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13 (※ロシナンテの技はこの作品のオリジナル)




敵にどれかビビか分からないように全員がマントを被り、身を隠して作戦通りに散開をする。
俺とウソップは南西から入り、追いかけてきた奴を待ち伏せして身を隠していたマントを脱いだ。


『ー…残念ハズレ』


さあ、ここからが本領発揮の時間だ。


□ □ □



「…とカッコつけてみたが、俺はナマエが心配で心配で仕方ねェんだ!だからとっととカタつけさせてもらう」
「よォし!頑張れェ!コラソン!」
「ウソップおまえ…何で隠れてんだ」


俺たちの目の前にいるのは、俺が“コラソン”と呼ばれていた時代にしていたような道化師メイクを施している男。
黒いマントを被っていてその表情も体格も分からない。

その横には化粧の濃いオカマもいる。


「キヒヒ!久々に嬲り甲斐のある奴が出たなぁ」
「ちょっと冗談じゃないわよーう!ビビ王女じゃないじゃないこいつら!!」
「ああ。大方、僕らを分散させて欺くための作戦だったんだろうねぇ。Mr.2は門の外に戻って様子を見に行ってくれるか?」
「フン!分かったわよぅ。ちゃんと始末しなさいよ?」

「っ行かせるか!ー…ッ!?」


この場を離れようとするオカマを食い止めようとすれば、音もなく飛んできた刃物に行く手を阻まれる。
顔に当たる寸前で掴んだソレは、細身で鋭利なナイフでそれを挟んだ指にスッと赤い線が引かれた。

すげェ切れ味だ。
指くらいならすんなり切れちまいそうなくらいの。


「おい、ウソップ。あのオカマ追いかけろ。ビビとナマエが危ねェかもしれない」
「…っああ、分かった!このキャプテンウソップが、」
「いいから早く行け!」
「はいィ!行ってきまァーす!!」


脱兎のごとく駆け出したウソップを見送って、小さく息を吐く。…タバコ、は吸わねェでおくか。燃えちまったらヤバいからな。


「キヒヒ…随分と余裕だな」
「余裕なんかねェよ。俺には心配事が山積みなんだ」
「その心配事とやらも考える必要はなくなる。お前はここで死ぬのさ。白ひげ海賊団の凪使い」


道化の顔がニタリと笑った瞬間、その場からそいつの姿が消えた。
ビュンビュンと風を切る音が辺りから聴こえてくる…目に止められないくらいの速さで移動しているようだ。

俺はスッと目を閉じて、風を読む。
あいつは今どこにいる。そして、どこからくる。


「凪籠=v


パチン、と指を鳴らす。
凪籠(カームケージ)は、サイレントの応用で防音壁ではなく風の壁を一定の範囲に張り巡らせてその中にいる者の全ての動きを把握することができる技だ。

…あーあー、もう丸わかりだっての。
思わず上がる口角に、やっぱりタバコを吸おうとポケットから1本取り出して火をつけた。


「キヒヒー!背後がお留守だぜェ!!」


紫煙を吐き出して拳を握る。


「あばよ!凪使い…!」
「ー…あァ。じゃあな」

「ッ、ふぎィ…っ!?」


背後に迫ってきた奴を、懇親の力を込めた右手で思い切り殴ってやった。
カエルが潰されたような唸りを上げて地に伏した奴の顔のすぐ横でタバコを踏み消し、よし!と小さくガッツポーズをする。

良かった…想像以上に早く終われたからナマエの様子を見に行けそうだ。というかこれ、俺が強いんじゃなくてこいつが弱過ぎただけだよなァ。


「う、あっちィ…っ!?」


案の定、いつから燃えていたか分からない肩をバッバッと手で払い消して。


「待ってろよ、ナマエー!とビビ!」


2人がまだいるであろう門の外へと急いだ。