッと口を真一文字に結んで、シリウスは困ったような怒ったような顔。


「……ごめんね」


聴こえないくらいの声で呟いて、魔法で服や本を乾かすとわたしは足早にその場を去った。



□ □ □



リリーとの一件があり、わたしと関わることで危ない目に遭う人が出てこないようにとスリザリン寮以外の人達とは関わることをなるべく避けた。そして逆に、純血者の多くて関わっても安全だろうスリザリンの人達とよく一緒にいるようになってからというもの。

―――スズネ・ユキシロはスリザリンに闇堕ちした。特にグリフィンドール寮内ではそう伝わっているらしい。


「闇堕ちって…スリザリンってどれだけ”悪”だと思われてるんだか」
「スズネ先輩?聞いてるんですか?」
「…はい、聞いてますすみません」


新入生の組み分けも終わり、各々の寮に戻ろうという時にわたしはレギュラスに拉致された。なんとなく、こうなるだろうとは思ってたけどとても怖い顔をしてわたしを見てるレギュラスが目の前にはいて。

今すぐにでもセブルスに助けを求めたかったけれど、生憎と彼は買ったばかりの読みたい本があるとさっさと寮に戻ってしまっている。


「ねえ、スズネ先輩。なんで僕の手紙を無視していたんですか?グリフィンドールの奴らから嫌がらせを受けている原因は?…休暇に入る前の図書室で、あの後エヴァンス先輩とはどうなったんです?その足の包帯は?」


グサグサグサ。うーん、胸が痛い。
できれば聞かれたくないと思ってたこと全部聞かれた。

初めて会ったときよりも随分と背が伸びて、わたしと同じくらいの目線に立つレギュラスのグレーの瞳は真剣そのもの。
顔のすぐ側に置かれたレギュラスの腕にそっと触れて、彼の瞳を見つめ返した。


「……っ、スズネ先輩」
「ごめん、レギュラス。詳しいことは何も言えない…少なくとも今は」
「僕は…僕は、貴女がとても大切なんです。だから悲しそうな顔も苦しそうな顔も、見たくないんです…」
「うん、ありがとう。わたしもレギュラスが大切。リリーとは今少し喧嘩しちゃってるけど、事が落ち着いたその時はまた仲直りできるはずだから」


怒った顔から泣きそうな顔に変わったレギュラスは、わたしの肩に顔を埋めるとそのままギュッと抱き着いてくる。


「…………」


レギュラスは純血主義者で、あの恐ろしい闇の帝王を敬愛してる。
わたしやセブルス達がいずれ闇の陣営を争うことになったら必然と、レギュラスとも敵同士になってしまう可能性が高い。

そうなることは、何としてでも避けたいから。


「ねえ、レギュラス」
「…、何ですか?」
「お願いがあるんだけど…いいかな?」
「―…はい、何でも言ってください」

「わたしと、セブルスを信じてほしい。そしてわたし達は決して、あなたの敵ではないことを忘れないでほしい」


純血主義という思想を悪いとも間違っているとも思ってはいないけど。
だからと言って罪のない人間の命を奪っていい理由には当然、なり得るわけがない。

レギュラスには間違ってほしくない。
それはわたしのワガママでエゴなのも十分よく分かってる。…でも、嫌なものは嫌。


「…もちろん、信じます。信じてます」


―――だからもう無視したりしないでください。
続けられたその切実な声音に誘われて涙腺が緩みながらも、そっと彼の頭に手を乗せた。


「…もう用は済んだだろう。とっとと離れろ」
「―…はあ、心が狭いなあセブルス先輩は」


わー、びっくりした!セブルス、いつの間に!?物音とか全然しなかった…。
レギュラスの肩越しに目が合うと、セブルスはこれでもかというほど眉間に皺を刻んでこっちを見ていた。


「別にこれくらい許されますよね?僕はかれこれ3ヶ月以上も無視され続けてて、恋い焦がれていた久しぶりのスズネ先輩なんですから」
「…そんなこと知るか。スズネはおまえのじゃない」


そこからあーだこーだと2人の言い争いが始まったけど、久しぶりのこういった会話にとても嬉しくなってニコニコ笑ってたらセブルスに怒られた。

こうして見るとやっぱり、他の人達が思っているよりもスリザリンって悪い寮じゃないんだけどなあ。…まあ、今の状況ではそれに理解をもらうことなんて到底無理なんだろうけど。

リリーや悪戯仕掛人の彼らともまた、こうやって笑いながら楽しく話せたりできる日がくることを信じて頑張らないと。



[*prev] [next#]
top