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念には念を、と思ってナマエとベッドに入る時はいつも”サイレント”を発動させるようにしていた。
見たところ良い部屋に住んでるから壁が薄い心配はねェと思うが、一応な。

その度に俺が指を鳴らすもんだから、最初はただ不思議そうに眺めていたナマエも、さすがに気になったのか。


「ねえ、あの指パッチンなに?」


午前中最後の患者の診察を終えたナマエにそう聞かれて、そういえばローの話をした時には悪魔の実について詳しくは話してなかったなと思い、口を開いた。


□ □ □



悪魔の実は”海の悪魔の化身”と言われる果実で、食べた者には特殊な能力が身に付く。
さらに悪魔の実には多くの種類が存在し、食べた実の種類に応じて得られる能力が異なっていて、様々な能力が存在している。

デメリットは、普通の人間にはない能力を手に入れる代わりに能力者は海に嫌われ、一生カナヅチになっちまうこと。だから能力者は海に入ると体から力が抜け、能力を使うこともできなくなり、そのまま沈むしかない。

一概に海と言っても川でも湖でもその”海”と同じ括りになるみたいで、要するに”水の溜まってる場所”が能力者の弱点ってわけだ。


「そんで、俺はナギナギの実を食ってるから悪魔の実の能力者だ。音を消すことができる」
「…音を消す?」
「ああ。例えば………」


自分に”凪”をかけてナマエの目の前で、パン!と手を鳴らしてみせた。
驚いた様子の彼女は目を少し見開きながら、『もういっかいやってみて』と小さく呟く。

パン、パン。と3回くらい手を叩いあたりで能力を解き、どうだ?と得意げに笑うとナマエは俺の手をジッと観察していた。


「すごい、ね。手叩いてるのに何も聞こえなかった…」
「”俺の影響で出る音は全て消えるの術”だ!まあ、”凪(カーム)”ってカッコイイ名前があるんだけどな」
「かーむ…」


復唱するナマエに、苦笑する。


「指パッチンのは?」
「ん?ああ、あれは”サイレント”。ドーム状の透明な”防音壁”を自分の周囲に展開して、そのドームの中に居る奴は外側の音声が一切聞こえなくなる」
「…………」
「逆にドームの内側から発生した音声は外側にも一切聞こえねェ。俺にはそれができるから、海軍にいた時は潜入捜査ってかスパイ任務が多かったな」


まあ…ナギナギは音を消せるだけの能力だから戦闘にはあまり使えない上に地味で、本当は自慢できるようなもんでもない。どうせ食うならもっと強くなれる能力の実を食いたかったなァ。

そこまで言って息を吐くと、ナマエがふと俺の手をとってギュッギュッと触る。


「なんか、うん。ロシナンテに似合ってる気がする、ナギナギの実」
「なに!?それは俺が地味ってことか…!」
「違う違う。特にこうだからって理由はないんだけど、凪って風のことでしょう?優しくてあったかいロシナンテにナギナギ…うん。やっぱり似合ってる」


ふわっと微笑んだナマエ。
あー…くそ。こいつ、どんだけ好きにさせれば気が済むんだよ。心臓わし掴まれて死ぬぞ、俺。


「それで、そのサイレント?だっけ。なんでいつもエッチする時に発動させてるの?」
「エッ…、!…いや、それはあれだ。おまえの声、他の奴には聞かせたくねェっていうか、よ…」
「…っばか。そんな大きい声出してない!」


そんなことに能力使うな、と顔をほんのり赤く染めたナマエに怒られる。
エッチとか普通に言ったかと思えば変なところで恥じい出すナマエはよく分からねェが、可愛いかった。