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07




夜になり、昼間と打って変わっての温度にブルッと身を震わせたら背中におぶっていたナマエがさっきよりも強く俺に身を寄せた。


「寒いか?」
「わたしは平気。ロシナンテが寒いかと思って」


そう言って小さく笑う声が耳元で聞こえると、ナマエは俺の背中にスリスリと頬擦りをする。
…町に着いたら、ナマエとゆっくりイチャイチャできたりしねェかな。いや…できねェか。

そんなことを考えながら歩いていれば、砂塵の舞う視界の先に明かりの灯っている町が見えてきた。


「何かしらこの地響き…っ!町の様子がおかしい!!」


ビビの焦ったような声に周りを見渡せば、デカい砂嵐がユバの町を襲っているのが目に入る。
オアシスだというユバには水一滴も見当たらず、砂に埋もれかかった建物がチラホラと立ち並んでいた。


□ □ □



「こりゃひでェ…。あのエルマルって町と大して変わんねェぞ…!」
「ここはオアシスじゃねェのかよビビちゃん!」
「砂で地層が上がったんだ…。オアシスが飲み込まれてる…!」


ゾロとサンジが声を上げ、呆然と町を見つめるビビ。

干ばつの被害がデカいと聞いてはいたが、干ばつだけで町が砂に埋もれるか…?
さっきの砂嵐が原因にしても、あれに1回襲われたくらいじゃ普通ここまでの被害にはならないはず。

考え込んでいる間にナマエは俺の背中から下りて、町の様子をジーッと眺めている。そしてナマエはどこかを指さして、『人がいる』と呟くように言った。


「旅の人かね。…砂漠の旅は疲れただろう。この町は少々枯れてはいるが宿ならいくらでもある。ゆっくり休んでいくといい」


痩せ細った身体で砂の地面を掘り続けていたのは1人の歳をとったじいさんで、俺たちにそう声を掛ける。


「この町には反乱軍がいると聞いてきたんですが…」
「反乱軍に何の用だね。貴様らまさか反乱軍に入りたいなんて輩じゃあるまいな…!!」
「うわっ…!何だいきなり!」


じいさんは反乱軍の言葉を聞くとギロリと視線を鋭くさせて叫び、俺達に樽やバケツやらを投げてきた。

そのじいさんの話によると、今の干ばつは3年前から続いていてユバは頻繁に砂嵐に襲われるようになった。
少しずつ蝕まれていった町には物資の流通もなくなり、反乱の持久戦もままならなくなったため、反乱軍はカトレア≠ニいう町に拠点を移したのだという。


「カトレア!?」
「どこだビビ!それ近いのか!?」
「っナノハナの隣にあるオアシスよ…!」


ナノハナは俺とナマエが再会したあの町。
反乱軍を止めるためにユバまで砂漠を歩いてきたが、まさかナノハナのすぐ隣にその反乱軍が拠点を置いていたとは誰も思わない。


「…私はね、ビビちゃん!国王様を信じてるよ!あの人は決して国を裏切るような人じゃない…!!そうだろう!?あのバカ共を…頼む!止めてくれ!…もう君しかいないんだ!」


ビビと顔見知りだったらしいじいさんが、目に涙を滲ませて必死に訴える。


「反乱はきっと止めるから」


そう言ってじいさんに笑うビビ。
すると隣にいたナマエが俺の手をギュッと強い力で握ってきて、彼女に視線を向けたらもう片方の手で胸のあたりで服をグッと掴んでいた。


「…ロシナンテ、」
「…………」
「クロコダイル、絶対ぶっ飛ばそう。ビビのあんな顔…わたしは見たくない」


ナマエの、何かを決心したかのような真っ直ぐで真剣な瞳が俺を見上げている。
そうだな、と返事をしてナマエの手を握り返した。



心に秘めた決意
(ロシナンテ、後で相談…いい?)
(ああ、分かった)