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09




「クロコダイルのいるレインベースというオアシスは、今いるユバから北へ真っ直ぐよ」


反乱軍を止めにカトレアへ向かっていた俺達だが、ルフィの言葉とビビの涙で、クロコダイルのいるレインベースへと進路変更をすることに。

ユバからレインベースまでは中々に遠いらしく、砂漠をまる1日歩くらしい。まーた砂漠の旅が始まるのか…歩くのはいいが陽射しがキツいな。


「おいナマエ〜…水、水をくれェ…」
「うん。はい、どうぞ」
「ぷはぁ!生き返るなァ…!!」
「ナマエー!おれも飲みたいぞ!」
「ほいほい」


ミズミズの能力を手に入れたナマエは水人間になったことにより、水は出し放題。
特にナマエに水を強請っているのはウソップとルフィで、両手で器を作ってそこに水を溜める彼女の手から直接水を飲むそいつらはまるで犬だ。


「…………」


いちいち寄って集って隙あらばナマエから水を飲ませてもらってる様子には、ナマエにくっつき過ぎだ!と俺も我慢の限界がきているが…。
役に立ってると嬉しそうなあいつの表情を見たらそれを邪魔するのも気が引ける。


「ナマエ、」
「ん?あ、ロシナンテも水?」
「違う。こっち向け」
「……、っ」


こんな乾燥地帯でもぷるりと潤っているナマエの唇にキスを落とせば、徐々に頬を赤く染めていった後、バシャッと顔に水をかけられた。…こんくらい許してくれ。


□ □ □



レインベースに着いてすぐにウソップとルフィが買い出しに出掛けたが、運悪く海軍に見つかったらしく俺達は追いかけられるハメになっていた。


「マズイんじゃねェか!?町の中を走るとB・Wに見つかっちまう!」
「―…もう手遅れだと思うぜ」


サンジとゾロが後ろを走り、前にはルフィとビビ、そしてその前にはナミとウソップ。
お前ら2人…逃げ足はすげェ早いな、と感心しながらナマエはちゃんと付いてきてるかと心配して周りを見渡す。

だが、ナマエは意外にも体力があるらしく俺の横を余裕そうな表情で走っていた。
じいちゃんに鍛えられたと言ってたが、どんな鍛え方をされたのかがふと気になる。後で聞こう。


「クロコダイルところに行くぞ!ビビ!」
「…うん!あそこにワニの屋根の建物が見えるでしょ!?あそこがクロコダイルの経営するカジノレインディナーズ≠諱I」


前を向けば確かにワニの屋根の建物がある。
それから俺達は一旦散り散りになり、ナマエと2人で逃げ回っていたが、結局は海軍の1人に追われているルフィ達と合流してそのままカジノの中へと侵入した。


□ □ □



「こうみょうな“わな”だ」
「ああ。しょうがなかった」
「敵の思うツボじゃない!避けられた罠よ!バッカじゃないのあんた達…!!」


カジノへ侵入した俺達はまんまと敵の罠にハマり、檻の中に閉じ込められちまった。
檻の中にはルフィ、ナミ、ウソップ、ゾロ、俺、それから海軍の大佐が1人。そう、俺達のいるこの檻には愛しいあいつの姿がない。


「というか何でナマエだけ別の檻にいるのよ!」
「あ、いやだって…VIPとしてもてなされるか海賊としてもてなされるかって考えたらVIPだなって思って」


この檻に閉じ込められる前、VIP≠ニ海賊≠フ立て札が左右に置いてあり道が別れていた。それをナマエだけVIPの方へ向かったようで檻が別々に。くそ、走るのに必死でナマエを見てなかった!ドジった…!


「おい。テメェは凪使いだな?6000万の首の」
「…だったら何だ。そんなことより、ナマエー…」
「ここを出たらテメェも麦わらもとっ捕まえてやるから覚悟しておけ」
「ああ勝手にしろ!俺は今それどころじゃねェんだ」


ブツブツうるせェ海軍野郎に吠えて隣の檻にいるナマエに再び目を向ければ、あいつは檻の外を鋭い目付きでジッと睨んでいた。


「――あれが、クロコダイル…」


ナマエの声が静かに響いた。



ぶっ飛ばしたい男
(…あいつがビビを苦しめる元凶)
(ナマエ、早まるなよ…)