05
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「ゾロはああ言ってたけど、そんなに気にしなくていいわ。あたしは戦えないか弱い航海士で、ウソップだってそんな強くないから」
「悪かったな!強くなくて!」
ナミの言葉にウソップが突っ込むのに笑っていると、チョッパーがわたしの服をクイッと引っ張る。
「なあなあ、ナマエって強いのか?」
「うーん、多分。変な能力持ってる人には無理かもしれないけど、生身の人間なら男にでも勝てるよ」
「へェ…なら手合わせしてみるか?」
それを聞いていたらしいゾロがニヤリと笑って聞いてくるけど、わたしは少し考えてから頷いた。
爺ちゃんに護身用で叩き込まれた体術は、元の世界にいた時もすごく役に立ったのを覚えてる。
ロシナンテが来てからはそれが必要になる状況がまるでなくなったし、身体が鈍ってるはずだから。
今じゃなくても、その感覚を取り戻すために手合わせしてもらうというのは良い提案だった。
「ロシナンテも悪魔の実の能力者だし、戦力にはなってくれると思う。足手纏いにはならないようにわたしも頑張るから」
「まあ、細かいことは気にしなくていいと思うぜ。いざとなったらナマエさんは俺が守るからね〜!!」
「…人の女にまで見境なしか、このエロコック」
「あァ!?俺はレディの味方なんだよ!誰の女とか関係あるか!」
見慣れた口喧嘩を始めたゾロとサンジに苦笑していると、ルフィとビビにこれからのことを説明されていたロシナンテがわたしの傍にやってきた。
「あー…なんか大変なことになってんだなァ。王女様の国はよ」
「うん。ルフィ達の船に乗せてもらってる以上は、助けになってあげないとね」
「そうだな。それにしてもクロコダイルなァ…俺が海兵の頃から七武海にいたが、顔が思い出せねェ」
そういえばロシナンテは海軍にいたんだっけ。
その任務で実の兄の海賊団に潜入してローと出会って、悪魔の実を奪ったから海軍も裏切ることになったって。
白ひげさんのところにいた時も海軍相手に戦ってたみたいだけど、思い入れや未練は無いのかな。
「サイレント=v
「?…ロシナンテ?」
そんなことを考えていると、突然ロシナンテが能力を発動させてわたし達の会話を周りに聞こなくなせた。
「ナマエ、あの悪魔の実まだ持ってるか?」
「あ、うん。持ってるけど」
「あの形と色…白ひげのところに置いてあった図鑑で見たら載ってた。あれはミズミズの実だ」
「ミズミズって…水、のこと?」
「あァ。悪魔の実の能力の中でも最強と言われる自然系の能力にあたる」
ロシナンテの言葉に、わたしは肩から下げているトートバッグをチラリと見やる。
ルフィ達にはこれから厄介になるわけだし、1億円…あげちゃってもいいと思う。けど、なんだか手放してしまうのも惜しいような気がしないでもない。
悩んでいると、ロシナンテはサイレントを解除してわたしの頭をさらりと撫でた。
「元はナマエのもんだ。それをどうするかはおまえに任せる。とりあえず何の実か分かったから一応な」
ロシナンテが人差し指を唇に添えてそう言う。
きっと彼がサイレントをかけてそのことを伝えたのは、白ひげさんの所で悪魔の実を奪うために仲間を襲う≠ニいう事件があったから。
わたしが自然系の悪魔の実を所持していることを知られたら…と、ロシナンテはまだ、ルフィ達に気を許してなくて完全に信用してるわけじゃないんだと思う。
理由は分かるけど、素性も知らないわたしを無償で助けてくれたルフィ達がそんな裏のあるような人達には到底見えないから。
ロシナンテにも早くそれが分かってもらえたらいいなと密かに思った。
仲間入り
(ロシナンテだ、以後よろしくな!ちなみにナマエに手出したヤツはぶっ殺すぞ)
(余計なこと言わなくていいから…!)
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