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03





異世界から来たという彼を厚意で自分の家に住まわせるだなんて、わたしを知っている人物がいれば”どういう風の吹き回しだ”なんて言うかもしれない。

面白いことが好きなわたしの気まぐれ。ただ、それだけ。


□ □ □



まず最初にしなければいいけないのは、異世界人の彼…ロシナンテが生活するための日用品を買い揃えること。
広い部屋を借りている割には自分に必要になる最低限の物しか置いてない為、使い回しや代用できる物は殆どない。

着るものも無いわけじゃないけど、サイズを間違えて買った大きい白衣が1着あるだけ。
わたしは何枚も替えがあるから外出用の白衣を着てよく外に買い物に行くが、さすがに白衣着た2人組が外を歩いていれば悪目立ち間違いなしだ。


「ということで、わたしは買い物に行ってくるから留守番頼むね。ロシナンテ」
「買い物?荷物持ったりは出来るだろうし、俺も…!」
「そんな血だらけの服装で出掛けるつもり?救急車かパトカー呼ばれて終わるから」


きゅうきゅうしゃ?ぱとかー?
なんて。その単語を初めて聞いたかのように首を傾げるロシナンテに、彼の世界にはその2つすらも存在しないのかと驚くしかなかった。


「適当に色々買ってくるから待っててよ。すぐ近くに大きなモールもあるし、すぐ帰ってくる」
「1人で大丈夫か?この世界には本当に海賊とかいねェんだろうな?襲われたり、」
「しないから。海賊も、少なくともこの国にはいないよ」
「……そうか」


シュンとしたロシナンテが少しだけ可愛い。
彼の言う”襲われる”というのがどういうことを言ってるのかは知らないけど、海賊なんてものはいないものの殺人やら誘拐やらの犯罪は毎日のようにどこかで起きてる。

なんだか心配してくれてるみたいだから、それは言わないでおくけどさ。


「ナマエ、」
「なあに?」

「―…ありがとうな」


そう言ったロシナンテの微笑みに、ドキリと心臓が音を立てたのはきっと彼の顔が俗に言う”イケメン”だからだと思いたい。


□ □ □



買い物から終えて家に帰ると、ロシナンテは頭のフードを脱いで包帯の巻かれた金髪をサラサラと揺らしながらソファに横たわって眠っていた。


「……………」


少し青白く見えるロシナンテの顔を覗き見て、眉間に皺が寄る。

わたしの部屋で倒れていた彼を見つけた時、負っている怪我が酷過ぎて最初は死んでると思ってた。
だけど僅かに上下する胸を見て、わたしはすぐに治療を施した。いやはや職業柄、その時は彼が何者かとか何でここにいるのかとかそういった疑問はどうでも良くなって…ただただ無心で。

本当は造血剤の投与もしくは輸血をした方がいいほど出血が多かったんだけど、ロシナンテの回復は目まぐるしい。半日は眠るはずの麻酔を打ったはずなのに、ものの2時間で目覚めてしまって…意識もハッキリとしていたしすぐに起き上がることもできた。


「こっちの人間とそっちの人間では身体のつくりが違うのかな…」


彼の瞼あたりにかかる前髪をサラリと撫でつけて、気になったことをポツリと呟く。

そして思い出すのは、彼が重症の怪我を負った理由の中にあった…”病気の子供を助けたかった”という言葉。
ロシナンテがどういう人かなんてついさっき初めて会ったばかりだし、まだ分からないことはたくさんある。

でも、誰かを助けるために自分の命も惜しまない行動をとれる彼はとても心の優しい強い人なのだろうと勝手に思った。




その後、昼寝から目覚めたロシナンテにまずシャワーを浴びさせて買ってきた服に着替えさせた。
身長がとても高い彼には一番大きいサイズを買ってきたつもりだったけど、それでもズボンの長さが合わず、ふくらはぎの半分から下は肌色が晒されてしまっている。


「全然問題ねェよ。むしろこっちの方が暑苦しくなくて動きやすくていい。ありがとうな!」


そう言ってニカッと笑うロシナンテは、やっぱり優しい人だった。



気付かない変化
(ハート柄の、パンツ…!?)
(あれ?ハート好きなんじゃないの?)


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