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パチリ、と目を覚ましてすぐに鼻孔を擽ったのは甘い甘いチョコレートの香り。
今日はバレンタインだったかな、なんて考えなくても分かることをボーッとしながら思って上半身を起こした。


「っ、けほ…っ」


寝たから体調はだいぶ良くなったみたいだけどまだ少し咳が出る。

できるだけ魔法を使わないで自然治癒したいってワガママ言っちゃったけど、元気爆発薬のんでみても良かったかなあ…。
でもあれ飲んでる人見たことあるけど鼻とか耳から勢いよく煙が出ててちょっと怖いんだよね。

ずっと医務室にいるほどの症状でもなくなったしそろそろ授業も終わる頃だろう。

ベッドから抜け出そうと枕のそばに手をつけば、カサリと何かが触れた。


「ん?…あ、チョコ?」


そこに置いてあったのはカラフルな銀紙に包まれた丸いチョコレート3つ。さっき香った甘い匂いはこれだったんだ。

セブルス、ではないだろうし。…一体だれが。


「…ん。あまい、おいしい」


小腹が減ったのもあって、3つのうちの1つの銀紙を剥がして中身を口に放り込む。口の中にチョコの甘さが溶けて、その甘い香りが鼻を突き抜けていった。

しばらくその1粒のチョコレートを堪能していると、中から小さな粒々がたくさん出てくる。
わー…すごくおいしいこのチョコレート。リーマス、好きそうだなあ。


「―………まさか、」


そこまで考えて、もしかしたらリーマスがこのチョコを置いて行ったのかなと思ったけど。
授業中だろうし、何しろジェームズ達と一緒でわたしに近寄ることをしなくなった1人でもあるんだしそれは考えにくい。


「ねえ、ポピー。わたしが寝てる間にここに誰か来たー?」
「あら、スズネ。まだ治っていないのだから横になっていなさい。私がここへ戻ってきてからは誰も来ていませんよ」


ベッドから下りてまず先に目に入ったポピーに問うけど、誰も来てなかったと言う。

まあ留守してた間があったんだろうから、その時なんだろうな多分。もしこれがジェームズ達の置いて行ったものなら、何かしらの”悪戯”が施されているはずだろうしそうだったとしたら後に分かるとして。

とりあえず、ちょっぴり小腹も満たされたことだしこのチョコレートをくれた人には感謝だ。


「もうだいぶ良くなったし、一旦自分の部屋に戻るね。もし酷くなったらその時は観念して元気爆発薬のむからさ!」
「はあ…無理はしないことですよ。それと、」
「ん?なあに、ポピー」

「校則を破って部屋を抜け出して夜の城を出歩いたり、城の外へ出てはいけませんよ。…もうすぐ満月ですからね」


ポピーの言葉に首を傾げながら、わたしは反射的にコクリと小さく頷いた。

以前にレギュラスを元気づけるためにセブルスと3人で夜に城の外に出たことはあったけど、それを知って釘さしてきたとか?
…そうだとしても、”満月だから”っていうのは何かそれに関係があるんだろうか。

医務室を出て、廊下に出ると手に持っていた残り2つのチョコレートが体温で少しだけふにゃりと形を崩していた。


「もうすぐ満月、なんだ」


呟いて、チョコレートを摘まんで天井の灯りに重なるように持ち上げてから下から覗き込めば黄金の光が銀紙に反射して…まるで真ん丸の月みたいに見える。

十五夜でも何でもないけど、満月の日にはお団子でも作って月を見ながら食べるのもいい。
今から屋敷しもべさん達の厨房に使用する予約でも入れておこうかな。

ポピーの言葉に対しての疑問はすぐに頭からなくなってしまい、わたしは授業終わりのセブルスに突撃するべく廊下を早足で駆けた。



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