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05



ナマエの過去を聞いた時、自分の生い立ちと少しだけ似てるような気がして気付いたら泣いてた。

あの時の行動と言葉は、少なくとも俺の中では同情のようで同情ではなかった。
無性に抱き締めたくなって、支えてやりたくなって、無理に笑ってることにこっちが苦しくなって。

それをナマエがどう捉えたかは分からないが、ありがとうと言った彼女の柔らかな微笑みは嘘ではなかっただろう…と思いたい。


「…………」


あれ以来。あの時のナマエの表情を思い出す度に、胸がギュッと締め付けられるように痛くなる時がある。

こんな感覚、初めてだ。


□ □ □



俺がここに来て、5日が経った。

彼女の開く診療所の診察日は週に3日だけ。1日に来る患者の量はそこまで多くはないが、少なくもない。
今日は比較的暇な日らしく、患者のいない診察室でキィと規則的に音を立てて椅子を回しながら医学書を読むナマエをチラリと見た。


「…………」


ナマエのことをもっと知りたい、と思う。
この間みたいに過去のこととかそういうのじゃなく、例えば…好きな食べ物とか趣味とかそういう感じのやつ。

だが俺は、あんまり女慣れしてねェ。

海軍にいた頃はひたすらに訓練やら任務やらに追われてたからそもそも女に縁はなく、ドフィの所へ潜入してる時もあれこれ考えることが多過ぎてそれどころじゃなかったからな…。


「ロシナンテ、」

「は…んん!?ど、どうした?」
「?なんでそんなに慌ててるの?」
「いや別になんでも…!」


口元に小さく笑みを浮かべながら首を傾げるナマエに、顔が熱くなってくる。
こいつに名前呼ばれるの、なんか好きだ。…って俺なに思ってんだ!?


「なんか暇だし、午後は診療所閉めて出掛けない?」
「出掛ける?買い出しなら昨日行ったぞ?」
「違う違う。どっか適当に遊びに行こうってこと」


そう言ったナマエは既に白衣を脱いでいて、立ち尽くす俺に“午後休診”と書かれた看板を渡して『入口に掛けてきてね』と笑う。

言われるがままに診療所の入口に向かい、看板を掛けて、大きく息を吐いた。


「…よし!」


これは絶好のチャンスだ。この機会を逃すことは許されねェぞ、俺!
胸の前で小さくガッツポーズをして診療所に戻ろうとしたら、何も無いところで2回連続で転んだ。