04
奇妙な突風のせいでナマエと離れちまった後。
俺は気付いたら白ひげ海賊団の船、モビーディック号の看板にいた。
いきなり現れた俺を当然の如く警戒して、尋問やら何やらと受けたりもしたが。
ただ恋人を探したいと頑なに伝えているうちに、白ひげの船長であるエドワード・ニューゲートは俺を船に向かい入れてくれ、尚且つナマエのことも一緒に探してくれると言ってくれた。
俺が海兵だった頃にも大海賊として有名だった白ひげ海賊団の船長が、こんなにも懐の広い男だったとは驚いたが、もっと驚いたのは今のこの世界は俺がドフィに殺されかけたあの日から13年もの月日が経っていたということ。
それからその白ひげ海賊団のところで世話になって3ヶ月が経ち。
仲間を襲って悪魔の実を奪い一味を抜けた男を追いかけるというエースに、ナマエを探しに行きたいと俺もついていくことにした。
そんで色んなところを巡って、ナノハナに辿り着いた時、やっとナマエを見つけたというわけだ。
□ □ □
「って、聞いてたか?ナマエ」
「…聞いてた。聞いてたけど、今はこのまま」
ルフィと呼ばれたエースの弟が抱えていたナマエをぶんどって、海兵の相手をエースに任せ、俺はとりあえず逃げるルフィとその仲間について行った。
船首の羊が特徴的な船に乗り込み、俺を不審がるそいつらだったが…『ロシナンテ…!』とナマエが俺に抱き着いているのを見て何かを納得したようで追い出されることはなかった。
そんでとりあえずナマエに説明しねェと、と俺がここにいる説明をしたんだが…ナマエは小さく頷きながらずっと俺の胸に頭を預けて離れようとしない。
いやこれはこれで可愛いし、俺もやっとナマエに会えてめちゃくちゃ嬉しいけどな。ここで今すぐキスしたいくらいには。あとで気が済むまでする。
「あの、あなたがナマエさんの恋人かしら?」
「ん?おう!そうだ。俺はロシナンテ」
「そうなのね!見つかって良かったわ!」
ナマエが世話になっていたらしい麦わらの海賊団も、悪そうな奴らがいなくて安心した。
こんな知らない世界に1人にされたナマエが心配で不安で、ちゃんと生きてるのかすら分からない恐怖もあって精神的に限界だったからな…。
「ねえ、ロシナンテ。白ひげさんのところにお世話になったの3ヶ月って言ってたけど、わたしはロシナンテと離れてから1週間も経ってないで今ここに来たんだよ」
いつの間に復活したのか、俺の腕の中から抜け出したナマエが首を傾げながらそう言った。
なんだそのタイムラグは…と不思議には思うが、俺がナマエの世界に行ったこととナマエが俺の世界に来たことを考えたらもう何が起こってもそこまで驚くことはなるくらいの耐性がついている。
「ロシナンテに会えなくて寂しかった」
「俺もだけどよ、俺は3ヶ月だがナマエは1週間だろ?俺の方がすげェ寂しかった…!」
「わたしの方が寂しかった」
「俺だ!俺の方がナマエのこと愛してるからな!」
「は、…わたしの方がロシナンテのこと愛してるよ」
「いや、俺だ」
「わたしだって、…っ!」
言い返してくるナマエの唇に噛み付くようにキスをして黙らせれば、頬を赤く染めた彼女は悔しそうに下唇を噛むとそっぽを向く。
しばらく会ってなかったからか、いつも以上に愛しく思うその様子に思わず”ナマエ〜!”と情けなく泣きながら抱き締めた。
「チッ…クソ羨ましいぜ!畜生!」
「ラブラブだなー」
「ラブラブって何だ?食えんのか?」
「見てるこっちが恥ずかしいわね…」
「けっ。余所でやれってんだ」
「Mr.ブシドー。失礼だわ」
「クエックエーッ」
「カルーが”バカップルだ”って」
バカになるくらいナマエが好きなんだ、仕方ねェだろ。
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