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糧となる想い [ 2/7 ]



漏れ鍋に着いてからは速やかにダイアゴン横丁を見て回った。
買うもの買って早く帰ろう、と急く理由は新学期の準備をするために殆どのホグワーツの生徒がダイアゴン横丁へ集うからだ。

なるべく、グリフィンドールの彼らとは会いたくなかった。…新学期が始まれば嫌でも顔を合わせるようになるし、嫌がらせも始まるし。


「くそ爆弾、わたしも持っておこうかな」


リリーを初めとして、ジェームズやシリウスそしてグリフィンドール寮生がわたしのことをスリザリンに染まった悪だと勘違いしているのは構わない。だってそうなるようにしたのは紛れもなく自分なのだから。

だけど、だからといってやられっぱなしは悔しいし理不尽だとも思う。
セブルスが嫌がらせを受けてた時から思ってたけど、ジェームズ達は加減と限度とかそういうものを全く考えてないんだもんなぁ…。

一生懸命とった魔法薬学の羊皮紙をビリビリに破かれた時は本気でキレそうになったもん。てか実際キレたし。


「…………」


全ての事が済んで平和になった後、リリーは嘘をついたわたしを許してくれるだろうか。
リリーだけじゃなく、他の人たちもみんな…。


「はあ…それもこれも全部、ヴォ…んむっ」


ヴォルデモート、という言葉はいきなり口を覆われたことによって紡がれることはなかった。

驚いてバッと後ろを振り返ると、いつものように眉間に皺を深く刻んで難しい顔をしている彼の姿。


「せ、セブ…!?」


約2週間ぶりほどに見るセブルスの姿に、今すぐ飛びつきたくなったけどさすがにここではTPOが邪魔をする。

わー、セブルスだ。セブルスだ!
2週間と聞けばそこまでの期間ではないように思うけれど、わたしにとってはとても長く感じた。


「セブルス!久しぶり…!」
「…はあああ」
「ん?何さ久しぶりに会ったっていうのにそんな大きな溜め息ついちゃってさ…」
「ばかスズネ」
「えー、いきなり?」


セブルスに名前を呼ばれた。
たとえそれが罵倒の言葉も一緒だったとしても、それだけですごく嬉しくて胸が高鳴る。

ほんとにわたしセブルスが大好きだなぁ。

ニコニコと零れる笑みをそのままにセブルスの手をギュッと握ると、セブルスは少しだけ眉間の皺を柔らかくさせて小さな力で握り返してくれた。


「誰が聞いてるか分からないこんな場所で、不用意にその名を口にするな」
「あ…うん、ごめん…」
「…それだけか?」
「ん?なにが?」
「買う物だ」


セブルスはわたしが抱えていた本や教科書をチラリと一瞥する。

それだけって言われても、ホグワーツから送られてきた購入リストに書いてあるものは一通り買ったしなあ…これ以外に何が必要なんだろう。


「今年はOWLがあるのは知っているだろう?そうだな…これと、これ。あとこれも買っておくといいだろう」
「わわっ。…ねえセブルス、OWLって?」
「知らないのか?5年次に受けるとても重要なテストだ。その試験の結果が将来に関わったり、来年の授業内容がNEWTレベルのものを受けられるようになる」
「は、はあ……」
「今後のことも考えてNEWTレベルの授業は受けておくのがいい。それに、」


僕は落ちこぼれになるのはごめんだからな、とセブルスは少しだけ得意げな表情を見せた。

正直それを聞いて、すごく難しくてめんどくさそうな試験だなとしか思えないんだけど…。
セブルスがわたしに教科書以外の参考書を渡してくるあたり、わたしもその何とかレベルの授業を受けられる結果が出せるように勉強させようと思ってたり、して。


「セブ。わたしは別に何とかレベルの授業は…」
「NEWT(いもり)だ」
「…わたしもそのレべルの授業、目指さないとダメ?」
「当たり前だろう。NEWTレベルの授業を受けないメリットがない」


さも当然かのようにケロリと言ってのけるセブルスに、思わず頭を抱えたくなった。いや、もはや抱えたけどね。

だってわたしは実技はすこぶる得意(魔法薬学は除く)だけれど、筆記・記憶系はほんとに無理。
セブルスみたいに何でも万遍なく熟せるなら話は別にしたってわたしは成績が良くも悪くもない方だ。イモリだかヤモリだか知らないけど、そんな難しいレベルを仮に受けられても授業についていけなくなるに違いない。


「…僕はこれから先、常にスズネの傍にはいられなくなる」


唐突なその言葉とそれを言うセブルスの表情を見て、わたしの思考がピタリと止まる。


「セブルス……」
「僕が支えてやれなくなってしまう部分はスズネ自身でどうにか出来るようにならなければ
、”あの人”相手には恐らく…対抗できない」


セブルスはきっとこの休暇中、闇勢力と交流していく中でたくさんの情報を得たはず。
その中にはもちろん、ヴォルデモートの情報があったって不思議じゃない。

だからだと思う。
セブルスのその言葉には重みを感じ、さらに有無を言わせない”説得力”があった。


「…分かったよ、セブルス。わたし頑張る」
「スズネ…」
「どんなに魔力が強くても、たくさんの呪文を使えても頭悪かったらそれも持ち腐れになっちゃうもんね」
「ああ。僕も、いざという時にスズネを守れるように強くなると約束する」


セブルスの瞳はとても真剣で、強い光が見えるよう。

なんかセブルス、すごくかっこよくなってない!?どうしよう、心臓がドキドキし過ぎて呼吸が苦しくなってきた…!


「…あー、スズネ」
「へっ?あ、うん。なに?」
「これから時間があるなら、その…僕とまだ一緒にいないか?」
「………っ!!」


思ってもみなかったセブルスからのお誘いに、わたしは手に持っていた本をバサバサッと全て床に落として口を手で覆った。
何してるんだとセブルスがそれを拾ってくれるけどわたしはその場で固まったまま。

だってセブルスがデートに誘ってくれた。
それがすごくすごく嬉しい。


「…返事は?」
「……〜っ!」


首が取れそうなほどコクコクと勢いよく頷けば、セブルスが小さく笑う。

これでスズネ不足が少し解消されるな、と続けられた彼の言葉にさらにノックアウトされてしまったのは言うまでもない。



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